第2話 ガール・ミーツ・カーブ

 物心ついてからカブはそばにいた。マニアックな好事家たちがカブやそのエンジンを魔改造し、エンジンを複数載せた簡易的な4輪車やカブで空を飛ぼうとする人もいた。私にはそんな知識も教えてくれる人もいなかったので、とりあえずカブを掘っては売り飛ばし日銭を稼いでいる。供給過多、そんなワードも一時期聞いたが結局好事家たちはカブはあるだけあればいいと大きく値崩れしなかったので私は生活できている。


カブを売り飛ばして家に帰る。簡易的なワンルームで、屋根はあるし壁もある。土地柄コンクリートをメインに作られているので、室温調整が難しいが基本暑いだけなので窓を空けてなんとかやり過ごしている。エアコンもついているが、つけるとカブのエンジンがうるさいのでよほどのとき以外はつけていない。


 冷蔵庫を空けて、水と適当な食べ物を取り出した。

ソファーに横になりながら干し肉を食べていると、古臭い映画のテーマ曲が携帯端末から流れてきた。購入した店のおっさんは「なかなか手に入らない音源が手に入ったからサービスでつけておくぜ!」と喜んでつけてくれたが何の曲かもわからない上に設定変更できないようにしやがった。サービス業としてはクソなのではないかと悪態をつきながら、端末を見るとさっきの買取業者から電話が来ていた。何か不備や減額でもあったのかと憂鬱になりながら電話にでると、素っ頓狂な言葉が聞こえてきた。


「カブが喋った!!!!」


 頭がいかれてるんじゃないかと思いながら、興奮するおっさんをなだめて水筒と食べかけの食料を持って店に向かった。結果として食いながら向かったのは失敗であった。

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