スーサイド再びー9

ヴァイス達がヒュドラと戦い寝込んでから5日。




「おぉ、また変化してるな…羽?なのか?


それでも変わらないけどな…運命って奴は…


・・・ほらな!シル!自ら口に入ってった!


そういう生態なのか?美味しくなりましたの合図か?


ここで育った野菜達の動きは?」


「ワォウ?」




現在トキは拠点の畑で農作業している。


ここの野菜はスーサイドで生活中に偶然見つけた。


大根、人参、きゅうり。


他にもあるが特殊な野菜はこの3種類。


最初は普通だった。この場所では育つのが早い。


収穫中に野菜の変化に気付く。二股になっている。


障害物や周りに水源があるとなりやすい。


近くに川が流れてるからかなと思いながら収穫する。


販売用に作ってないから俺が食べるだけだしと考えてた。




ある日に大根を抜くと空中で足をバタつかせた。


気持ち悪くて手を離すとそのまま走り森に消えていった。


呆然としていると人参、きゅうりも走り出した。


自分で土から出て来て走る。


これを見てから脱走防止の柵を作り出す。


荒らしに来る奴は俺が潰してたからいなかった。


しかし柵を作っても野菜達は見えてるのか


柵を跳んで森に消える。ぶつかるのは最初だけだった。




この辺から周りに魔物が住み着く。


餌が自ら向かってくるから。その餌場探してここに来た。


俺は侵入防止の水の張った堀を作った。


堀も柵もあるから荒らされないと思っていたが


柵を跳んで逃げる野菜がばた足で泳ぎきる。


そして体に着いた水を振るい走り出し魔物に食べられた。


俺の中にある言葉が過った。『異世界だから』。


それから気にしなくなり農作業を続けてた。


種は残して逃げる。花が咲いて種が出来る。


逃げて来た野菜を食べる魔物はいつからか防衛する。


餌の確保が困難なスーサイドでは良い餌場だから。


そしてフィルやルティが仲良くなりラグ、ケルがいる。


リケラはフィルと戦い仲良くなった。


スーサイドから出る頃か?戻った時か?


野菜に手も生えたのは…


そして今、頭の葉がバタつかせ柵を飛んだ。


そのまま狼型魔物の口にダイブして食われた。


飛ぶのに助走はいるらしい。走って跳んで飛んだ。




「また変な動きをしてるな?


魔物なのか?野菜なのか?あれはどっちなんだ?」


「おぉガデル!起きたか!そして久しぶりと言おうか!


5日間寝てたからな?お前は!


あの野菜は・・・知らん!花咲かせるから植物か?」


「・・・あれ花咲くんだな…


俺はあれから5日間寝てたのか…」


「一番の重症だからな。仕方ない!


そしておめでとう!ヒュドラを倒せてな!よかったな!


ヴァイスが最後仕留めたぞ?でもな?


あれは流石に無いわな!


まぁ全員が起きてから説教するから!


今はもう少し休んどけ!ヒュドラ見たかったら言えよ!」


「ヒュドラはヴァイス君がな…


俺もまだまだってことだな!後でヒュドラ見せてくれ!


後は誰が起きてない?」


「そこは誰が死んだか聞かないんだな?


まぁ全員が起きてからと言ったからな…


後はルティとヴァイスだよ。


見立てだと明日までには起きるかな?


リケラとフィルは遠出してる。


ブラッドとケルはあそこで農作業してるよ!


・・・ん?いつの間にルティいるんだ?


ブラッドの頭で寝てるぞ?丸くないから安定するのか?」


「・・・さぁ?しかし変わらんなお前らは!


俺は風呂入って寝るから起こしてくれ!」




ルティがいることに驚いてるトキ。


ブラッドの3つの角の上で寝ていた。


ガデルは手を振りながらログハウスに戻った。




起きた順番はケル、リケラ、ブラッド、フィル、


ルティ?、ガデルの順。3日の夜にケルが起きた。


子供達に心配されながらルミスに怒られてた。


『なに怪我してんのよ!』と聞こえた気がした。


その後は家族仲良く寝ていた。


寝ているルミスの瞼から涙の跡が見えた。




フィルとリケラは橋と川の流れを見て回っている。


ラグの仕事を二人に回してリケラが川に押し込まれた


幻獣についても調査してもらっている。


リケラからヒュドラとは違うと聞いている。


見たら直ぐに戻って連絡しろと伝えている。




ブラッドはバットから鍬に持ち替えて耕している。


ケルはルミス達と雑草を抜いて間引きしている。


俺の隣にはシルが座っていた。


「シルは行かないのか?」


「クゥン?」


「お前が良いなら問題ないか…


さて久しぶりに雑食魚に餌やりに行くかな!」


「ワン!」


俺の後をテクテク歩きなから追いかけるシル。


・・・これは確実だな・・・


俺はある事に確信を持った・・・




俺が雑食魚のいる場所に行くと橋の上で


麦わら帽子を被って座って釣りしてる人がいた。


俺はシルを抱えて釣り人の左側に近づく。


「・・・どうです?釣れてますか?」


「いや~?駄目だね!全部食われとるね!


竿もやられて10本目だよ?」


「雑食魚ですからね?食われますよ!


ほら!11本目もやられてますよ?」


「ありゃ!本当だな!参ったなぁ…


また準備しないと・・・」


釣り人は後ろに三角の山形に置いてある


長さ1m、直径10mの丸太の一本を片手で持ち上げて


上に投げて手刀で直径1mの10本の竿を作る。




・・・早いな…1秒でスーサイドの木を…


スーサイドの木は普通の木よりも硬い。


人間大の兎型魔物が当たっても刺さっても倒れない。


初老の男性の声がする。体はガデルよりある。


服装は黒のコートに灰色のインナー、赤の長ズボン。


武器は持ってるようには見えなかった。


釣り人の右側には七輪みたいな調理用の炉があり


網の上に魔物の肉を焼いて食べている。




「いや~凄いですね!木を手で切るなんて!


焼いてるのは魔物の肉ですか?」


「あぁ、そうだよ!食べるかい?


さっき仕留めたばかりの兎じゃよ?美味しいよ!


あぁ、儂と釣りでもするかい?一人は暇でな?」


釣り人はコートから糸を取り出して竿に付けた。


2本目をつけ終えてトキへと渡す。


トキは釣竿を受け取り隣に座る。


虫を貰い糸を垂らして釣り人から肉を貰う。


シルはトキの左で川の中をみていた。




「・・・」「・・・」


橋の上で沈黙が漂う。理由は肉が旨かったから。


旨い食事をすると人は無言になると教えられる味。


二人は自然と笑顔で咀嚼する。トキは食べ終え…


「旨いですね?こいつにも上げても良いですか?」


「喜んでくれてよかったよ!確り下処理したからね!


ほい!君の分とそいつの分じゃ!


熱いから冷ましてから食わせるんじゃよ?」


「ありがとうございます!ふぅふぅ…冷めたかな?


シル?ほら肉だ!美味しいからゆっくり食べろよ!」


「ワン!」


川を見ていたシルが肉を見て器用に前足で掴んで


ゆっくりと食べ始めて旨いと表情を出してる。


トキはそのまま食べていると釣竿の糸が沈む。




「ホッホッホッ釣れたみたいじゃな?


おりょ?儂にも来たのぅ!よし、ほい!


ありゃ?力強いのぅ…また持ってかれたわい!」


「残念でしたね?こっちは30cmぐらいの奴釣れましたよ!


肉のお礼に捌くんで火炉使っても良いですか?」


「良いのぅ…羨ましいわぃ!えぇよ!火炉使いなさい!


儂も楽しみじゃよ?逆に食えるのがな?ホッホッホッ」


釣り人は笑いながら釣竿を準備し


トキとの間に火炉を置く。


俺は空中に投げて手刀で三枚下ろしにする。


もちろん鱗と内臓は取ってある。


隠し包丁もとい隠し手刀で切れ込み入れて焼く。


釣り人に1枚。俺とシルが1/2ずつ分ける。


外套の内側から取り出したように見せて


ストレージから塩と刻み香草の混ぜた調味料の小ビンを


振りかけて焼く。


ビンはそのまま橋の上に置いておく。


釣り人は驚かずに火炉の上の魚を見ていた。




「ホッホッホッ!用意が良いのぅ?」


「冒険者してますからね?


美味しく食べる為には必要ですよ?ですよね?」


「ありゃ?何の事かな?魚が焦げるぞ?」


「おっと!危ない!ありがとうございます!」


「いやいや、折角逆に食べるんじゃからな!


美味しくしないといかんよのぅ?」


「そうですね?おっ!釣れてますよ?」


「おぉ、釣れたら捌いて貰わんとなあ?よっと!」


・・・食えない爺さんだな…


トキは魚を焼きながら爺さんについて考えてた。


釣竿の意趣返ししたのに反応なし。


引っ掛けても逃げられた。雑食魚と一緒だな…


釣れるものを用意しないと…




「ホッホッホッ!釣れたわ!釣れた!


同じくらいかのぅ?トキくんや?」


「!?俺そんな名前じゃないですよ?」


トキは名前を呼ばれて驚くが釣り人に見せないように


魚を見るために下を向いていたので表情に出なかった。


「ホッホッホッ!警戒せんでも・・・


ってしないといかんわな?ここスーサイドだしのぅ?


魚は焼けたかのぅ?」


「えぇ焼けましたよ!どうぞ!


その魚の腹捌いて姿焼きしますか?」


トキは焼けた1枚を釣り人に渡す。


「そうじゃのぅ…腹捌いて焼くかのぅ…


名前を忘れていたな?儂はヴァルじゃ!」


「・・・ヴァルさんですか?


あぁ釣れた魚、捌きましたよ!クリプスさん?」


「!? あっ!」ポチャン!


トキはヴァルカが釣った魚の腹を捌いて内臓取り出し


串に刺して火炉に置く。


トキは魚の捌き終わりを伝えてファミリーネームを告げる。


ヴァルは驚き釣竿を落としてしまった。


トキはしてやったりと笑顔になる。




隠語を使いヴァルに知恵で勝利したトキ。


腹を捌く=腹を割る=正直に話しましょうと暗に告げて


ヴァルがファーストネームを略して伝えた。




スーサイドに入れる実力でトキの名前を知ってる。


そしてヴァルは最近振り返り、聞き覚えある名前。


実力ある冒険者じゃないとスーサイドでは殺られる。


実力無いと魔物を倒せない。


魔物を『さっき仕留めた』と言ってた。


雑食魚は引く力が強く、川に引きずり落とされる。


雑食魚を釣れる実力を持つ一般人が居るわけがない。


それを考えた結果がヴァイスの祖父。


ヴァルカ=クリプス。冒険者ランクA。


実力見る限りではSは超えてるだろう。


その考えが正しかったとヴァルは証明してくれた。


動揺し驚いて釣竿を落としてしまった。




「ホッホッホッ!凄いのぅ!流石、我が孫の先生じゃ!」


「まさかここで逢えるなんてね?


思わなかったですよ?ヴァルカさん?」


「ヴァルでええよ!敬語も使わんでええ!


冒険者としてそっちのほうが楽じゃろ?」


「それじゃ、遠慮なく…改めてトキです!こいつはシル!


ミックスケルベロスとフェンリルの子供だ!


依頼中だが暇だから連れ添って行動してる!


ほら!シル!挨拶だ!」


「ワン!」


「ホッホッホッ!躾られとるのぅ?宜しくじゃシル!


流石に危険度の高い魔物を


常に連れてるだけはあるのぅ?


グリフォンにゼクスマーブルテイルじゃったか?」


「あぁ、フィルとルティだな?


シルの親のケルベロスは仲間でしてね?


今は拠点で奥さんに尻に敷かれてますよ!」


「ホッホッホッ!人も魔物も一緒じゃな?


この年で知らない知識があるのは楽しいのぅ!


この森に拠点を持つとは噂以上の実力あるな?」


噂か・・・増えてそうだな・・・




「どんなか知らないが…話さないでくれ・・・


普通の人の感性してないから有名になるのは


嫌なんでな!正直、ヴァルの歳には引退して


ここで暮らす予定は立ててるよ!


ここは楽しいからな!飽きさせない!」


「そうじゃのぅ…まさか橋があるとは思わなかった!


トキがここに居るってことはヴァイスも居るのか?」


「居るぞ!今は意識不明で回復してるがな?


ヒュドラと戦わせた!頑張ったぞ!あんたの孫は!」


「ホッホッホッってなに!?意識不明じゃと!?


しかもヒュドラと戦わせたとはあんたは人か?


あれは10歳に戦わせる魔物じゃないし


スーサイドにいるはず無い魔物じゃよ!?」


「あぁ、やっぱりか…だと思ったよ…


グランドラ並みに強かったしな?


2体目はもっと大きかったが俺の敵じゃなかったな…」


「何!?グランドラ倒した!?巨体なヒュドラを倒した!?


・・・あんたは何者じゃよ?」


・・・何回目だろうな?この質問は・・・




「・・・よく言われるんだよな?


とりあえず元浮浪者で現冒険者ランクBのトキ!


言ったろ?普通の人の感性してないってな?


そうだ!ヴァイスの見舞いに来るか?喜ぶぞ?


いや…驚くな・・・あんたもきっと・・・」


「・・・一応、拒否権は?」


「ハハハハ!あるわけ無いだろ?なぁシル!」


「ワン!」


「・・・じゃよなぁ…腹くくるか・・・ああ!?」


「あぁ・・・焦げちゃったな…仕方無いな…


ほい!これ食ってから行こうかね?」


トキは釣竿を逆に持って竿を銛に変化させて


魚に突き刺した。糸を巻き取り魚を捌いて姿焼きを作る。


「・・・釣りなのかのぅ?」


「釣りってより漁かな?」


「ワン!」


ヴァルとトキ、シルは魚を焼いて食べてから


拠点へと向かった・・・

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