第3話 7人目
「…ブラボー2、ブラボー3、応答せよ。」
「こちら、ブラボー2、どうぞ。」
「こちら、ブラボー3、どうぞ。」
「こちら、ブラボー1。セクター1、中央ホールで赤髪博士の遺体を発見。高クリアランスセキュリティでロックされたドアが開錠されている。赤髪博士のLv.5カードを”Queen”達が使用したようだ。」
「つまり、ほぼすべてのセキュリティを解除できるというわけか…。このまま奴らの思い通りに進んでは困るな。」
「こちら、ブラボー3。ブラボー1応答せよ。」
「こちら、ブラボー1、どうぞ。」
「我々は現在、セクター3、外部環境実験室を進行し、気候管理室に着くところだ。ここから、中央管理室まで向かい、研究所のセキュリティを書き換えようと思う。目的地まで約10分要する。」
「でかしたぞ、ブラボー3。そのまま、目的地に向かえ。我々は”Queen”達の後を追う。」
「こちら、ブラボー2。俺たちの出番なさそうだな。パーティの準備でもしておこうか?」
「経費はお前たちもちだぞ、ブラボー2!ハハハハハ!!」
「今夜はただ飯か!!腕が鳴るぜ!わりぃなブラボー2、ハハハハハ!!」
「……ねぇ、私のために、死んでくれない……。」
「うん?ブラボー3、何か聞こえたぞ?少女の声みたいだったが?」
「まさか…”Queen”?…戦闘隊形!!戦闘隊形!!構えろ、てめえら!!」
「ブラボー3!状況は!?」
「…状況維持!状況維持!…こちら、ブラボー3。敵影なし…。」
「なんだ…ノイズか?」
「いやでも、はっきりと聞こえたぞ。」
「うわああああああああああああ!!!!」
「どうした!?」
「わかりません!アルフレッドが突然!」
「やめろ!やめ!!来るな…来るなあああああ!!!」
「ブラボー3!何が起きている!?」
「あああああああああ!!な、なんだ!?何だこれは!?」
「ぎゃああああああああ!!!」
「フランク隊長!!ビクセンの腕が!腕が!!」
「離れろ!!!やめろおおおお!!!離してくれええ!!ぎぃああああああああああ!!!」
「なんだ…一体何が起きてるんだ!?」
「ブラボー3!!ブラボー3!!どうした、応答しろ!!」
「こち…こちら、ブラボー…ブラボー3…。隊員の腕が…突然へし折れた…。」
「は?…どういうことだ?」
「わ…わかんねえ…腕だけじゃねえ…背骨もだ…。アルフレッドが死んだ。」
「…は?」
「だれかあああ!!こいつを、こいつを切り落としてくれええええ!!」
「落ち着け、ビクセン!!何も腕には付いてないぞ!?どうしたっていうんだ!?」
「ブラボー3!状況を説明しろ!!」
「わかんねっていってんだろうが!!突然、ビクセンと、アルフレッドの骨がへし折れたんだ!!ビクセンはまだ生きてるが、アルフレッドは死んだ!!ビクセンはまだ叫んでやがる…おい…おい、どうした、ビル?やめてくれよ…何を見てるんだ?」
「た、隊長…お、俺の足、足、足に…しょ、触手が…あ…あ…に、逃げてください…む、向こうから…む、む、む、無数の…。」
「触手?ビルは何を…。」
「おい…おい、ビル。な、何も見えないぞ?」
「ぎゃああああああああああ、足がああああああああああ!!!!!」
「どうした!?」
「ビルの足がへし折れやがった!!な、なんなんだ一体!!俺たちに何が起きてるんだ!?」
「あがああああああああああああ!!!あ…」
「ブラッド!!…く、くそがああああああああ!!!」
「ブラボー3!!むやみに発砲するな!!ブラボー3!!」
「どこに居やがる!!!出てきやがれええええ!!」
「ブラボー3!!!ブラボー3!!!くそっ!!!ブラボー1!!ブラボー3の救援に向かう!!」
「待て!!敵の正体もわからないのに向かうのは危険だ!!」
「見捨てろというのか!?」
「そういうわけじゃない!!…だが…!」
「…んだよ。」
「!…ブラボー3!」
「なんだよこれ…?」
「おい、どうした!?応答…。」
「あああああああああああああああああ!!!!!」
「ブラボー3!!ブラボー3!!応答しろ!!」
「………。」
「無線が途絶えた…?嘘だろ?」
「バカ…な…く…ブラボー3!!頼む!!応答してくれ!!ブラボー3!!」
「………。」
「っく…そおおお。何なんだよ…一体!」
「…………ねぇ」
「!…ブラボー3、無事だっ…。」
「あなたたちは、私のために死んでくれる?」
「誰だ…お前は!?フランクたちに何をした!?答えろ!!」
「…フフフ、フフフフフ…。」
「何笑ってやがる…てめえ。」
「…キース隊長、どうしました?」
「ねぇ…私のために死んで?」
「何たわごとを言って…。」
「キース隊長!!何をして…!?」
「止めろ!!!」
銃声とともに叫び声が響く。無線からは混乱した声と叫び、そして、少女の快楽に満ちた笑い声が漏れる。
「…ねぇ…感じない?」
研究者の顔から腕を引き抜き、皆に聞こえるようにエミリアがつぶやいた。彼女がべっとりと血が付いた腕を力強く一振りすると、付着していた血が綺麗に腕から離れ、壁に一直線の血の亀裂が描かれた。
「…えぇ…あんたにそんな性癖があったとか…さすがの私も引くわー…。」
軽蔑の眼差しでベベルがエミリアをにらむ。それに追い打ちをかけるように彼女は大きな舌打ちをするが、怯むことなく無表情でエミリアは続ける。
「感じないの、ベベル?」
「まだ言ってんのか、変態サイコ野郎が…。」
「私たちと同じものの気配を。」
「…ん?あ?」
呆気にとられるベベルをよそに、ハルがエミリアに答える。
「ええ…さっきから、急に感じるようになったの…。私たち以外の、もう一人の気配を。」
「私にはわからないんだけど…それって、つまり、私たちと同じ人がどこかにいるってこと?」
「…不気味な気配…。」
「不気味な気配?…どういうこと、ヤハト?」
「リプリカも感じるよ。なんだか、嫌な気配。…友達にはなれそうにないかもね。」
「私は何も感じないんだけど。」
「個人差があるみたいね。ベベルとエリリンにはそういう感覚は無いみたいか。」
そう言うとエミリアは腕を組んで少し考える。
「ハル、リプリカ、ヤハト…この気配はどう感じる?弱弱しい?それとも強い?それとも、少しずつ強度は変わっている?…ちなみに、私はかろうじて感じる程度だけど。」
「私も、かろうじて…。」
「…弱弱しい…。」
「リプリカにははっきり感じるよ。強くなれば、時々弱くなるかな。」
するとエリリンがエミリアに問いかける。遠慮しがちに、しかし、確信をもって。
「リプリカは私たちの中で一番、“もう一人”の気配…つまり、居場所を感じることができるということよね?それに、その“もう一人”はもしかしたら、私たちとは仲良くなれない…つまり、敵になるかもしれない…だから、“もう一人”に会わないようにリプリカの感覚を頼りに進んでいくということよね、エミリア?」
「そうね。」
意外とあっさりした答えに、エリリンは少し落胆する。
「す、すごいねエリリン!納得のいく考えだわ!」
優しい笑顔を浮かべながらハルがエリリンを素早くフォローする。エリリンは照れ臭そうであるが、笑みを抑えきれていなかった。
「媚び売ってんじゃないわよ。」
ベベルは一応雰囲気を読んで彼女らに聞こえないようにつぶやく。
「でも、エミリア。あんたたちにそういう感覚があるなら、そいつも同じようにそういう感覚を持ってるんじゃないの?」
ベベルは壁にもたれながらエミリアに言う。
「その可能性はあるし、もし、あったとしても私たちにできることはただ避けて進むだけね。」
「もし、会っちゃったらどうすんの?」
「安全策をとるまでね。」
「つまり?」
「敵だろうが、味方だろうが先手を打って、殺す。」
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