第44話迷宮ホウリョー11

「さてスーサイドの力は終わりだ!


あっさりと終わってしまい理解はしてたんだがな…


今の日常の力でどこまでいけるのか?


上手く激昂してるミノタウルスよ!!


5%で魔法とフルバルで試させてもらおうか!?


案山子としては最高に最適な相手だ!


さあ!観客のいる舞台を盛り上げ


喜劇を作り上げようじゃあないか!!」


トキは高らかに日常の力を使う事を告げて


戦闘態勢のミノタウルスと対峙する。


10mの巨体に仲間の武器を拾い


斧と棍棒の二刀流で戦うミノタウルス!


対して2mもないが各魔法に武器フルバルを


両手に携え物怖じせず嬉々としているトキ。


互いに間合いを作り出し睨み合う。


切っ掛けを待っている様に見える。




「え?危険度Aのミノタウルスが・・・


倒れるの見えなかった…首も両断されて…


夢だと信じたいけど現実なんだね…


本当に動きが一切見えなかった…」


「メリルさんに説明をしますね!ミノタウルスに


先生が突進して強風で足が後ろに下がり


体が前に倒れて両腕を緩衝材にしようとしたら


先生の武器と手刀で切断されてうつ伏せに…


そして別れの挨拶をして首を切断・・・


そんなところですかね?」


「あの数秒で!?首と腕は巨木みたいに太いよ!


それを手刀と武器でなんて・・・


腕は3mはあるよ?それを・・・」


メリルはヴァイスからトキの行動を説明され


驚愕しミノタウルスだった物を見る。


切断されて首が胴体と離れており


うつ伏せの体の下に横向きで切断面が外側の


両腕がある。




「・・・・・・」


メリルは声が出ない。


ミノタウルスを見て比較的に綺麗な死体に


トキの行動を見れるヴァイスに驚く。


目の前には手に届かない領域の人がいると


頑張っても足を踏み入れるか躊躇われるほどの


異常が存在している。


フィルやルティも見れてるのだろう。


正直嫉妬は無い。嫉妬すら出来ない実力者が


周囲にいると考えてしまった。


諦めに近い感情を抱いてる。


上には上がいる。シルドからよく言われていたが


遥か彼方の存在を認識してしまった。




「メリルさん?大丈夫ですか?」


「コォン?」「メリル殿?」


「・・・大丈夫…大丈夫だよ!


私頑張るよ‼絶対に辿り着いてみせるから!!!」


メリルは自分を奮い立たせ目標を定めた。


「なら良かったですよ!では日常の力は


見れると思いますので頑張ってください!」


「コオォン!」


「ありがとう!ヴァイス君にルティ!


私…私は見て戦いを見て力に変えて見せるよ!!」


「その意気です!メリル殿!


では僭越ながら・・・始め!!!」


フィルはメリルの上昇思考に感嘆し


トキへ合図に大声で開始を告げた。


フィルの声で両者が激突した。


シルド達もその頃には元に戻りメリルの思考に


共感して戦いを見守る。




「ブモォォォオ!!」


「ハアァァァァ!!」


ガキーーン!


ミノタウルスは右手の斧を振り下ろし、


トキは右手のフルバルを斧に変えて


鈍い音と共に激突した。


互いに力を緩めずに均衡を保つ。


本来なら振り下ろしの斧に力と重力、質量が


加わりフルバルは耐えられないはずだが


トキは地面に少しめり込みながらも


耐えていた。


「ウラァァァァ!!」


トキはフルバルを振り払いミノタウルスの


腕ごと斧を上げさせた。


上げさせる前にフルバルを通して雷魔法を流し


斧をを持つ手を痺れさせた。


痺れた腕で力が緩まるのを感じて振り上げたのだ。


痺れて握れない斧はそのまま上空に飛ばされ


回転しながら天井に深く刺さる。


ガン!!


ヴァイス達は斧を見て見上げた姿で固まる。


全員があり得ないと頭に浮かんだ。




「いや!いやいや!!あり得ないですよ!?」


「なんでヴァイス君が驚いてるの!?


あれは日常的の力じゃないの!?」


「あれは加減を間違えてますね!


おそらく10%まであげてますかね…


高揚してしまいミノタウルスに力を


合わせてしまったんでしょうね…」


「コォン!」


「あれがトキの力か・・・」


「お父さん!?気づいたんだ!!」


「仕事中はリーダーと呼べと言ってるだろ?


お前が乗ってるのは・・・ルティなのか?」


「コォォン!」「そうだよ!リーダー!!」


「そうか…あの話を聞いたが・・・


目の前で見せられるとな・・・」


「納得するしかないわね・・・」


「実力が違いすぎるし…ルティが羨ましい!!」


「何の話をしてるの!!ウォル!!


でもルティも元の姿がね……」


「ハハハ!ハハハハハハ!!笑うしか無いな!!


なんだこのパーティーは?


喋るグリフォンのフィルに3mある6尾の狐ルティ!


ミノタウルスと加減して戦うトキに


それを説明できる実力の子供ヴァイス!!


これで冒険者ランクCだと?


しかもスーサイドで暮らせる実力で


今まで強さに関して噂が広まってない!!


異色で異常すぎる!ハハハ!」


「えっと・・・シルド殿?心中お察しします?」


「コォン!」


「異常なのは否定出来ませんが慣れですね!


諦めとも言いますが…シルドさん達が驚愕してる


間に1体倒してますのでこのまま見学願います!」


「・・・!?本当だな・・・」


「凄いわね!綺麗な死体だわ!!」


「俺にはまだ無理だな・・・」


ダン!!ガシッ!!ドガッ!!ダーーン!!


シルド達はミノタウルスの死体に驚いてると


戦闘音に気付き見るとミノタウルスが投げられていた。


ミノタウルスは直ぐに起き上がり立ち向かう。




「良いね!良いね!!良いね!!!


最高だよ!!excellent!!


加減を間違えても立ち向かう姿勢は素晴らしい!!


普通は怖じ気づき逃げるが君は最高だ!!


奮起して立ち向かう!!なんて素晴らしいんだ!


観客も驚いてるよ?俺もだ!


棍棒での攻撃も自由自在!


気づいたら左手から右手に!


そしてまた反対へと持ちかえる!


素晴らしい技術だ!素直に誉めよう!


だがこれで終わりじゃないよ?


舞台は開けたばかりだ!もっと楽しもう!!」




トキはミノタウルスを誉めて襲いかかる。


トキの右手にフルバルが消えて左手にある。


技術を真似たのだろう。


背中までふる右手をフェイントに


背中で持ち替えて縦から横に攻撃する。


フルバルはスパイク付きハンマーへと変化している。


今までは斧だったが強力な打撃を与えるために


姿を背中で隠して表した。


「ダラァァァ!!」


横に構えた棍棒は意味を成さずに


脇腹へと打ち込まれた。脇には打撃と刺突の攻撃。


「ブモォォォ!!!」


横に飛ばされ痛みに鳴くミノタウルス。


その痛みを力に変えて勢い付けて回転する。


棍棒を右手に持ち低くスイングしてくる。


「グゥゥ!ガァァ!!」


トキは防いでみせたがホームランされる。


そのまま壁に激突し痛みを負う。


「カハァ!ハァ!ハァ!ハァ!フゥー…」


壁に激突し血と息を吐き出して


荒い息を静める。息を戻しミノタウルスを見ると


ミノタウルスの体から煙が立ち上ぼり姿を隠す。


ミノタウルスから煙が収まり霧散すると


さっきまでと姿を変えていた。




「・・・フゥおかしいな?目をやられたか?


人間との戦いに変化?いやこの場で進化をしたか?


大きさが10mから3mぐらいに小さくなってるな?


赤紫色で引き締まった体に角も3本で・・・


良いね!良いね!!良いね!!!素晴らしい!!!


環境に適応したのかな?この場で!?


俺を敵と認識してから巨体では駄目だと!


強く願った姿がそれなのかな?


ミノタウルスよ!!いや?牛鬼人かな?


牛の頭に人間の体を持つ神話の化け物が


進化して冥府の番人と化したのか!!


素晴らしいではないか!最高だよ‼


今から戦うからには進化をした


君はミノタウルスと呼べないな?


なら名前を授けて上げよう!感謝しろよ?


そうだな・・・『ブラッド』だ!!


紅の色と毒々しい紫で周囲を地獄のように


血に染めて血の池を作り出す!


吸血鬼よりも似合ってる名前だ!!


血を吸うだけの者よりも冥府の番人として


地面を血で染めて地獄を再現させる!!


さてブラッドよ?進化したお前の力を


俺に確りと確認させてくれ!!


さぁ!さぁさぁ!!さぁさぁさぁ!!!


第2幕の始まりだ!行くぞ!!!」


「モオォォォ!!!」


トキはブラッドに突撃を仕掛ける。




「・・・・・・」


全員が目を見開いて口を開けて固まってしまった。


進化した魔物に恐怖せず名前を付けて戦うトキと


進化した名前持ちの魔物ブラッドに対して驚愕した。


フィルはベロを出して目玉が落ちてる。


ルティは背中のメリルを落とさないように


頑張って持ちこたえている。


ヴァイスは暫く表情が戻らなかったが


意識を取り戻し周りを見る。




「・・・フィル・・・戻すの僕か…


目玉だけして…ベロは自分で直してもらおう!


ルティまでならなくて本当に良かった!!」


ヴァイスは静かにフィルの目玉を持ち


元の場所にはめ直す。同時に自動でベロも直った。


ヴァイスはドン引きして後退り


居た場所までもどっていく。




「しかし…魔物が進化をするなんてね!


あの生態の魔物はあのようにするのかな?


魔物はやっぱり不思議だね!


先生も喜びすぎて名前を与えたし


どれだけ強いんだろう・・・?」


ヴァイスは1人で考察し戦闘を見届ける。




ブラッドとトキは武器を前に出して


武器を交差させて均衡している。


トキはフルバルを斧に、


ブラッドの武器は棍棒から金属バットに


変化している。


「まさか野球でもする気かな?


そう言えばそんな名前の球団あったね!


ホームランバッターに転職か?


番人から選手ねぇ…つまらないな!!


選手より番人が似合ってるぞ!!


なら俺の武器も斧から釘抜きハンマーへ


変えて互いに打ち合いを行おうかああ!!!」




トキとブラッドはその場から離れて


トキは宣言通り釘抜きハンマーに変えて


互いに両手持ちで打ち合う。


互いに武器で守り攻撃する。


ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!


ドン!ドン!ドン!ドン!


互いの交差する金属音が部屋に響く。


獰猛な顔を持つ2体の獣がいた。




打ち合いを行い暫くして・・・


「お父さん?」


「仕事中は・・・いや…なんだ?」


「あの魔物って見たこと無いんだけど?」


「あれは危険度Sの牛鬼人だ!!


ここにいるはずのない魔物だな!!」


「そんな魔物への進化を私初めて見たよ!?」


「俺もだ!!普通は見れる筈が無いからな!!


貴重な体験させて貰ったな!!ハハハ…」




シルドは娘メリルからの質問に


答えて虚しく笑うしかなかった。


危険度ランクEの迷宮2つが繋がりその迷宮核を


破壊に来たのに目の前は危険度Sに進化した魔物。


いるはずのない魔物が目の前にいるのだ。


笑うしかなかった・・・。




そんな話を知らずに速度を上げて


攻撃していく2体の獣。


ぶつかる衝撃と音が合わなくなっていく。


2体の体に打撃痕が出来てるが


ひたすら打ち合い笑うだけ。


トキは日常的な力を止めて徐々にギアを上げていく。


互いの武器と体が悲鳴を上げていく。


決着の時が近づいていた。




パキン!!




遂に打ち合いしていた内の1つの武器が命を散らす。


ブラッドの凹む金属バットが耐えきれず


上下に分かれてしまった。


ブラッドは折れた上部を咄嗟に左手を伸ばし取る。


そのまま左右の時間差攻撃で


割れた面を素早くトキに突き出した。


まるでボクシングのジャブ、ストレートの様に。


シュッ!シュッ!・・・シュッ!シュッ!




トキは見切りブラッドの2回目の右ストレートで


戻った腕ごとハンマーで真横へ強烈に振り抜いた。


「ブモォォォ…」


ブラッドは耐えきれず壁に吹き飛ばされた。


壁にめり込み意識を失う。


手に持っていたバットの欠片が


カラン!カン!カン!コロコロ…


落ちて転がった・・・




「良い勝負だった!ブラッドよ!


顕現した冥府の番人が冥府に戻ったか…


素晴らしかった!!血湧き肉踊るとは


この事なんだろう!


お前が居てくれて本当に良かった!!


ありがとう!心から敬意を持って伝えるよ!


君は強者だった!ラグに匹敵する強さだ!


誇って良い!強靭で強固な肉体だ!


肉体言語で語り合えて本当に良かった!


進化してまで闘い抜いた姿を讃えよう!!」




トキはフルバルを腰に戻し拍手した。


パチパチパチパチ


トキ以外にヴァイスも拍手していた。


それを見てシルド達も拍手を始めて


ブラッドへの称賛が部屋に響き渡った。




拍手が鳴り止みトキの元にシルド達が向かう。


ルティはメリルを降ろしヴァイスの頭に乗ってる。




「凄かったぞ!トキ!魔物が進化したのは


驚いたがまさか打ち合いして倒すとは!!」


「ええ!本当に!私達では出来ない事でしょうね!」


「私感動したよ!近距離の使い手として


あの魔物の攻撃見切るなんて!勉強になったよ!」


「俺もだ!魔物の武器の打ち合いから格闘技…


それを実力で撃破したんだ!!」


「先生!流石先生です!」


「キュイ!」


「私もあんな闘いしてみたいです!」


それぞれがトキを称賛した。


「ありがとうな!楽しかったよ‼」


トキは笑顔で返答した。






ガタン!ガラガラ・・・


トキは音に気付き音の鳴る方へ顔を向けると


戦っていた牛鬼人のブラッドが近づいてくる。


「モォォォ…」


新たな闘いか?と思って構えたが


ブラッドは地に足を付け片膝立ちで


頭を下げていた。


王様に拝見する姿がそこにあった。


「・・・フィル?どういう事だ?」


マルチリンガルのフィルに話を聞く。


「主殿との闘いを終えて忠誠を尽くしたいそうです!」


「・・・え?本当に?」


「モォォォ!モォォ!」


「ええ!強者である主に従わせて戴きたいと


言ってますね…名前を戴き心から感謝していると!」


「・・・そうか・・・好きにしろ!


ただおれや俺の仲間に迷惑掛けるなよ?


掛けたら・・・終わりだ!!!」




尋常じゃない殺気を放ちブラッドに告げる。


殺気に体が震えたがここまでの強者に


忠誠心を得た事にブラッドは心から


嬉しく思いトキに敬意を持った。


シルド達はメリルを除いて殺気に対して


震え青ざめ息荒くなった。




こうして新たな仲間が増えた。


危険度Sの牛鬼人のブラッド。


フィルを通してトキ様と呼び


騎士のように振る舞っている。


武器は金属バットが馴染むらしく


今度新たに造る事を告げると喜んだ。




俺達はブラッドの案内で迷宮核に辿り着いて


核を破壊した。80cmの水晶玉だった。


シルドに任せて破壊させ水晶がひび割れる。


破壊した途端に地面が揺れて核の欠片と共に


地上へと転移させられた。


地上には生きている冒険者が次々に現れていく。


最初より2/3まで数が減ったが依頼は完了となり


各グループのギルド員の元に戻っていった。


俺は穏便に暮らしたいからとシルド達を


功労者として扱う様に伝える。


牛鬼人がいるから納得されなかったが


渋々ギルド員のゾルは理解した。


迷宮があった場所は今は平らになっている。


砦も洞窟も崩れて魔物も消えていった。


職人ゴブリン達の整えた風景はもう無い。


迷宮と認識されてたのか後から向かうと


ただの森になっていた・・・




俺達は突入してから6時間掛けて


迷宮ホウリョの核破壊依頼を完了した。


ギルドに迷宮核の欠片を渡して


シルド達を先頭にべラムでは盛大なパレードが


行われた。住人から称賛の声が街に響き渡った。




そして数日後・・・




「関係者は全員揃ったようだな?


では・・・正座あぁぁ!!!」


トキの怒声が響き渡った・・・

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