第4話 戦闘、そして、土

 衝撃の出会いから数分後。

 土となった俺に二人の冒険者は武器を構えて警戒していた。


「お前、新種のモンスターか!?」


「いや。俺は元人間で現在は土だ」


「そんなバカげた話を信用できるか!?」


「とは言われてもな。真実なのだが」


「ねぇ、勇者。こいつ、さっき私のスカートの中を下からジッと見上げていたのよ!」


「あぁ、すまない。なにせ俺は土だからな。上か横しか見えんのだ」


「ふざけやがって……お前がモンスターなら、ここで討伐してやる!」


 勇者と呼ばれた青年は構えた大剣を振り上げると、勢いよく俺に振り下ろしてきた。

 その先端が俺の顔面に深く突き刺さるが、まったくもって痛くない。

 なにせ俺は土だからな。


「すまないが、俺に物理攻撃の類は効かないようだ」


「そ、そんなバカな!? このドラゴンの皮膚でも両断する俺の聖剣が通じないだと?」


「それなら私に任せて!」


 エルフの少女はウィンクをすると、その手に炎の玉を出現させる。


「これでも喰らいなさい! フレイムボール!」


 彼女から放たれた大きめの火球が俺に直撃すると、土を巻き上げて爆散した。

 だが、俺は土の中を自由に移動できるから正直、通用しない。


「残念だが、俺はキミたち二人が踏みつけている地面そのものだから、その手の魔法攻撃も通用しないようだぞ?」


「な、なんなんだよお前は!?」


「土だ」


 至極真面目に俺がそう答えると、エルフの少女と勇者と呼ばれた青年は呆然としていた。

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