クランー1

トキ達は久しぶりに拠点の孤児院にたどり着いたが・・・




「え?・・・なに?このバリケードは?」


「なんでしょうね…こんなもの無かったですよね?」


「立て札が書かれてますね…何々・・・


『孤児院は俺達の物だ!』


主殿?いつの間にこんな看板建てたんですか?」


「さあ?暫く帰ってないから忘れたな!」


「いや、違うだろ?乗っ取られたんだろ?」




「・・・マジかー!って叫んでみたけど…


理由が有りすぎて納得できた…」


「長く開けすぎましたからね…


そういえばシルドさん達はどうしたのでしょう?」


「シルド?・・・ああ!


家族関係が複雑な冒険者パーティーか!


複雑すぎて頭の隅のすみに置いて忘れてたな!」


「シルドってあれか?『暴威の盾』のシルドか?」


「ガデル正解だ!ランクAパーティーのリーダーな?


シルドか・・・ちょっと待てよ…確か・・・


子供が離れないからべラムに拠点作ってたな…


反乱軍がゾラム侯爵領内で侵攻したときは…


確か待機を命じてた気がするな…」


「ランクAに命令したのかよ…」




「ちょっと待てよ…引き出し開けてるから…


ガデル?ヴァーリ武国からここまで何日掛かる?」


「確か・・・馬車で…20日ぐらいか?」


「20日か…俺達がここ離れて…40日過ぎてるよな…


って事はシルドのパーティー全員が集合してるな…」


「あれ?もっと離れていた気がするんですけど?」


「ヴァイス?そうだったか?10日はゾラム侯爵だろ?


37日過ぎはスーサイド、5日はゾラム侯爵…


ん?50日過ぎてるな…


濃すぎる経験したからもっと長く感じるが…


しかしシルドとシルは重なってるな?


シルはシルバに変えたいが大丈夫か?」


「ウゥ…ワン!」


「済まんな勝手に付けといて名前変えてな…


シルバは略してシルと呼ぶからあまり変わらないから


安心して改名するんだぞ!」


「ワン!」




さりげなく名前を変えるトキと心得たシル改めシルバ。


ゾラム侯爵領内の反乱事件から50日は


孤児院に戻ってなかった事を思い出した。




「・・・主殿?ボケてもいいですか?」


「・・・今は止めてくれ…状況整理で頭使ってるから…」


「キュゥ…」「ワウゥ…」


「ルティとシルはしないんだ…って鳴かないでね?


流石に僕も困ってるんだから…


フィルとルティのべラムでの拠点無くなったんだよ?


良くボケようと考えれるよね?」


「こんな時だからでしょうかね?


じゃないと無意識のボケが始まりますよ?


ほら、アーニアさん達・・・」




「凄いね!まるで要塞みたいだね!」


「そうですね!まさかトキがこんな家に住んでるなんて


思ってなかったです…」


「いやこれ違うだろ?立てこもりされてるだろ?」


「・・・いや…新な門かも知れないよ?」


「主様がいない間に考えて防衛してると?」


「可能性はあるかもね?長くいなくて


子供しか居ないなら…僕ならこうするだろうね…」


「成長しているんですね!流石主様の生徒です!」




「・・・人増えると現実逃避の確率高くなるんだね…」


「よし決めた!突撃する!」


「先生も思考放棄したよ…」


「キュゥ…」「ワウゥ…」


「仕方無いだろ?今回は…


自分の家を占拠されたんだからな?


理由なんて後から聞けば良いだろ?」


「そうですね…では先生!行ってらっしゃい!」


「トキ、頑張ってね~!」


「トキ?誰か付いていくか?」


「そうだな…賽子振って決めるか!


出た目が4以上と3以下でグループ作るから


各自賽子を振ってくれ!」


「俺達も振るのか?」


「当たり前だ!お前らも此処に住むからな?」




トキは東達含めた全員で賽子を振った。


4以上がトキ、ガデル、ブラッド、ルティ、シル、東。


3以下がヴァイス、アーニア、フィル、美波、西尾。




・・・綺麗に別れたな?・・・


「ではヴァイス達は周囲に聞き込みだ!


俺達は突撃して内部に入る!」


「俺も行くんだよな?武器は無いのか?


丸腰は流石に安心できないんだが・・・」


「東?何言ってる?武器はそこら辺に落ちてるだろ?


石ころとか木材とかな?


と言うよりも…俺が暴れるから武器いらん!


東はガデルとブラッドに守ってもらえ!」


「それなら問題ないけどさ…」


「因みにな?召喚された者は魔力が体の補助するから


防御力や身体能力高いんだぞ?


何処に召喚されたか知らんが教わらなかったのか?」


「知らなかった…鍛えさせられたからな…


そのせいだと思っていた…」




「まあそこら辺は孤児院の件が終わってから


情報整理しようか?


さていくぞ!バリケードぶち壊すからな?」




トキが孤児院入り口を目指して歩いた。


トキが歩いたのと同時にヴァイス達は


離れて周囲に聞き込みに行った。




トキの目の前に木材で作られた5m程の


隙間や穴がある壁が設けられている。


木材の間から攻撃したような切り傷があり


表面が湿っている。


トキは門に設置された壁を見て考える。




・・・誰かに攻撃受けてんのか?・・・


湿ってるのは火対策だと思うが。


隙間の奥に矢が見えるな…


木材の後ろにも他に壁がある…




「まあ、どうでもいいけどな?


主人の帰りにこの仕打ちは無いよな?


クーデターだったとしても説教するだけだし?」




トキは右手で指をパチンと鳴らして


右手全体に電気の短刀を纏わせて切り裂いた。


バリケードの後ろには知らない男女が見張りをしていた。


腰に剣を帯びた青年と弓矢を持つ女性。




「おい、物壁が破られたぞ!皆を早く!」


「わかった!全員に連絡して連れてくるわ!」


「させ・・・るか…一網打尽にしたいしな?」


「お前の相手は俺がしてやる!


もう誰も傷付けないからな!」


「矛盾してるぞ?傷付けないなら呼ぶなよ?」


「うるさい!黙れ!」




青年がトキに剣を上段から振り下ろす。


トキは左前の半身に避けて剣の鍔を左手で掴み


青年の前方へ力を加え投げ飛ばした。


剣はブラッドに向けかっていた。




「あ!」


トキが投げ飛ばした方へ右回転しながら振り向くと


投げた剣は小のバットで剣を縦回転させ


柄向くようにしてから大小2つの金属バットを


交差して止めていた。




「主様?某達を忘れてますよ?」


「すまん…街中の戦闘初めてだからな?


次は気を付けるよ!」


「この剣はどうしますか?」


「あいつに返してやってくれ!


武器がないと護れないからな?」


「了解しました!主様!」




ブラッドは剣の刀身を挟んで持ち


歩いて青年へと渡した。




「落とし物ですよ!」


「これはどうも…お礼に…切られてください!」




完全に剣の柄を掴んだ青年は後ろ向きで歩く


ブラッドへと斬りかかる。


ブラッドは気にも止めずに歩き続けて


ブラッドの右腹を薙ごうとした瞬間に


短刀の鞘が回転しながら青年へと飛んで来る。




青年はブラッドへの攻撃を止めて


鞘の防御に専念して鞘を打ち落とした。


鞘が地面へと刺さる頃にはブラッドは


元の位置に戻っていた。




「礼儀が成ってないな?


剣を返してくれたのに命を取ろうなんてな?」


「うるさい!侵入者には義なんて必要ない!」


「トキ?侵入者だってよ?」


「侵入者か・・・俺ん家なのにな…」


「手伝おうか?」


「いやいい、誰の家か分からせてやる!」


「上等だ!孤児院を守ってみせる!」




「ガデルさん?で良かったですか?


本当にトキの家なんですか?」


「東くんは知らないか…


あれな?自分で一から建てたらしいぞ?」


「え!トキがですか?」


「ああ、フィルとルティとヴァイス君で築いた…


それを侵入者扱いされるなんてな?」


「逆ですよね?不法侵入してるの?」


「そうだな…逆なんだよなあ…


しかも孤児院って知ってるからさ?


不思議なんだよ?どっかで見た事ある顔だしな…」


「見た事あるんですか?あの男を?


ガデルさんが誰か知ってても


今のトキは完全に悪人扱いされてますからね…


仲間も来る頃ですから…俺は大丈夫ですかね?」


「まあ、俺達が守るから安心しろ!


大抵の奴なら勝てるからな?」


「キュイ!」「ワン!」


「子供の狐と狼に守られる俺って…」




「東殿?子どもと侮ると痛い目に逢いますよ?


某達は魔物でも危険度ランクA以上の魔物ですから…」


「キュイ!」「ワン!」


「え?そうなんですか?ガデルさん?」


「ブラッドの言うとおりだ!


ルティは愛くるしい姿を見せてるが・・・


変身して東君を乗せれるほど大きくなる!


2尾から8尾に数も増えるからな?」


「キュイ!キュイ!」




ルティが強く頷いて鳴く。


「じゃあ…この狼も?」


「いや、シルはそのままだな!


産まれて半年も経って無いらしいぞ?」


「ワン!」


「・・・なんでしょうね?この違和感は…


危険度の高い魔物に囲まれている自分って…」


「俺も味わった経験だな?


そんな危険度ランクが高い魔物を側に置いても


何も言われないトキが異常だと俺は納得した!」


「・・・同級生が異常ですか…


まぁ俺達召喚された者も異常なんですよね…」




東はトキとの違いに落ち込んでいく。


そんな落ち込みを関係無く


トキは青年に戦闘を教授していた。


ブラッドと以前ゾラム侯爵の家で朝練で使用した


木の棒を武器にしている。




「打ち込みが甘いぞ?


ほら木の棒を折れないのか?


後、足広げすぎ!バランスが悪くなるだけだ!」




トキは青年に発破を掛けると同時に


右横腹に蹴りを打ち込んでぶっ飛ばした。




「まだまだ…俺は戦え…


「ちょっと待て!!」・・・父さん?」


「父さん?」




トキが青年が向いた方を向くと門の外に


シルドが立っている。


隣にはヴァイス達が集まっていた。




「よお!シルド!元気か?・・・っていくと思うか?


説明してくれるんだろうな?


俺の孤児院にバリケード作って


侵入者扱いしたんだからな?聞かせて貰うぞ?」




トキは最初久しぶりに再会するシルドに陽気に


挨拶したが侵入者扱いされたことに苛つきを


募らせていてシルドに怒気を向けた。・・・

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