悪い大人の隠し事



【おまけ9】





「このままでは本当にダメになってしまいます」



「お前。なんで甘やかしてやると落ち込むんだよ?」






最近夏海さんがマジでヤバい。






すごい甘やかしてくれる。対価に魂とか要求されても仕方ないレベルで。年上の彼氏マジヤバい。え。こんなに甘えてもOKな感じだったの?



最初は触るどころか見るのもNG。同じ空気を吸うだけギリギリOKの塩対応だったのに。最近は部屋に着いてすぐにガバッと飛び付いても受け止めてくれるしPC起動する前にぎゅーしても拒否しないしちゃんとぎゅーしてくれるしフリータイムに触っても怒らないし。




おうし座。意外とスキンシップ好きなのかもしれない。




魂は捧げる方法がわからないけど他の物ならなんでも捧げたい彼女です。




「とりあえず私の自由は夏海さんに全部捧げます。どうぞ遠慮なく」




ぎゅー。




「仕方ない奴だな。もらってやる。遠慮なく」




退屈はいて座を殺すけど。ま。遠慮なく仕留めて側に置いてやろうとか思う。本当にダメな大人だ。











「私。年上の彼氏を甘やかしてみたいんですけど」


「は?甘えたいじゃなく。甘やかしてみたい?」



夏海さんは最近すごく甘やかしてくれる。もうダメになりそうなくらい。でも夏海はもちろん年下の彼女に甘えたりとかはしない。基本的にほとんど表情も変わらないし。時々嫌そうな顔をするくらいで。




グイグイ押して彼氏になってくれて彼女には一途な独占欲を発揮してくれて甘えたいタイプの私を超甘やかしてくれるけど。




大丈夫だろうか。




無理をしてくれてるのではないかと心配だ。そして。





「私も夏海さんを癒したいんです。というかぶっちゃけ。起きてる状態の夏海さんを甘やかしてみたいんです。眠っている時の超絶無防備な夏海さんにイタズラするのももちろん最高に好きなんですけどね」


「お前は俺が寝てる時に、いったいなにをしているんだ…?」


「内緒です。それだけは私だけのお楽しみなので」



「ま。別に良いけどさ」



「?…わっ!夏海さん!」




身体を起こしてなにをするのかなと思って見ていたら。夏海さんは私の膝をポンポンしてから、なんとそこにそのままごろーんと横になった。




「借りるぞ。このまま大人しくしてろ」


「は、はい。どうぞ!遠慮なく」




まさかの膝枕ご所望ですありがとうございますぅぅ!!!




付き合う前はよく強引に押し売りして素っ気なく拒絶されていた膝枕でございますよ。まさかご所望してご利用下さる日が来るなんて。




ごろんした夏海さん。マジ天使。




…いつの間にか【塩】から【砂糖】に転生したのかもしれないな。甘いです。甘々です。ありがとうございます。




真逆の属性クラスチェンジだけど夏海さんは運動神経良いからそんな難易度の高い離れ業も簡単に出来そうだ。




不思議。




リクエストしたの私だけど。甘えを試みる夏海さんの実際の様子を目の当たりにすると衝撃が大きい。



夏海さんは彼女の膝枕とか所望するタイプじゃない。そんな大人の男の人がやむを得ず『ごろん』させられてる感じ。尊いです世界遺産です独り占めですありがとうございます。




「…こういう。典型的な【甘え】みたいなの」



「すみません。苦手ですよね?」



イチャイチャとか。ラブラブとか。甘いものやデレや疲れる事が嫌いな夏海さんはきっと苦手だ。甘酒飲むと死にかけるし。疲れるとすぐに無防備に爆睡しちゃうし。最中でもデレないし。





【年上の彼氏を甘やかしてみたい】なんて子供みたいな無茶振りをした私のために無理してるのかも。無理をさせたくないと思ったのにこれでは逆効果だ。






塩対応の神は、彼女には意外と優しいから。






「…いや。実はけっこう得意なんだ」


「っ!ズルいですよぅ」




そんなの聞いてないよぉぉぉお!!!




衝撃発言を可愛くブチ込んで来た夏海さんが微かに照れた顔で笑った。




そんな事は夏海さんの【トラウマ黒歴史】にも登場しなかった。まだ隠し事があったなんて。大人は隠し事も上手いのか。本当に悪い大人だ。




ズルい。




こんなタイミングで。初めて少しだけ笑って見せたりして。こんな子供っぽい顔も出来たなんて。大人だからポーカーフェイスも簡単に出来るくせに。明らかに無理してそうしなかったのは。おそらく。




【甘えて】くれたんだ。




もうダメだ。くっそ可愛い。くっそ尊い。そして。好き。もうダメだ。完全にダメです。夏海さんの笑った顔とか。無理しちゃって微かに照れた顔とか。実は甘えスキルもあるとか。とにかくもったいなくて見てられない。




もう寝ちゃえば良いのに。




おそらくガキみたいに赤くなっている自分の顔も見られたくないし。ガキだけど。




このくっそ可愛い彼氏が目を閉じるように。こっちを見ないように。片手で夏海さんの顔を隠した。反対の手でよしよしと頭を撫でて甘やかしてみる。




早く寝ろー早く寝てしまえー可愛い過ぎて彼女はマジでしんどいぞー。そんな気持ちで。出来るだけ優しく撫でた。




あ。寝た。早っ。さすが夏海さん。膝枕でも普通に寝れるとか。今日も神ってる。




私はドキドキして。膝枕で寝るとか絶対に不可能です。





死ぬほど甘いものが苦手な。そのくせ彼女には甘々の。お砂糖の神様が無防備の神に転生して今日も世界一無防備に寝ています。子供みたいな顔で。




膝枕をしてあげてるのは自分なのに。


本当に甘やかされてるのどっちなのか。



まだガキな自分にはさっぱり解らなかったです。








【NEXT おまけ10】

【次回予告】【塩対応のくせに寝ている時は無防備の神の夏海君に茜ちゃんが寝起き前イタズラしちゃうぞ2】





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る