第12話 エピローグ、そして、土

 魔王討伐から数日後。

 俺たちは王都へ招待され、国王陛下との謁見を実現していた。


此度こたびの活躍、心から感謝するぞ。英雄たちよ」


 サンタクロースのような口髭を蓄えた国王陛下は、立派な玉座に腰掛け自慢の口髭を擦りながら俺たちを労う。

 勇者とエルフとウンディーネの三人は、正装に身を包み、国王陛下の前で片膝を着いて頭を下げている。

 土である俺はプランターに移してもらい、国王陛下と顔を合わせていた。


「魔王を倒した英雄『土』よ。そなたには、感謝してもしきれぬ。なにか欲しいものはないか?」


 国王陛下にそう問われた俺は、無礼を承知で言葉を返す。


「恐れながら国王陛下。欲しいものなら、俺は既に手に入れております」


「なんと! それはどういうものだ?」


 どこか納得していない表情で首を傾げる国王陛下に俺は続ける。


「俺はこの旅で、掛け替えのない大切な仲間と、この世界に存在する全てのを授かりました……。これ以上の褒美など必要ありません」


 俺の返答に国王陛下は驚いた表情を見せたが、スグにニッコリ微笑み自慢の口髭を擦った。


「そうであったか。ならば、これ以上はなにも言うまい。感謝しておるぞ土よ!」


「はい。感謝のお言葉をありがとうございます」


 こうして、国王陛下との謁見は終了し、俺たちは解散することとなった……。


 ○●○


 国王陛下との謁見を終えたあと、俺たち四人は王都の入り口前で最後の別れを惜しんでいた。


「ツーさんともこれで最後か……」


 少し涙目でそう話す勇者は、王都で国王陛下直属の騎士に任命されたそうだ。


「土さん。今まで色々と助けてくれてありがとうね……」


 エルフはウンディーネと共に故郷の森へと帰り、残りの余生を過ごすという。


 食中毒で命を落とし、この異世界に土として召喚された俺だったが、過去を振り返ってみると、本当に楽しい日々ばかりだったと思う。


「そんなに辛気臭い顔をするな。例え離れていても、俺たちはいつまでも仲間だろ?」


 俺の言葉に勇者とエルフがポロポロと涙を零す。

 今思えば、この二人と出会ったことが全ての始まりだっただろう。


「グスッ……ツーさん。本当にありがとうございました! たまには王都に遊びに来てくれよな!」


「あぁ。その機会があったら、ここに立ち寄るさ」


「ヒック……土さん! いつでも私とウンディーネお姉さまのいる森へ遊びに来てくださいね!」


「土様。アタシも愛するエルフと共にアナタが来ることをお待ちしているわ」


「あぁ、そのときは世話になるよ。それじゃあ、三人とも……達者でな!」


 俺は涙を流す三人にサムズアップすると、宛もなく放浪の旅に出た。


 例えどんなに離れていようとも、俺はいつでも彼ら彼女らを見守っている。

 なにせこの俺は、この世界の大半を構成する【大地】であり、【土】なのだから――。

 

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