第37話迷宮ホウリョー4

俺達は現在、砦の探索をしている。


今は特殊緊急依頼の最中だ。


この砦は入口が4ヵ所ありそれぞれの入口から


大勢の冒険者が砦から繋がった洞窟へと向かい、


洞窟最奥の迷宮核を破壊しようとしている。


その中で俺達は初めての迷宮として


ゆっくりと探索していた。




元は昔、国の名前が違う時に建てられた砦。


戦争や防衛の為に建てられたがある日を境に


この砦は国から廃棄され放置された。


その日は戦争が終結・・・ではなく


周囲に魔物が突如現れた。


最初は守ろうと頑張ってたが


大量の魔物による襲撃に耐えきれず


兵士達が寝静まった夜に司令官は逃げ出した。


次の日司令官がいない事に気付き慌てるが


魔物は関係無く襲いかかる。


兵士の隊長がやむを得ず指揮をしていたが


兵士が少しずつ減っていく。


襲撃によるものではない。


司令官が逃げたならと考えた兵士が


逃亡を繰り返したからだ。


日が経つにつれ精神が消耗して


逃げ出す兵士は増えていく。


最初は千人程居た兵士が今は百人に減少。


指揮をしていた隊長は撤退を指示し


砦に人は居なくなった。


撤退をしている中で司令官だった死体を見つける。


魔物は夜に寝ても朝には起きる。


匂いを探ったのか音を聞いたか


司令官を見つけて食い散らす。


隊長が見つけた時は異臭を放ち


誰か分からなかったが着ていた服装で判明した。


その後兵士達はどうなったか分からない。


入口が開いたままの砦に魔物は占領する。


魔物が無意識に放つ魔力が周囲に漂う。


魔力が徐々に濃密となり1つの物を作り出した。


それは現在迷宮核と呼ばれている物だった。


核が形成され魔物が住みやすく砦は変化する。


現在当時の魔物の子孫が住み新たな魔物が


集まり魔物の集落となっている。


核から生まれる魔物もいて砦は人が守護していた


時よりも強固で驚異的な物と化していた。




トキ達は現在砦の2階にある書斎にいる。


当時の記録を読み込んでいた。


現在のラジュマ王国と異なる文字だが


トキとフィルは言語理解の能力を使い読み解いていた。


「なるほどな・・・砦のある理由は


分かった…だが気になるな…」


「そうですね…何故魔物が突如現れたのか?


ですね!主殿!」


「ああ!そうだ…この資料によると


当時周囲に魔物はいなかった…狩り納めたと


書かれてるが突如現れたと書かれている…


人為的なのか?それとも自然的になのか?」


「その資料は書斎にありませんでしたよ!」


「そりゃそうだ!自国で起きた事件だ!


他国からの人為的なら他国の資料に無いと


おかしいだろう?」


「そうですね…しかしもう1つ気になるのが


ありますね…主殿?」


「そうだな…その違和感のせいで人為的と


考えたんだからな…」


「「後半は誰が書いたか?だな…(ですね…)」」


「先生!見るのも良いですけど


手伝って貰えますか?流石に数が…」


「キュゥゥゥン…」


俺とフィルは魔物に襲われながらも読んでいた。


その間はヴァイスとルティに任していた。




「すまなかったな!資料は粗方回収したから


殲滅して隠し扉が無いか


調べて次に向かうとするか!」


「了解です!先生!」「キュイ!」


俺達は現在猿型魔物スイングモンキーと対峙している。


左右や前後に揺れて遠心力を使い体当たりしてくる。


ヴァイスは天井に揺れるスイングモンキーを


チャクラムで攻撃して落としていく。


ルティも土魔法で天井に剣の形をしたトゲを作り


刺していく。


俺とフィルは風魔法で風の刃を作り


切り刻んでいく。


目の前で揺れてた猿は全滅する。


死体を回収して書斎に戻りそれぞれが


考えられる方法で調べていく。




ガタン!ゴゴゴゴゴ・・・


ヴァイスの目の前にあった本棚が横に動く。


本棚が元にあった場所には通路があった。


「先生!これって隠し扉ですかね?」


「そうだろうな…誰が作動させた?


俺は中央に移動してて何も触ってないぞ?」


「キュイ!」


「ルティ殿みたいですね!


机のランプを触って動いたと言ってます!」


「僕も本棚触ってて押せる本が


有って押したんですけど…」


「んー…ルティもう一度ランプ触ってくれ!」


「キュイ!」


ガタン!ゴゴゴゴゴ…


本棚が元の位置に戻った。




「ヴァイス!押せた本を押してみてくれ!」


「了解しました!」


ヴァイスが本を押しても何も起きない。


「ヴァイスのほうがダミー…偽のものだったと…


ルティもう一度してみてくれ!」


「キュイ!」


本棚は何も起きない。




「?ヴァイスとルティ同時に触ってくれ!」


「了解しました!」「キュイ!」


ガタン!ゴゴゴゴゴ…


本棚が横に再度動いた。


「・・・なんだこのめんどくさい操作は?


二人以内と出来ないぞ?」


「そうですね…やるとしたら


ランプに紐をつけて同時に行うですかね?」


「ヴァイス殿?それもめんどくさい操作ですよ?


変わりないですね…謎です…」


「作った本人の趣向の産物か?


きっと一回も使われてないぞ?


隠し通路に埃がない!」


トキが通路に入り壁や通路を指でなぞるが


埃が見当たらなかった。




「埃がないってことは誰も入った事はないな?


良いねぇ!探索しがいがあるなこれ!!」


「誰も入った事が無い領域ですか!


ワクワクしますね!先生!」


「キュイ!キュイ!」「同感です!主殿!」


俺達はある意味で前人未到の領域に入る事に


冒険心が滾っていた。


「よし!それでは行くか!隊列は


ヴァイス、俺、フィルでヴァイスの頭にルティだ!


以前も行った隊列だ!大丈夫だろ?


ルティとヴァイスで前方を照らしながら


罠を見つけて解除可能なら行い、


駄目なら俺がする。フィルは後ろの


空間に風を流して体で感じ異常があれば


即俺に伝える!分かったなら行動開始だ!」


「キュイ!」「「了解です!先生!(主殿!)」」


俺達は隠し通路を歩き出した。


迷宮核の事は完全に頭から離れている。




暫く通路を歩いてると


「先生!分かれ道があります!


後この通路軽く下に傾斜がありますよ?」


「そうだな…フィル!前に出て右に風を流してくれ!


俺は左に流す!」「了解です!主殿!」


俺達は分かれ道に立ち左右に風を流していく。


音でも問題無いが風のほうが分かりやすい。


「主殿!こっちは直ぐに返って来ますね!


しかしなにかに当たったような対流してますね?」


「こっちはまだ返って来ないな…


先にフィルの方に行って対流の元を確認するか!


迷宮特有か製作者の宝物があるかもしれない!」


「それでは主殿とルティを残して行ってきますね!」


「ああ!恃んだ!なにかにあれば叫べよ?」


「了解です!先生!(主殿!)」


ヴァイスが火の魔法を使い明かりを前方に向ける。


フィルは足元から常に風を流していく。


ヴァイス達は進んでいき明かりだけが見えている。


「大分進んでんな…何もなければ良いがな!」


「キュゥゥゥン…」




ヴァイスとフィルはコンビで動く。


「乗ります?」「乗ります!」


ヴァイスはフィルに跨がり歩いてく。


「隠し通路ってこんなに暗いのですかね?」


「暗いほうが罠に掛かりやすいからね!


ほら足元のパネル罠ありますよ!」


「本当ですね!・・・ほいっと!トラバサミですか!」


フィルは風の圧力でパネルを押してザン!と


トラバサミが挟み出した。


「しかし・・・罠良く分かりますね?」


「パネルの色が他と違いますからね!


今度は壁に仕掛けがありますよ?」


「これはわかりますよ!矢でも来るんですね!


でもこうして・・・「ビュン!」残念!」


「態態、風で防壁作ってから起動させなくても…」


「こういうのも楽しまないと損ですよ!」


「殺しの罠を楽しむのはフィル達だけですよ…


普通は警戒して解除か破壊ですからね!


簡単に死にますよ?この類いの罠は…」


「そうなんですね?ヴァイス殿は貧弱ですな!」


「人はそういう生き物なんです!!先行きますよ!」


通路の罠を解除しながら進むヴァイス達。




ヴァイス達は右の通路の最奥に辿り着く。


目の前に座る骨の死体、前に宝箱が存在する。


「これが対流の原因ですか!違和感凄いですね!」


「そうですね…単なる行き止まりのところに


この死体…ふぅ…フィルから降りますね!」


「はい、どうぞ!」


ヴァイスはフィルから降りて近くに行く。


鎮座する死体を見ると剣を持っている。


宝箱に鍵は付いてない。


「フィル?宝箱と死体の間に風の壁作れますか?


宝箱の確認を行います!」


「分かりました!ヴァイス殿!」


フィルは鎮座する死体と宝箱の間に壁を作る。


ヴァイスは固唾を飲んで宝箱を触り開ける…




ガタン!シャァァァ!ドッ!ガシャガシャン!


宝箱を開けると死体が動きだし声をあげて


襲いかかるが壁に妨げられ崩れていく。


「やっぱりですね…予防して正解ですね!


中身は…紙束ですか?えっとこれは・・・


砦の見取り図ですか?何でこの場所に?


建築者の趣向ですかね?」


「ヴァイス殿?宝はありましたか?


ここまできて何も無しは嫌ですよ」


「宝箱には砦の見取り図が入ってました!


僕は読めないので先生に見てもらいましょう!


フィルは砦の見取り図の見方分かります?」


「ハハハ!分かる訳無いじゃないですか!


魔物ですよ?分かりません!」


「ここで魔物を主張するんだね…


なら戻って先生に見てもらいましょう!」


「了解です!ヴァイス殿!」


ヴァイスはフィルに跨がりトキの元に戻る。


戻るとトキとルティは・・・


カラカラ・・・


「4!また勝ったな!ルティとの勝負6勝3敗で


俺の勝ち越しだな!次で最後の勝負だぞ?」


「キュゥン…キュイ!」


「気合い入ってるな!ならルティから振るか!」


「キュイ!」


ルティは器用にサイコロを振る。


「出た目は4か…なら俺の番だな…ハッ!」


トキがサイコロを振る。コロコロ…


「目は・・・6!これで7勝3敗だ!


残念だったな!ルティ!これも運だ!」


「キュゥゥゥ…」


ルティは悲しそうに鳴く。


「先生・・・何してるんですか?」


「おぉ!ヴァイス達か!お疲れ様!


風の確認終えて暇だったからな!


ルティとサイコロで遊んでた!俺の勝ち越しだぞ!」


トキは嬉しそうにヴァイスに伝える。


「先生…ここは迷宮ですよ?」


「知ってるよ?だから仕事しながら遊んでた!」


「仕事って…書斎の資料ですか…良く魔物に


襲われてないですね?」


「魔物はあそこだぞ?壁に成ってるから入ってこない」


ヴァイスはトキが指差した方を向くと


魔物の死体で出来た山が構築されていた。


「久しぶりに武器を使ったよ!腕落ちてたな…


たまには使わないと駄目だな!


時間も12時過ぎたし昼飯にするか!」


「キュイ!」


「・・・どこから突っ込めば良いのか…」


ヴァイスは呆れてしまった。




トキ達はストレージから昼飯を用意して


食事に入った。ヴァイスは通路先にあった物を


トキに渡して通路での出来事を話す。


「罠に砦の見取り図ねぇ…」


パラパラと見取り図を流れ見ていく。


「これで砦の内部が大方分かるが


現状と形が大分変わってるな…


見取り図からは2階建てだとあるが


砦は3階建てに変化してるぞ?


3階か新たに造られ核が置かれたか…


隠し通路も書かれてるが1本道とある!


大分変化してんだな!誰も調査しなかったのか?」


「冒険者は依頼以外は入らないですからね…


物好き以外は調べないのでしょうね…


べラムに戻れば資料があるかも知れませんが…」


「そうか・・・なら通路調べたら3階を調査して


洞窟へと向かうか!1・2階は調べ終わったし


洞窟への入口も確認済みだしな!」


「了解です!先生!(主殿!)」「キュイ!」


トキは昼飯の後の予定を告げて


行動確認を終える。




左の隠し通路へと歩み出す・・・。

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