クランー7

トキが警備隊本部についた頃。


冒険者ギルドでは会議室にハリーギルド長と


5つのクランの代表者が集まり


円形の机を囲んで座っている。




「お忙しい所、集まってくれてありがとう。


今から会議を行うがこの会議に出た発言は


後ろにいるゾル補佐官が記載するので


ご了承願いたい。


今は用事で居ないがべラムの警備隊クルス隊長も


情報共有しますのでご理解願いたい。


今回の集まっていただいた理由は・・・」




「言わなくても分かりますよ?


最近起きた事件の事ですよね?」


緑竜の紋章バッチを着けた医師風の男が遮る。




「その事件なら聞いてますよ?


不安を煽る噂を流したと遺書を書いて


自分達の首を切り跳ねた自殺者ですよね?


それと僕達に何の関係があるんですか?」


赤風の紋章バッチを着けた開けた白衣を着ている


片眼鏡の男性が質問してきた。




「あれだろ?噂になってるぜ?


クランに所属していた奴等だってな?


クラン制度は間もないからな。


プレートに何処の所属か分からねえ。


クラン制度に穴があり過ぎるからな?


クランに裏加入してる奴等なんて


たくさんいるだろ?なあ白さんよ?」


黒狼の紋章バッチを着けた盗賊風の男が


『白翼』の修道師姿の男性に絡む。




「さあ?私には分かりませんが…


しかし我が導師のエンヴァ様に遣えていれば


教えに導かれて殺し合う事はなかったでしょう。


私達の教えには慈愛の心に溢れてますから!


どうですか?


皆さんも我がクランに改宗しませんか?」




「ハハハ!誰が入るかよ!


胡散臭い宗教団体なんてな?


慈愛の心なんて嘘だろ?


冒険者ギルドのクランにそんな奴いるかよ!


知ってんだぜ?最初のクランになった理由をな?


言われたくないなら二度と俺らを誘うなよ!」


「何の事でしょうか?


私共は皆さんを救済するために


日々精進してるんです。


怯え哀しむ姿を見ない世の中にするために


我々はいるのですから」


「二人とも、それぐらいにしとかないか!


ハリーギルド長も困ってるだろ?」


青虎の紋章を着けた礼装姿の男が


黒狼と白翼の仲裁に入る。




「なんだよ?招き猫が仲裁に入るのか?


商業ギルドで稼いでる奴は偉いってか?


はん!まあ良い。ハリーギルド長さんよ?


話を進めてくれねえか?


こいつらと気が合わないからよ?」


「お前が一方的に合わせないだけだがな?」


「なんだと!弱風の癖に生意気な口聞いてんな?


俺が赤く染めて飛ばしてやろうか?」


「止めてくれ!治療する身になれよ!


お前達がそんな小競り合いするから


治療する人間が足りないんだ!」


「稼げるから良いだろ?


緑の蜥蜴は這いつくばって身を守ってろよ!」


黒狼の男が今にも戦う姿勢を見せて


周りのクランの代表も険しい顔となり


会議室に一触即発の雰囲気が流れている。




「お前達いい加減にしろ!


何のために集まったと思ってるんだ!


事件について集まったのに


何故敵意を剥き出しにするんだ!場を弁えろ!」


ハリーギルド長が怒鳴り一触即発の雰囲気は


解消されて渋々ハリーギルド長へと


視線が集まった。




「全く・・・信じれない!


べラムに拠点を置くクランの代表が


こんなに喧嘩っ早いとは思わなかったぞ!


特に黒狼は煽るな!ギルドに来て思い出してんだろ?


仲間の思いなのは分かるが八つ当たりは止めてくれ!


話が進まないからな?


お前がそんな態度なら処遇を考えるぞ?」




「チッ、わかったよ・・・済まなかったな…


話を進めてくれ!」


「皆も異存ないか?」


黒狼以外の代表が縦に頷ずく。




「よしなら進めるぞ?


集まってもらった理由は緑竜の代表が話した


最近起きた事件についてだ。


調査したところクランに所属していたと


言われているが被疑者が居たクランはいるか?」




全員が沈黙をする。そこに青虎が話しかける。




「ハリーギルド長?無駄な会議だと思いますよ?


全員が沈黙をしたって事は知らないのでしょう。


黒狼が言ってた裏加入の可能性もありますし


勝手に名乗っていた可能性もありますよ?」


「そうですね。


もし私達のクランを騙っていたなら


その罪の重さに悩み苦しんだ結果、


殺し合ったのでしょう…


なんとも悲しい事件ですね…」


「皆さんは代表としてその答えが


正しいと思ってるんですか?


もし不安を煽る冒険者を与していたクランが


調査して見つかったならそのクランに


罰を与えますがそれでも同じ考えですか?」


「ハリーギルド長?


我々も調べた結果、そんな冒険者が居なかったから


答えとして沈黙したのだと思いますが?


もし居たとしたら告げていると思いますけどね」


赤風が自分達の意見を答えた。




「分かりました・・・なら、


次の議題に入りますが良いですね?」


全員が縦に頷きハリーは了承して進ませた。




「では代行人の存在をご存知ですか?


もしべラムのクランにそんな制度があるなら


止めて頂きたいのです!


これは各地で起きてる案件なのですので


今ギルドでは規則の訂正をしています。


近い内に皆さんにも話が届くと思いますよ。


代行人を見つけ次第即逮捕となりますので。


各地の話を聞くと奴隷がクランの代行人として


仕事をしていると聞きます。


話を聞いたギルド員が調査して


奴隷を見つけて解放して判明してる事実です。


冒険者ギルドでは悪質な侵害と判断しています。


代行人制度があるなら冒険者ギルドの


必要性が無いですからね?


後日、各拠点への強制捜索に入りますから


その連絡をさせて頂きました。


勿論、隠れ家まで見つけてますので!


奴隷を見つけ次第、一時的に解放して尋問します。


疚しい気持ちが無いことを期待してますよ?


クランを名乗る以上は責任が問われますからね?


この案件にもってこいの冒険者を雇ってますので


もしギルドに何かあれば・・・分かりますよね?


では解散としましょう。」




ハリーは一拍手してゾル補佐官と


会議室から退散した。


中に残っていた各代表は関係ない顔で出ていくが


2人は顔を青ざめてギルドから出てから


道を外れて隠れ家で合流し話し合っていた。




「おい!代行人バレてるなんて聞いてないぞ?


せっかくべラムの戦力落としたのに意味が無くなるぞ?


やっぱりあいつら殺したの不味かったか?」


「だろうな…あの時は俺も賛同したからな…


まさか冒険者ギルドが調査するとは思ってなかった…


隠れ家まで見つかってるなら


俺達の存在も知られてるな?」




「かもしれない・・・


べラムの反乱軍の失敗原因を調査してる途中で


孤児院に戦力が有ることを知って


戦力を利用した商売が裏目に出るとはな。


これから奴隷をどうするかだな?」


「奴隷を隠すにしても場所がな・・・


ならこれはどうだ?『・・・』」


「『・・・』は強制捜索までに出来るんだろうな?」




「確実に仕込むさ!


じゃないと俺達の存在も明るみになって


隊長まで行きかねないからな?」


「そうだな…隊長まで行くと色々と厄介だ。


分かった…その策でいこう!」


「なら各クランに別れていつも通りに!」




2人は隠れ家から離れて各クランの拠点を目指す。






「合流しましたね?」


「そうだな。あの2つのクランか・・・」


「代行人制度があるならこっちも稼げないからな?」


「どうしましょうかね?


何か企んでるようでしたけど?」


「企みは楽しみに取っておこうか。


強制捜索の時に楽しませて貰おうか?」


「ならこのまま警戒しておきます」


「宜しく頼む。


本部着いてから尾行させられるとは思わなかったぞ?」


「内密な案件でしたからね?


ちょうど良く現れてくれて助かりましたよ」


「俺も久しぶりに尾行したからな。


途中振り向かれないか心配したぞ?」


「大丈夫だ!バレなかったから安心しろ!


後は内通者の問題だが・・・」


「俺が手伝うからお前は当日まで待てば良い。


勘を取り戻すからやらしてくれ!」


「そう言うなら任せる。


じゃあ後は任せたから俺達は帰るぞ?」


「お手数お掛けしました」


「いや、こっちも楽しめたよ。じゃあな!」


「ワン!」




2人を尾行して見極めた複数の影が


屋根の上から見下ろしていた。


1人と一匹の影が屋根から降りて


路地裏から表へと歩き出した。

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