第7話 火の魔人、そして、土

 風の魔神シルフとの戦闘から数日後。

 俺たち三人は、魔王が四天王のひとり【サラマンダー】と、対峙していた。


「魔王様に逆らうウヌらは、このサラマンダーが消し炭にしてくれるわぁぁぁぁっ!」


 開口早々、四天王のひとり炎に包まれた巨大トカゲのサラマンダーは、出会って五秒でテンションギガMAXだった。


「クソッ! こいつの纏う熱風が強すぎて近づくこともままならねぇ!」


 相変わらず、勇者のくせに役に立たない彼の捨て台詞に、流石の俺も嫌気がさし始めていた。

 コイツ、本当に戦う気はあるのか?


「つーか、暑過ぎぃ! 下着の中までびしょびしょじゃん!」


 そう言って、上着やらスカートを脱ぎ捨て下着姿になったエルフを見てサラマンダーが鼻息を荒げる。

 おいおい、なんで敵を前にして興奮しているんだお前は?


「ムフゥーッ! きょ、今日は特に暑いわい! 流石のワシも暑くて敵わん!」


 炎の権化らしからぬ発言に俺も戸惑う。

 というか、下着姿のエルフをガン見し過ぎではなかろうか?


「どうするよツーさん? 奴は炎を操る魔神だ。このままだと、うちのエルフが暑さにヤラれて裸にされちまうよ!」


 知るかボケ。

 というか、ツーさんてなんだ?


 とはいえ、婚前の女子が男の前で裸になるのは不謹慎だ。今回もやはり、俺がなんとかするしかないのだろう。


「勇者よ、俺に任せろ」


「流石だぜ、ツーさん!」


 いや、少しはお前もなんとかしろよ。


 俺は半裸のエルフをガン見して鼻の下を伸ばしているサラマンダーに接近すると、ドーム型の土壁で奴を閉じ込めた。


「な、なんだこれは!? エルフの裸を見れないではないか!」


 いや、そっちかよ。


 密閉されたドームとなった俺の体内でサラマンダーが炎を噴出させる。

 しかし、その行為が自らの命を削り取っている事を奴は気付いていないようだ。


「な、なんじゃ……頭が痛くて、呼吸が苦しい……それに、意識が朦朧としてきたわい」


「当たり前だ。貴様がこの密室の中で炎を燃やせば燃やすほど、一酸化炭素が増えてゆく。その毒気の中で生きられる生命体などこの世にはいない」


「そ、そんなもの! ワシの炎で燃やし尽くしてやるわい!」


 いや、だから死ぬって。


 俺の体内でサラマンダーが火力を高める。

 しかし、それから数分も経たないうちに、俺の体内でサラマンダーが窒息死したことを確認した。


「サラマンダーよ。お前のその情熱は俺の中で確かに燃えていたぞ」


 かくして、魔王が四天王のひとりサラマンダーを葬ると、俺たちは次の四天王を目指して旅を続けた。


 

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