ゾラム領異変ー6

俺達は現在ゾラム領内手前の関所を抜けた。


今回はリケラに引っ張ってもらってる。1kmの山が動く。


近くを横切る通商の馬車は揺れて


まともに馬は歩けてなかった。


関所はリケラが助走つけてジャンプして通る。


近くの山が揺れにより土砂崩れ起こしたので


土砂を戻すのに時間を要した。


なんとか道が通れるまで直して


後はリケラに踏んでもらい地均しを行う。


ここまでで1日は掛かってしまった。




今いるメンバーは俺とヴァイス、ガデル、アーニア、


フィル、ルティ、ブラッド、リケラ、ケル、


ラグ、ルミス、シル、ゾラム侯爵に護衛5人。


護衛はリケラと会ったときに剣を構えたが


ゾラム侯爵が阻止して事なきを得た。




俺は夕方開けた場所でログハウスを出す。


部屋の数を調整してから大きくして全員入れる。


夜に全員が寝静まった時間にリビングに出向いて


お茶を用意しロッキングチェアに座る。


ストレージからテイマーギルドの首輪を出す。


眺め鑑定しているとある事に気付く。


「・・・お前ら寝てないのか?シル?ルティ?」


「ワゥ…」「キュゥ…」


床の上で正座しているシルとルティ。


「今日の事は仕方無いだろ?


首輪の呪刻印の呪いが発動したんだからさ」


「キュゥ…」


「落ち込むのは良いがな?


シルは関係無いだろ?何故してるんだ?」


「ワゥ…」


「わかんねえな・・・紙渡すから絵描いてみろ!」


「ワゥ」


トキはストレージから紙とインクを床に置く。


シルは器用に爪にインクを付けて絵を描く。


5分後・・・


「ワゥ」


「描き終えたか?見せてみろ!」


シルが紙を咥えてトキに渡した。


「えーと・・・


シルとルティと目に穴と鼻、棒人間かな?


ルティの後ろの線が2本と8本の絵があるな?


今の姿とオクタの姿か?


棒人間はゲルムの事だとして・・・


ゲルムが…着けるときに…鼻だから…匂い…かな?


なんか波線出てるから変な匂いかな?


ゲルムが着けるときに変な匂いがした。


それを言えずにか?シルのから3本線出てるし


次のシルの絵にバツ印ついてる…


穴が空いた目にバツ印・・・


なるほどな…目に穴が空いてるのは見抜けなかったか!


要約すると・・・


ゲルムがルティに首輪を着けてる時、変な匂いがした。


それを伝えれずに大きくなったルティ。


見抜けなかった自分に反省を与えてるのか?」


「ワン!」


シルの描いた絵から想像で読み取ったトキ。


それに気付いてくれたことに返事をするシル。




「夜中だから静かにな!


なるほどな…それで二人は正座しているのか?


いつからしてんだ?飯食べてからだったら


3時間は経ってるぞ?」


「ワン!」「キュイ!」


「そんなにしてたのか…あいつら言わなかったな?


本人の考えだからと・・・はぁ…


お前らもう良いからよ?元に戻せ!


反省してんだろ?そのまま寝る気なのか?


俺が今回の件は許してやるからよ?


元の姿勢に戻せ!命令な?


じゃないとそのまま俺が説教してやろうか?」


「ワゥ!?」「キュイ!?」


シルとルティは慌てて元の姿勢に戻ろうとするが


長時間していた為に転んでしまった。


「慌てるなよ…ゆっくりで良いからな?


もう遅いから寝ろよ!


俺はこれを見ないといけないんだからな?」


「ワゥ」「キュゥ」


シルとルティはふらつきながら


ロッキングチェアに近づき転ける。


「お前ら挟まれるぞ?仕方ねえな・・・」


トキは転けてる二人をロッキングチェアから離れて


抱き抱えて再度座った。


「これで大丈夫だろ?俺が見てるから寝ろよ!」


「ワゥ」「キュイ」


二人は首を横に振るいトキを見つめる。




「はぁ…分かったよ!今日はこのままな?


眠たければ寝るんだぞ?」


「ワン!」「キュイ!」


「返事は静かにな?皆寝てるんだから…


・・・机に近づけるんだったな…お茶が飲めん…」


「キュイ!」


ルティの足の痺れが取れたのか跳んで


机の上に置いてあるコップを持ち渡してくる。


「ありがとな!それじゃルティには


お茶要員任せるからな!


シルは慣れてないからもう少ししてからな?」


「キュイ!」「ワゥ…」


「しかしこのギルドの首輪ねぇ…


作ったのがあいつなのかねぇ?神楽坂かぐらざか?


ここではカグラか?どっちなんだろうな…


暗躍してるなら名前出さないよな…


って事は召喚されて軍事利用された口かな?


あいつらしい作りしてるよ!全く・・・


ジオラマとか作るの好きだったからな…


食品サンプルにも手を出してたし…


M.I.E.なんてメイドインエクサクロスだろ?


変な所が凝ってんだよな!


呪刻印もエクサクロスの言葉を使ってないし…


日本語だぞ?これ…あいつ分かってやってんのかな?


『解放かいほう』で外した人に反抗する…


『装着そうちゃく』で首輪が元に戻る…か…


『元に戻る』の意味が分からん!


反抗させたいんだろうが何がしたい?


戻るの定義は?大きさか場所か両方か?


場所なら首に戻る…大きさなら意味あるのか?


首輪が外されるんだろ?元の大きさに戻らすだけか?


両方なら大きい首なら締め付けられて窒息する…


確か伸縮性の魔物の皮だったな?


ゴムみたいなのか?それとも特殊記憶合金かな?


外した人に反抗するか…誰でも外せるのか?


それならこれって元々テイマー用じゃないよな?


奴隷の首輪として使えるぞ?


ん?奴隷の・・・確か保管してたな?」


トキはストレージから半分に割れた鉄の輪を取り出す。




「・・・これもM.I.E.が付いてんだな…」


トキが取り出したのはガデルが


ニバルの反乱軍偵察部隊の奴隷に使われていた腕輪。


「これもカグラが作ったのか?


文字がエクサクロスの文字だから気にしなかったが


文章が左からだな…訳分からん単語だから無視した…


似てる日本語の文章みたいなの出てくるから


偶然だと思ってたが…」


エクサクロスの文章は右から読む。


しかし首輪は左からの読みで日本語。


腕輪は左読みのエクサクロス共有語。


右から読むと違う文章になるので


トキはべラムに来た時には苦労した。




「ふぅ・・・ルティ…は寝たか…シルも寝てるな!


お茶飲みたかったんだがな…


仕方無いな…我慢するかね…」


トキは懐中時計を取り出して蓋を開ける。


時刻は午前2時過ぎたところ。


「俺も寝たいがベッドは無理だな…


シルを起こしてしまう…


独り言でよく寝れるよな?うるさくないのか?


まあ、考えるの止めますかね!


じゃないと徹夜しそうだしな…


最後に腕輪を・・・ん?内容おかしいな?


『死ねない体で高熱を放たれる…僕は生きている…


助けの心に耳を傾けて』・・・詩か?


毒針の事書かれてない…壊したいが音で起きるよな…


朝起きてから試しますか・・・」


トキはストレージに首輪と腕輪を戻して


椅子の揺れる感覚に体をよせて眠った。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数時間前、ゾラム領内のある村。


「いい加減外せないのか!これ以上は!」


「無理よ!私達以外見ると・・・ギャアアア…」


「外すのも無理だね…高熱が出てくる…」




手枷と首輪を嵌めている男女。


女性は男の手枷外そうとして


自分の手枷と首輪の呪刻印から呪いが発動して


死ねない体で高熱が放たれた。


体の内部を焼く感覚が巡り体外にまで伝わる高熱。


焼かれてると認識してても止まらない。


一定時間が経つと高熱が収まった。




「大丈夫じゃないよな…ごめん…


自分で出来ないからって任せて…」


「い…良いのよ…ふぅ…厄介よね…この枷!


反抗したら高熱。反抗の定義が多すぎるわ!


外すのも外されるのも駄目、反抗意思を持つのも駄目、


しかも私達以外見るとね?」


「・・・そうだね…惨劇が起きてしまう…


悔やんで悔やみ切れない…あい・・・ああああ!!!」


「おい・・・駄目だ…電気が流れてる…


悔やんで反抗意思示すと電気・・・


これは厄介極まりないぞ!どうしたら良いんだよ…


牢では反抗での熱だったが今は電気が流れる…


痛みの屈伏から精神攻撃の屈伏だ!


人に会わないようにしても意味がない。


反抗意思として高熱が放たれる。


人と会うと自分を失う。そしてこれだよな…」


ある男が見ると周りには血だらけの地面。


死体が山と成っており所々に欠損した箇所がある。




「あの山を作ったせいか腹も空かない…


考えない様にしてる現実が見させられるわね…」


「全く!僕達、日本人には辛い現状だよ!」


「電気から解放されたか?良かったよ…


屈伏して僻んだお前を見たくないから…」


「1人じゃないのが救いよね!」


「そうだね…共有出来る仲間に感謝だね!」


「嫌な共有だけどな?」


3人は理解している。


同じ境遇だから理解しあえると。


同じ痛みを!同じ憎しみを!同じ後悔を!


分かち合えてるから、耐えられてる。


1人でも屈伏しだすとドミノ倒しの様に崩れる関係。


それを知ってるから頑張って反抗している。




エクサクロスに飛ばされて暫くは集団で行動していた。


しかしある事件から仲間と離ればなれになった。


3人は合流出来たが数日後に捕まってしまった。


偶然知り合いと再会して浮かれてしまった。


もうサバイバルしなくて良いと思ってた。


しかし現実は違っていた。


ある場所に連れていかれてこの姿。


自分が助かろうと考えると他の2人に罰が与えられる。


最初は憎しみあっていたが今は一つの目標が


共有して生まれた為に仲良くしている。




「もう夜だから寝ようか…」


「そうだね…弔いは明日にしよう…次は何処に向かう?」


「前は西、今回は南に行ったから、明日は東で!」


「そうね、ニバルに態々向かってもね?


東に行って静かに暮らせる場所探したいわ!」


「それじゃ東で!僕この家にするから!お休み!」


「ああ…お休み!」「おやすみなさい!」




次の場所は東に決まった・・・


東にはトキが助けたバルの村がある・・・

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