ゾラム領異変ー14

「あれ?ここはべラムですか?」




最初に目覚めて声を掛けたのはヴァイスだった。


トキにではなく自分に問い掛けるように。


ヴァイスは見覚えある故郷に回りを見渡している。


ヴァイスは全員が地面に仰向けで欠伸をしながら


起き上がるのを確信した。


トキの殺気に倒れてフィルの声で目が覚めたと。


ヴァイスがトキの姿を確認すると・・・




「先生?クルス隊長もなにやってるんですか?」


「ヴァイス?目が覚めたか…本当に60分だったな…」


「ヴァイス様!トキ殿から聞いてましたが…


体調が悪くはありませんか?」


「体調は大丈夫ですけど…


先生は何を覗いてるんですか?


クルス隊長は・・・知り合いなんですか?」


「此方の方はリケラ殿と一緒に来られましてね…


トキ殿に聞いたら知らないと言われまして…


ヴァイス様が起きるまで仕方無く一緒にいました…


あ、お茶お代わりお願いします!」


「俺もクルスに聞かれて驚いたな…


見た事あったから話して戦った!


思った以上に骨のある奴だぞ?俺も頼むわ!」


「骨はあるでしょうね?骨しか無いですから…


先生は良く生きてますね?普通は死んでますよ…」




現在べラムの街の外で敷物の上に


高さ1mの机と椅子がある。


丸いすにクルス隊長が座りお茶を注がれている。


注いでる相手は・・・骸骨で黒い傷んだローブを纏い


身長1.5mの体で背中に同じ大きさの大鎌を帯びている。


前にべラムに戻るときに見た骸骨。そう死神。


死神と一緒にトキとクルス隊長がいるのだ。




クルス隊長のお茶を注いだ死神はトキにポットで


お茶を注ぎ終わるとヴァイスの分を準備する。


死神は机の横に七輪の様な火炉でお湯を作り


一旦覚ましてから茶葉を濾してコップにお茶を注ぐ。


出来たお茶を渡されたヴァイスは覗くと


色は濃い緑色をしている。普段より明るい色に見える。


決心して飲むと渋みがなく濃く甘く美味しかった。


あまりの美味しさに一気に飲み干してしまい


がっかりしてると死神がお茶を注いでくれた。


ヴァイスは礼を言うと嬉しそうにカタカタと笑った。




「先生?何で死神さんがいるんですか?


後、お茶凄く旨いんですけど…」


「ヴァイス?このお茶は玉露と言ってな?


普段飲んでるのと同じお茶の木から出来るんだが


手間が掛かる代物でな?


普段は飲んでる煎茶と違うだろ?


煎茶は渋味に香りがあってすっきりした味わいだ。


これ死神が準備してくれた奴だぞ?味わって飲めよ!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここでお茶についてウィッキー先生から。




茶ちゃ、チャノキの葉や茎を加工して


作られる飲み物である。




また、これに加えて、チャノキ以外の植物の


部位(葉、茎、果実、花びら、根等)や


真菌類・動物に由来する加工物から作られる飲み物にも


「茶」もしくは「○○茶」と称するものが数多くある。




世界で主に栽培されているのは基本変種である


チャノキとその変種であるアッサムチャの2変種である。


基本変種は幹が枝分かれした低木で、


寒い冬にもよく耐え、100年程度栽培可能である。


葉は比較的小さく成長時の長さは5cm程度である。


比較的カテキン含有量が少なく


酵素の活性も弱く酸化発酵しにくいことから


一般に緑茶向きとされている。




新芽が成長してくると摘採を行う。


摘採時期が遅れると収量は増えるが


次第に粗繊維が増加して葉が硬化し


主成分であるカフェイン、カテキン、


アミノ酸テアニンも急激に減少し品質が低下する。


そのため、品質を保ちながら収量を確保するため


摘採時期の見極めが必要である。




成熟した茶樹のうち、摘採するのは


上部数cmの葉と葉芽だけである。


成長期には摘採後7日から15日で新しい葉が生え、


葉がゆっくり成長するほど風味豊かな茶となるとされる。




茶は加工の方法(発酵のさせ方)により


様々な種類があり世界的に知られているのは


酸化発酵を行わせた紅茶と行わせない緑茶である。


茶葉に含まれる酵素が、茶葉の中の


カテキン(ポリフェノールの一種)など


300種類以上の成分と反応するにつれ、


テアフラビンなどが生成する。


これらの成分によって茶の味や香りが左右される。


酸化発酵が進むにつれ、クロロフィル(葉緑素)も


酸化されるため、色は緑から暗色に変化していく。




中国茶では、緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、


黒茶の大きく6種類の区別が用いられている。




茶葉を使用しない嗜好性飲料も


総じて「茶」と呼ばれることがある。


こういった茶ではない「茶」の多くは


チャノキ以外の植物に由来するものであり


葉や茎、果実、花びらなどを


乾燥させたものを煎じて使用する。


またそれら「茶ではない茶」を中国語では


「茶外茶」と呼び、本来の茶を「茶葉茶」と


呼んで区別することも行われている。




ほかにも、真菌類・動物に由来するものが


わずかながら存在し、さらに中国の華中地区では、


白湯さゆさえも「茶」と呼ぶことがある。




植物由来の茶葉を使用しない嗜好性飲料も


麦茶、ハトムギ茶、熊笹茶、竹茶、そば茶、


ハブ茶、甜茶、甘茶、甘茶蔓茶、杜仲茶、


苦丁茶、ドクダミ茶、コーヒー生豆茶、


紫蘇茶、緑甘茶(緑天茶)、ゴーヤー茶、


マタタビ茶、柚子茶、陳皮茶(蜜柑の皮茶)、


韓国伝統茶、ハーブティー、マテ茶、羅漢果茶、


コカ茶、ルイボス茶、ハニーブッシュティー、


桜漬葉茶、昆布茶、梅昆布茶、ほか多数ある。




以上、ウィッキー先生でした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「お茶について分かりましたが・・・


先生は何故双眼鏡を覗いてるんですか?」




トキはロッキングチェアに座りながら


双眼鏡から遠くを覗いていた。




「いやな?リケラに全員を連れて帰ってきたんだが…


シルを忘れて置いて帰っちゃってさ?


来るかな~?と思って見ていた訳よ。


ほら、死神がいるだろ?今は大丈夫だが


戦ったのお前らを守る為だったんだよ…


寝てる奴見て頷いて鎌振り下ろし掛けたからな?


話しても仕事だからと取り合ってくれないからさ?


戦っててフィルの目覚ましの音で戦闘止めた訳よ!


その後は互いに健闘したと握手して今に至る。


理解したか?」


「寝てる間に戦ってたんですね…


しかも僕達殺しかけて謝礼にお茶を貰ってると…


複雑な気分ですね…お茶が旨くて…」




「だろ?これなら許せると思って飲んでんだよ!


ゴクッ・・・あ?なんか銀色見えたな…」


「ゴクッ…シルが来たんじゃ無いですか?」


「結構離れてるのに凄いよな…ゴクッ


もうスピードで来てるな?子狼なのに凄いぞ?」


「まあ、スーサイドの生まれですからね!ゴクッ」


「死神お茶お代わり!」


「僕もお願いします!出目3です」


「私もお願いします!出目が5で勝ち!」


「・・・なにやってんだ?お前ら…


死神にお茶お代わりお願いして…賽子で遊ぶなよ…」




ガデルが次に起きてきた。


他の皆は二度寝している。


・・・地面の上で良く寝れるな?・・・




「俺達はお前らのが起きるのを待っていた。


死神はお前らの命取ろうとしたから


俺が守って謝礼にお茶を飲んでる。


ヴァイス達は暇だから賽子で勝負してる。


お茶旨いから飲めよ?あ、もう少しだぞ?」


「何が?」


「スーサイドから此処にシルが来てる!」


「はぁ!?意味がわからん…ゴクッ旨っ!」


「ゴクッ全員を降ろすときに忘れてた!


親子で過ごすかな?て思ってたが・・・


もう見える距離で砂ぼこり上げてるな…


仕方無いな…軽い風のクッションと壁つくるか…」


「凄い砂ぼこりですね?手伝いましょうか?」


「いや、俺だけで充分だからお茶飲んでろ!」


「シルも異常だったんだな…死神!お茶お代わり」




せっせとお茶作ったり賽子振って


悲しんだり喜んだり忙しい死神。


ガデルも気に入ったのかお茶お代わりしている。


俺は高さ50mの風の壁を作り


砂ぼこりを巻き上げて向かってくるシルを待つ。




「ワオォォォン!」


「後、500、300、100m、全員お茶と賽子守れ!」


「信頼してるから言うが体を守れ!


じゃないんだな?お茶優先なんだな…」




「ワン!!」




50mのところでジャンプするシル。


砂ぼこりが上がってる中に銀色の流星が飛んで来る。




「マジか!ゴクッ飛んで来やがった!」


「トキお茶のんだよな?今?」




慌てるそぶりを見せながら平然とお茶を飲むトキに


シルは風のクッションを受けて流星から


紙飛行機となりトキの体にダイブした。




「ワン!」


「良く来れたな…偉いぞ!でいいのか?」




トキは悩みながらシルの頭を撫でると


嬉しそうにうなり声を上げるシル。




目の前にはまだ砂ぼこりが蔓延していた。


トキは指をパチンとならして強風を作り出す。


風の壁から向こう側の土地の空中を吹き飛ばしていく。


暫くすると砂ぼこりが霧散していく。


向こう側から咳が聞こえるが無視した。


砂ぼこりが消えたのを確認すると風の壁と


強風を解除してお茶を飲んだ。




「ゴクッ…シルはこれからも着いてくるのか?」


「ワン!」


「縦に振ったか…まあいいだろう!


ようこそべラムへ!ようこそ俺の仲間へ!」


「ワオォォォン!」




シルが雄叫びを上げると二度寝していた


残りが目を覚ました。


目覚めたのを確認して死神は全員分のお茶ををつくり


トキの肩を叩いた。




「もう帰るのか?」


コクンと頷く死神。


「そうか…また会えると思うから仕事頑張れよ!」


死神は手を振りカタカタと笑いながら


その場から消えていった。




「残念だな…お茶職人を仲間にしたかった…」


「いや、止めとけ!もうお腹いっぱいだ!」


「飲み過ぎたか?ガデル?」


「そっちの意味じゃねぇよ!」




目を覚ました全員が机のお茶を飲んで


片付けしてクルス隊長と共にべラムの街に戻った。


異変については明日有権者を集めて


報告するとクルス隊長に告げて


冒険者ギルドで依頼完了を報告して


完了印を冒険者プレートに押して依頼が終わった。


ついでに挙動不審の東達を登録させて


冒険者ランクDからスタートとなった。


この前絡んできた冒険者はべラムを離れたと


受付から言われた。




・・・辺境に耐えられなかったか?・・・


自分がした事を忘れてるトキ。


それを見て理解して溜め息を吐くガデル。




全員が久しぶりに拠点の孤児院にたどり着いた・・・

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