マリオネット

 Bエリアへと繋がる移送装置のリフトへとたどり着いたエリーとブレイド。Downと書かれたボタンを押すとリフトは二人を乗せて下ってく。


「ホント、普通に動きますよね。セキュリティどうなってんのってレベルじゃん!」

「…そうだな。侵入してくださいと言わんばかりのもてなしだ。」

「こんなんで証拠とか残ってるんですかね?」

「行ってみないとわからないよ。」

 そうこう話しているうちに、リフトはBエリアへと着く。


「着いたか。」

 2人は扉を抜けて、Bエリアへと足を入れる。


「あんまり、さっきのとことは変わらないね。」

 エリーは少しがっかりした表情で言う。二人はそのまま廊下を進んでく。ブレイドが時々地図を見て現在地を確認し、一番距離が近いセキュリティルームを目指す。

 少し時間はかかったが、セキュリティルームの前まで何事もなく到達する。


「ホント、何も起きないですね…?」

「何を言ってるんだ。いいじゃことじゃないか。」

 セキュリティルームの扉の横にはカードリーダがついている。試しにブレイドが扉の前に立ってみるが何も反応はない。


「…ま、まあ…開かないよな。なんか、安心した。」

「安心してる場合じゃないですよ…。どうするんですか?」

「今思えば、重要区画にはこういうカードリーダとか、認識装置がついてるもんだったな…。拍子抜け過ぎて、完全に頭から抜けていた…。」

「というと…所長室とか主任研究室にもついてるってことですよね?でも、ここに入れれば全エリアのセキュリティを上書きできるから…やるしかないじゃん。」

「そうだな。エリー、ドアから距離を取ってくれ。」

「はいはーい。」

 彼はバッグからC4爆弾を取り出しドアに貼りつける。そして、爆破時間を15秒に設定する。彼は小走りで、ドアから十分な距離を取り、廊下の角へと隠れる。

 爆発音とともに、セキュリティルームの扉が吹き飛ぶ。2人はその音を聞いてから、ゆっくりと姿を現す。


「上手くいったね。」

 2人がセキュリティルームに足を踏み入れたその時、アラート音が響き渡る。


「鳴るんだ…。当然と言えば、当然だけど。」

「…緊急システムは生きているか。となれば、他のシステムも十分に生きている可能性があるな。」

「呑気ですね…。」

「20年前の防衛用生体兵器なんか、たかが知れている。RASがかんでるから、出たとしても旧式のマリオネットが関の山だ。VR訓練の兵士の方がまだ強い。」


『セキュリティルームへの非許可の侵入を検知。システム009を発動します。研究員の皆様は至急退避してください。これは訓練ではありません。繰り返します。セキュリティルームへの非許可の侵入を検知。システム009を発動します。研究員の皆様は至急退避してください。これは訓練ではありません。』

 アナウンスの後に、カウントダウンを思わせる不快な音が響く。2人は武器を構える。


「セキュリティルーム前で殲滅をする…が、やむを得ない場合はルーム内に退避して戦闘だ。」

「よゆーよ、よゆー!」

 音はだんだんと大きくなり、突然、鳴りやむ。


『システム009発動。システム009発動。マリオネットMk-Ⅲを起動しました。』


「マリオネットMk-Ⅲだと!?バカな!!」

「何かマズイのそれ?」

「最新型の防衛用生体兵器だ…!」

「は!?…どういうこと!?20年前の施設でしょ、ここは!!」

「どうなってやがる…!」

 廊下の奥から足音が響いてくる。その音はだんだんとこちらに近づいていることが分かる。


「マリオネットは全て銃火器は持っていない。旧型は高周波ブレードだが、Mk-Ⅲの武器はプラズマブレードだ。防ごうなんて考えるな…必ず避けるんだ。それと、動きは思った以上に俊敏だ。気を付けろ。」

「いいわ…私が皆殺してあげるよ!」

 廊下の角から、赤黒いスーツを着たマリオネットMk-Ⅲが6体現れる。胴体には重厚な防弾チョッキ、四肢にはプロテクター、そして、顔には複合型ゴーグルが仮面の上から貼りつけられている。右手につけられているプラズマ制御装置にはまだ、ブレードは出力されていない。

 武器を構える二人に対して、不気味な低い声が向けられる。それは、マリオネットから発せられていた。


「武器ヲ捨テ、手ヲ頭ノ上二置ケ。コレハ命令ダ。」

 エリーは顔をしかめる。


「あいつら、しゃべれんの?」

「定型文だけだ。」

 命令に従わず武器を構え続ける二人を、彼らの単純なAIは敵対行為ととらえる。


「排除スル。」

 プラズマ制御装置から青緑色のブレードが出力される。


「エリー、奴らは…。」

「望むところだ!!」

 啖呵を切って、彼女は猛スピードでマリオネットへと向かう。そして、すれ違いざまに、一瞬にして、彼らの頭部…脳幹を狙ってナイフをたたき込んだ。


「はっ!木偶の坊が!このままバラバラに…。」

 マリオネットのプラズマブレードがエリーに迫る。


「嘘…!?」

 エリーはとっさに躱すが、胸元を切り裂かれ服の破片と鮮血が舞う。しかし、傷は浅かった。


「こいつら…何で!?…熱っ…!」

 胸元の傷は火傷の跡の様になっていた。少しはだけた胸元の部分を押さえながら、彼女はマリオネットから距離を取る。


「エリー、大丈夫か!?」

「ブレイドさん、こいつら何なの!?死なないんだけど!!」

 マリオネットたちが二人にじりじりと迫ってくる。


「マリオネットの機能停止は頭部、あるいは胸背部脊髄の完全破壊か、頭部と胴体を完全に切り離すかのどっちかだ!」

「早く言ってよ、もー!」

「言う前に君が啖呵切ったんじゃないか!」

 マリオネットたちが2人に襲い掛かる。ブレイドは銃で動きを鈍らせながら、高周波ブレードで頭部の切断を試みるが、防御不可のプラズマブレードのために中々うまくいかない。それに伴い、機動力も高く、銃で与えた損傷もそれほど動きを鈍らせていなかった。


「ブレードを弾けないのは厄介だ…!それに、噂には聞いていたが、動きが速い!」

「その首落としてやるよ!!」

 エリーは高速移動でマリオネットに詰め寄り、そのスピードを乗せながらナイフを思い切り首へと振りかざす。



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