2013年【行人】私は私の人生に納得していたし、幸せだった。
私は父が紹介してくれた不動産会社に勤めた。
結婚と同時に二人目の子供にめぐまれ、上の子とも大きなトラブルはなく過ごせていた。
夫婦関係も良好。
金銭的な余裕はなかったが、幸せな日々だった。
仕事柄、車で町をまわることが多く、その時によく同級生を見かけた。
同級生が私の結婚を知ると例外なく驚いた。そして、何故か同情された。
彼らの主張は自由がないことに対する同情だった。
せっかく高校を卒業して進学なり、就職をすることで自由を得られるのに、と。
彼らの言う自由とは、進学した先の時間的自由と就職した先の金銭的自由だった。
なるほど、と私は思った。
私の休日は上の子と遊ぶか仕事関係の勉強で消費されていたし、私が月に使えるお金は学生時代のお小遣いよりも少なかった。
それでも私に不満はなかった。
家族を養っている自覚。
旦那であり父親である自覚。
そのような責任が私にとって、同級生たちの言う自由よりもはるかに価値があるように思えた。
もちろん、どちらに価値があるのかは人によって違う。
ただ、私は私の人生に納得していたし、幸せだった。
外から見た同級生たちから同情されるほどに不幸なつもりは毛頭なかった。
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