第6話 風の魔神、そして、土

 勇者とエルフと共に魔王討伐へと繰り出した俺は、魔王が四天王のひとり、風の魔神【シルフ】と、戦闘を繰り広げていた。


「クソッ! なんて厄介な風魔法なんだ!」


 勇者が聖剣でシルフを斬りつけようとすれば、その足元からカマイタチのような突風が吹き荒び、近づく者を容赦なく斬りつける。

 現にエルフがその風魔法を受けてしまい、現在は衣服をズタズタに引き裂かれ、ほとんど半裸の状態となっていた。


「んもぅ! なんで私の服ばかり攻撃するのよぉっ!」


「ケケケッ! そんなの、おめえさんのエッチな身体を見たいからに決まっているだろ?」


 全身が白いモフモフとした獣のような姿のシルフはかなりのクズだ。


「チクショウ! このままだと、エルフが全裸にされちまう。こいつを裸にしていいのは、勇者の俺だけなのに!」


 うちの勇者もなかなかクズだった。


「ケケケッ! てめらには万が一の勝ち目もねえ。このまま大人しく、エルフを裸にさせやがれ!」


 いつからそのような争いになったのか。


 シルフは両手を上げると柏手を打ちながら「あっと一枚♪ あっと一枚♪」と、なんか楽しそうにはしゃいでいた。


「あの風魔法さえなんとかできれば……」


「それなら、俺に任せてもらおう」


「土さん。なにか奴を倒す方法でも見つけたのか!?」


「なあに、俺は土のエキスパートだからな。ここは任せておけ」


 俺はそう言うと、カマイタチを発生させるシルフに堂々と接近する。


「テメェ、この俺様に切り刻まれてぇのか!?」


「悪いが、俺は土だからお前の風魔法が当たらない。なにせ俺はお前が立っている地面そのものだからな」


 俺はそう告げると、シルフの四方を囲うように壁を形成した。


「な、なんだこの壁は!?」


「バカめ。これは俺が体内でセメントを構成し、それに砂と水分を混ぜ合わせ構成したという最強の監獄だ。お前の風魔法など、ただのそよ風にしか過ぎない」


「な、なんだと!?」


 狼狽するシルフを尻目に俺は勇者を手招くと、声を張る。


「勇者! お前のその聖剣ならこの壁を貫ける。奴にトドメをさせ!」


 俺の言葉に勇者は頷くと、シルフを閉じ込めた壁に大剣を真っ直ぐ突き立てた。

 その刹那、シルフの断末魔が周囲に響き渡り、俺たちは勝利した。

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