第5話 旅立ち、そして、土
衝撃の戦闘から数分後。
土となった俺は、エルフと勇者の二人から誤解を解いてもらえると、道端で話し込んでいた。
「……事情はわかった。要するに、アンタは女神の祝福を受けて召喚された存在って、ことだな?」
「そうだ。まぁ、土だけどな」
「でもさ、女神さまが祝福を受けたってことは、この人……この土? さんは、すごい能力を授かっているんじゃない?」
エルフはそう言うと、勇者の片腕に抱きつき口元を笑ませる。
それを見て勇者が鬱陶しそうな顔をして口元を歪めた。
「おい、エルフ。お前まさか……こいつを冒険に連れて行くつもりじゃないだろうな?」
「だあって~、この土さん物理攻撃も魔法も効かない最強の存在なんだよ? 魔王を倒すのに必要じゃない?」
エルフが言った言葉に「それはまあ」と、勇者が渋面を浮かべる。
どうやら、この世界には魔王が存在しているようだ。
「ひょっとして、お前たち二人は魔王を討伐する旅をしているのか?」
俺がそう尋ねると、勇者がそうだと言って首を縦に振った。
「魔王の配下には【四大魔神】と呼ばれた下僕がいてな。そいつらを倒さないと魔王がいる魔王城には行けないらしいんだ」
「だからさ、土さんも私たちと一緒に魔王からこの世界を救おうよ! アナタがこの世界に召喚されたのは、きっとその為だよ!」
ややテンション高めでエルフがそう捲し立てくる。
まぁ、俺としても特にすることも目的もないわけだから、この世界で生きる人々のために魔王と戦うのはやぶさかでもない。
なにせ俺は土で無敵らしいからな。
「わかった。俺も二人の旅についていこう」
「本当にいいのか?」
「かまわんさ。なにせ俺は暇だからな?」
「それなら改めて宜しく頼むよ土さん」
「あぁ、こちらこそ」
握手する手を差し出してきた勇者に応えるため、俺も片手を差し出してみると、地面から土でできた片腕が現れた。
その後、俺と勇者は堅い握手を交わすと、魔王討伐へと向かい歩み始めた。
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