第3話
【自由帳】
幸せ。
今の私は、とても幸せ。
私は、つい最近まで生活を共にしてきた家族を失った。
いや、消した。
その代わり、彼氏が出来た。
憧れの人。
憧れだった人。
私の念願。
あの
この幸せ、ずっと続くかなあ?
でも、あの
〈殺した人〉 → 私の家族
*
翌日の放課後、ファーストフード店にて。
テーブルを挟んだ向こう側には中村さんが座っている。
別に、デートではない。その証拠という訳でも無いが、僕たちは席についてからの約30分間、一切言葉を交わしていない。
ではなぜ、僕は中村さんと二人きりでファーストフード店にいるのか。
昨日に
千円札で、与田と橋本さんの関係に関する情報を買ったつもりだったが、結局、中村さんは二人の関係を知らなかった。
ただ、橋本さんは中村さんの親友だ。やはり、僕のように彼女も気になったのだろう。
また、中村さんは学校一の情報通としてのプライドも高い。プロ意識すら感じるほどだ。さらに、意外と負けず嫌いな一面もあり、自分の知らないことがあったのが相当悔しいのだろう。
中村さんは、学校のほぼ全体に張り巡らさせている人脈をフルに駆使し、情報を集めてみたらしい。その結果、このファーストフード店でバイトしている後輩の女子生徒が度々、二人の姿を目撃していたと言う。
また、このファーストフード店は学校から大分離れており「さすが、モテ男とモテ女は意識が違うよね~」と、中村さんは皮肉たっぷりの口調で言っていた。
そこで、僕と中村さんはある計画を立てた。
とはいっても、ほとんど中村さんのアイデアなのだが……。
もちろん、二人の関係性を知るための計画である。それは、このファーストフード店で偶然を装い二人の前に現れ、単刀直入に質問すること。結局、直接聞くしかない。そうすれば、人目を避けるように行動する二人も正直に答えるだろうと、僕らは踏んでいる。一応、二人はそれぞれの親友なのだから。
また、二人が来たら後輩に
ただ、二人同時に現れたら、逆にこちら側が怪しく思われてしまうかもしれない。
そこで、僕たちは二手に分かれることにした。
三階建てのこのファーストフード店は、一階に注文するスペースで、二階と三階は食事をするスペースになっている。
二人がもし二階に来たら、中村さんが。
もし三階に来たら、僕が……。
あとは逐一連絡を取りつつ、うまくやればいい。
「あっ! 来たって!」
中村さんが大声で言った。
周りの客から白い目で見られている。しかし、中村さんは気にすることなく続ける。
「計画通り頼むよ、月哉くん」
「おう、もちろんよ!」
僕は勢いよく立ち上がる。
そして、中村さんにおごってもらったバニラシェイクをストローで一気に吸い上げた。中身を飲み終えて役目を終えた容器をゴミ箱に放り込むと、三階へと続く階段へ向かうが、ふと中村さんの様子が気になり一度振り返ってみる。
なぜか、普段はウサギのように可愛い中村さんの童顔が、能面の般若のように歪んでいた。
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