第9話スーサイドー9

狼達の狩りを終えた翌日

森の中の生活11ヶ月目となり

グリフォンのフィルと

クワトロマーブルテイルのルティと共に

ログハウスのリビングで手紙を読む。


フィルとルティは現在体長2mある。

ルティは姿を変化できる為、

今は初期の赤と黄色のマーブルテイルで

フィルの頭に乗っている。


手紙の内容は・・・

『トキ君、森の中での生活

いかがお過ごしでしょうか?

私はきっと二人の世話を

まだしている事でしょう

ペットの卵はどうでしたか?

良い絆を結べていたら先生は嬉しいです。

さてトキ君のいる森は本来危険な森です。

この手紙を読んでる頃には

外の世界の人より強くなっているでしょう

その結果、心が悪い方向に向かってなければ

良いなと思っています。

後1ヶ月で森での生活は最後になります。

という事で最終試験を与えます。

最終試験は皆でこの森の大ボスである

「グランドラ」を倒して下さい。

簡単に書くと大きな大きな翼竜です。

これを倒せば一人前として

修了認定を与えます。

頑張って倒して下さいね。

決して気が抜けない相手なので

死なない様に。

あの部屋で死んだトキ君と再会するのは

嫌ですからね。

以上、坂口先生からでした♪』


「「「・・・・・・・・・」」」


手紙を読み終えてログハウスの中に

静寂が佇む。


「大ボスの翼竜グランドラか・・・」

「主殿、これは・・・」

「キュウゥゥゥン…」

「うん、言いたい事は分かるよ…

前に皆に伝えたもんね…」


それぞれ大ボス、グランドラに対して

言いたい事を述べる。


トキは持っている図鑑に手を伸ばし

グランドラのページを探し読む。


図鑑によると山ほど大きな翼竜で

全属性の魔法を操り、全耐性をもつ。

唯一の攻撃手段は物理のみ。

しかし半端な力では届かない程の防御力で

擬態能力はカメレオン並み。

気配に敏感で敵を直ぐに見つける。

速さも森の魔物の中で一番で

動く度にソニックウェーブを放つ。

確り準備をしないと最初の邂逅で即死。

体力が少なくなると凶暴化して

数日は暴れる。


こんな敵はゲームでも

隠しバグボスキャラとも書かれている。


何故この世界にいるのかも不明らしい。



「「「・・・・・・・・・」」」



図鑑に書かれている文章を読んで

図鑑を静かに閉じて机に置き

目を瞑って顔を上げて目に右手を当てる。


改めてログハウスの中に静寂が佇む。


「大ボスグランドラは隠しボスで

バグキャラか…」

「主殿、これは…」

「キュウゥゥゥン…」

「うん、うん、言いたい事は分かるよ…」

「しかし主殿!これは無理な試練ですよ?」

「キュゥ!キュゥ!」

「うん…だから

どうしようか考えてるんだよ…」


それぞれ大ボス、グランドラに対して

切なそうに再度言いたい事を述べる。




・・・先生、もう大分前に倒してます・・・

・・・しかも一人で・・・


思い出として大ボス、グランドラとの対決は

森での生活4ヶ月程経った頃の事だ。

当時俺は土地開発に勤しんでいた。


飛ばされた直後に鮮烈な

異世界の厳しさを受けて

生活基盤を整えていた。


城や教会での召喚、知らない草原、

ゲーム知識のある森の中、

暗い洞窟などではなく

危険度SSランクの森の遥か上空。


高校での授業中、異世界の2ヵ国同時召喚に

巻き込まれ、俺は坂口先生に説教されて

正座している男の子(神様?)と初老の男性の

いる部屋に飛ばされた。


坂口先生から異世界に召喚される直前に

男の子が俺を偶然確保してここにいる事。

(確保した理由は怒られない為・・・)


元の世界に戻れないので

異世界エクサクロスでの生活を

しなければいけない事を告げる。


異世界の知識を得る名目で1週間

転生・召喚系のライトノベルを数冊読破。

(部屋での時間と異世界の時間は

異なるらしい)


恩恵に家のミニチュア、魔法や卵、

図鑑を貰い

男の子・・・ではなく坂口先生の手で

強制的に部屋から転移させられる。


高校の学ラン姿のままで異世界の大空へ。


パラシュート無しのスカイダイビング。


落下中に学ランを全開にして

風の抵抗作ったり

必死に魔法を使って落下速度を

落として地面へ到着。


強制的に魔法と発想力と精神を鍛錬。


森に入ると死のスカイダイビングは

生ぬるい事が判明。

森の中からが本番だと理解する。


襲いかかる魔物に肉食植物。

ほとんどが俊敏で強靭。

速度は平均で新幹線並み、

小さい角付き魔物でも

突進するとダーツの様に木に突き刺さる。


森の木も強固で牛並みの大きな魔物が

突進しても倒れない。

良くて木葉が一枚落ちるだけ。


弱肉強食の世界で生きるか死ぬか。

死ねば森の肥料となる。

肥料に成らなかった死体は希に

別種の個体で融合しそれぞれの特徴を

活かして襲いかかる。

飛んだり跳ねたり骨飛ばしたり。


あらゆる混合死体キメラアンデット。


その中で一般人の俺が強制的に森での生活。

唯一の武器は魔法で反射的に放つ。


俺の魔法は全て無詠唱で名前なんてない。

知っている魔法名は

空間魔法のストレージだけ。


常に視線や気配を探る。

死ぬ気で3日過ごせば自然と身に付き

1ヶ月経ち森の生態調査をしていた。


・・・あれ?今までを

振り返ってるだけだ・・・

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