第2話 転生、そして、土

 意識を失ってからどれほどの時間が流れたのだろう。

 俺の身体はフワフワとした感覚に包まれていた。


『目覚めなさい』


 いや、無理だ。目が開かない。


『目覚めなさいって』


 いや、だから、目が開かないって。


『んもぅ! 目覚めなさいって言ってるでしょ!』


 なんだ? 怒っているのか?


『それは怒るに決まってるでしょ! さっきから女神のアタシに何回おんなじこと言わせてんのよ?』


 おそらく、三回だ。


『三回だからなによ!? 正常な男子なら、アタシの甘い囁きを聞いた瞬間、身体もアソコもスグにおっきするものなのよ!』


 ……身も蓋もないな。


『うっさいわね! コホンッ。えーと、喜びなさい。アナタは女神の祝福により、新たな人生を生きる機会を与えられました』


 新たな人生、だと?


『そうよ。なんか文句でもあんの?』


 ……ある。


『はぁっ!?』


 いや、ない。冗談だ。


『それでいいのよ。たく、人間の分際で口答えとかあり得ないから!』


 ……それは失礼をした。どうもゴメンナサイクソビッチ。


『え? ちょっと、なんか謝ってるようでそうじゃない感じがするけど……』


 これは俺の世界で最上級の謝罪だ。


『そ、そうなの? それならいいわ! ところで、アンタはどんな能力が欲しい?』


 上機嫌な女神に前フリもなくそう言われた俺は迷うことなく即答した。

 土になりたい、と。


『は? 土って、普通に土?』


 そうだ。


『いや、別にいいけど。アンタ前世で土食って死んでんのよ? わかってる?』


 あぁ。それでも俺は土が好きなんだ。


『あっそ。じゃあ、ただの土だとなんかアレだから、アンタをもっとに転生させてあげるわ!』


 その後、高飛車な女神が祝詞のようなものを唱えると、俺の意識が遠のいた。

 

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