第3話 カブ・トーキング・ハイウェイ
「サラ嬢ちゃん!!こっちこっち!!」
店に入るなり奥のガレージから顔だけだしたおっさんが呼んできた。
もぐもぐと食べかけの食料を咀嚼しながらガレージへ向かうとさっきのカブが修理されていた。エンジンは動くようでドドドと馴染み深い音を立てている。タイヤなども使えるものに変えられたようで、綺麗になっている。そして
「おー!あんたがワイを掘り出してくれたサラ嬢ちゃんか!おおきに!」
変な言葉を喋った。私は干し肉を口から下に落とした。
「いやー、生まれて5年ぐらいはな?なんとか持ちこたえとったんやが、この前の地震で大きく動いたもんでそんときエンジンが不動になっちまって。そっから意識が遠くに飛ばされそうになってたところを掘り起こされたんで。いやー助かった助かった。おっちゃん、整備の腕は大したもんやで。こんな短時間でワイを使えるようにしてくれたんやからな!」
そう流暢にしゃべるカブ、対面するおっちゃんは職人気質のせいか褒められてから照れてるし、私は大きな口を空けたままだった。
「え、カブって喋れんの?!」
おっちゃんに聞くと「まぁ喋れるやつもいるんだろうな」と答えた。
ぶっ飛んだテクノロジーだとは思ってたけど、まさか。
「あんたらもあるやろ?なんかこー機械とかものとか使っとったら声が聞こえる瞬間。あれの永続バージョンやと思ってくれればええて」
よくねえよ、という言葉を飲み込んだ。
「で、あんたは喋って何かしたいことでもあんの?」
そう尋ねるとカブはもちろんと前置きを置いて、
「走りたいに決まっとるやろ」と答えた。
「おっちゃん、どうすんのこれ」
おっちゃんは少し悩んで、もう少し整備したりない部分があるから整備をしてその後は店で売ろうかな、と答えた。喋るカブならたしかにいい値段で売れるだろう。珍しいどころか見たことないし。するとカブは
「えー、知らん人間にワシ売られるんかい!それやったらそこの嬢ちゃんの足にしてくれや!頼む、一生のお願い!」
そうおっちゃんを口説き落としていた。なかなか悩むおっちゃんに対し手練手管(手も足もないが)、巧みなワードで説得し、最終的におっちゃんが折れた。申し訳ないので売っぱらった金額をおっちゃんに返したが、ガソリン代とか消耗品に当ててくれと結局押し付けられた。
そうして、私とスーパーカブは帰路についた。
そして世界はカブになる 春根号 @halroot
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