第4話

〖自由帳〗


 嘘つきは嫌いだ。


 自分勝手に不倫する奴。

 親友に最もついてはいけない嘘をつく奴。


 嫌だ。

 嫌だ、反吐が出る。


 あんな嘘人間共が、この世に生きている価値などあるのだろうか。

 そこら辺に意味もなく漂うほこりみたいだと思う。


 そうだ。


 だったら、僕が。僕自身があの世に……。

 それを見つけた僕自身が、捨ててやればいいんだ。


 だって、必要ないものだから。


 〈殺した人〉 → 僕の家族



      *



 家に着いた僕は、制服を脱ぎ、下着姿で寝間着を持って風呂場へ直行した。

 そして、今日一日中僕の汗を吸い続け、ある程度快適に過ごさせてくれた下着たちに感謝しながら、それらを洗濯機に放り込む。そのまま浴室へ続く扉を開けると、狭い室内に敷き詰められた水蒸気たちに視界を奪われる前に、僕は湯船へダイブした。

 心地いい温度のお湯が僕を優しく抱擁ほうようし、放そうとしない。それはそうとも、僕は湯船から出る気などさらさら無いのだが。

 しかし、しっかり体を洗ってから湯船に入るよう、母さんから口酸っぱく言われている。

 それに対する罪悪感すらも心地よく感じる。


 数時間ほど前だろうか。

 今の僕には、それ以前のことのように感じるが、あのファーストフード店にいた時に中村から一通のメッセージが届いた。

 それは、


《【速報】与田夜一氏、橋本星那さんとの交際認める》


 というものだった。

 橋本さんと与田が笑い合いながら、互いにポテトをあーんする様子が辛うじて分かる、ピンボケした写真を添えて。

 一見すると無機質に見えるこの文章と写真だが、あの能面の般若のような顔のまま心境を悟られまいと文章を考え、異様なほど下手くそな笑顔で写真を撮る中村さんの様子が手に取るように分かった。

 

 ふと、誰から聞いたか忘れたが、クラスメイトに聞いた中村さんの噂話を思い出す。

 中村さんは、担任の矢久保やくぼ春歌はるか先生のこと以外、ほぼすべての物事を知っていること。

 中村さんは、僕らの通う高校で一番大きい裏サイトの開設者であること。


 いや、どうでもいい。


 そんな情報、今はどうでもいい。どうして今、思い出したんだ。


 僕は、とにかく悲しかった。


 あの文章と写真を見た瞬間、絶望と似たような何かが僕の心に押し寄せ、気絶しそうな感覚に陥ったのである。


 あの二人が付き合っている、そんなことくらい、少しは察しがついていたのに……。

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