第11話 決戦、そして、土
音もなく空中に現れたその男は、この世界を蹂躙しようとせしめる魔王本人だった。
「貴様ら。俺様の部下をよくも皆殺しにしてくれたな!」
「むっ。いかん!」
魔王が恐ろしい形相を浮かべて右手を空にかざした瞬間、俺は三人の前に巨大な壁を形成する。
その直後、魔王の片手から無数の巨大な火球が放たれ、俺たちの上に降り注がれた。
その強力な魔法をコンクリートでなんとか防げたが、地面には巨大なクレーターが幾つも完成しており、それを目の当たりにした俺以外の三人は完全に戦意喪失して地面の上で震えていた。
「楽に死ねると思うなよ。特に、そこの貴様! お前は何者だ?」
魔王は俺を指差すなり、声を荒げた。
「土だ」
と、俺は答えた。
「土だと? ふざけおって……それなら、この大地ごと消し去ってくれるわ!」
魔王はそう吐き捨てると、両手を天に掲げて超巨大な黒い火球を出現させる。
このままだと、俺はいいとして他の三人が塵にされてしまう。
それは流石に見過ごせない。
だからこそ、俺は本気を出すことを決めた。
「魔王よ。お前は誰を相手にしていると思う?」
「なんだと? そんなもの、ただのゴミクズに決まってるいるだろうが!」
俺の問いかけに魔王が片方の眉を吊り上げ激昂する。
どうやら、奴は何もわかっていないようだ。
仕方ない。俺もこの体に慣れてきたことだし、そろそろ本当の姿を晒すとしよう――。
「魔王、お前が相手にしているこの俺は――」
と、空に浮かぶ魔王を見据えながら、俺はこの大地にある全ての土を集約して上半身を形成し、ゆっくりと体を起こした。
「そ、そんな……バカな」
俺の真の姿を目の当たりにして、魔王の顔が蒼白になる。
なぜなら、俺の上半身は地上から五千メートルの高さまで至っているからだ。
「魔王よ。お前は永く生き過ぎた」
「……ちょ、まあああああああああ!?」
と、魔王が何かを言う前に俺は大きく広げた両手を胸の前で合わせるように合掌した。
その際に発生した暴風が魔王城を消し飛ばすと、辺りを静寂が包んだ。
閉じられた俺の掌の中心には、潰れた蚊のようなになった魔王の亡骸が左右の掌に付着していた。
「まったく……女神様はこの俺に、とんでもない土を与えてくれたな」
女神が俺に与えたスケールのデカイ土。
それは、この大陸中に広がる【大地】そのものだったのだ……。
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