宇宙の神秘3

同じ姿を持つ知的生命体ではあるが、やはりこいつは宇宙人であり、人間ではない。

少し残酷な考えかもしれないが、アークネビルという星は俺にとってあまり関係のないもの。

正直な所、その星が終わるとかそういう話は、俺からしてみればどうでもいいのだ。


「ふーん、そうなのか。そりゃ一大事だ」


「はい」


暑い日差しの照りつける細道を抜け、俺たちは誰にも見つからず(多分)自宅へと帰ってきた。

美紗子は仕事なので家は物静かではあるが、暑さは尋常ではなく、しばらくいたら死んでしまうレベルである。

剣心顔負けの神速で家中の窓をオープナーして、何とか生存できる環境を確保。


「立派なお家、家屋、屋敷ですね」


とても屋敷と呼べる程立派ではないが、敢えてつっこまないでおこう。


「大分年季入ってるけどな。俺の爺ちゃんが建てたらしい。何十年も前に」


ウチの爺ちゃんは、俺がまだ小さい頃に亡くなったらしい。

らしいというのは、俺の中に爺ちゃんの記憶は残されていないのだ。

父さんといい爺ちゃんといい、一体ウチの男たちはどうなっているのか。

二人とも俺が幼い頃に天国へ旅立ってしまった。

婆ちゃんは俺が小学校低学年くらいの時に死んでしまった。

美紗子は仕事で家にいない事が多かったから、俺は婆ちゃん子に育ってしまったのだ。


「そんな事はどうでもいい」


感傷に浸りそうになってた思考を戻し、当初の目的通りにタンスを漁る。

中には何故かセーラー服だの、バニーだの、メイド服だのが入っている。


「美紗子の奴……まさかこれを夜な夜な着てるんじゃないだろな……」


ウチの美紗子は他の家のおばちゃんに比べるとまだ若い。

今現在、奴は35歳である。

だがしかし、俺から見るとただのおばちゃんだ。


あの美紗子が!俺の母親が!


あの歳でバニーやらセーラー服を着ている!?



ちょっと想像してみよう。



「オエェェェェェ!!」


最悪だ。悪夢だ。



想像しただけで胸焼けがする。


「どうかしました?酷い、常軌を逸した声を放っていましたが」


「あ、なんでもない。気にするな」



む?



むむむ?



美紗子が着たら地獄絵図だが、若い女の子が着たら……。



イブを見る。

確か年齢は俺の二つ上、顔良し、スタイル抜群、このコスプレをしたら似合ってしまいそうだな!うふふ!


「ほら、これ着てみろよ」


「……?これに着替えればいいんですか?」


「あぁそうだ」


渡してしまうセーラー服。

イブはその服を見て不思議そうに首を傾げている。

多分見た事のない服に興味を持っているんだろう。


「さぁほら、こっちで着替え……」


俺がわざわざ他の部屋に案内しようとしたのに、イブは既に自分の服を脱ぎかけていた。


「わわわ!待て!待てーい!」


「……?」


「女の子は人前で無闇に着替えていいものではない!」


「言われてみれば、確かにその通りですね」


そう言って僅かに笑って見せたイブ。

その笑顔はとても眩しくて、俺の心臓が鷲掴みにされたような、脳天に雷が落ちたような、そんな強い衝撃が全身を駆け巡る。


「あ、あぁ……」


目を見ることが出来ずに視線を逸らしてしまう俺。

隣の部屋へと行かせて襖を閉め、自分の心臓を押さえてみる。


「何トキメいてんだよ俺……あいつは宇宙人だぞ……?」


しかし宇宙人とは言え、あいつはかなりの美少女なのは事実。

テレビで見るアイドルような雲の上の存在と言える程のルックスを持っている。

地球に生まれて地球人として育ったなら、今頃相当な人気者になっただろう。

ガサガサと、襖の向こうから服を脱ぐ音が聞こえてくる。

心臓がどんどん高鳴っていくのがわかった。


今頃服を脱いで下着姿かなぁ?ハァハァ!


もしかして下着付けてなかったり……、そもそも宇宙人に下着を付ける概念があるのかなぁ?ジュル!


襖を少し開けてみてもいいんじゃないか?


いや待て待て、落ち着け俺!冷静になれ!

宇宙人相手に欲情などするな!

美少女だが宇宙人だ。人間じゃないのだ。

もしかしたら身体中から謎の触手が生えてるかもしれんぞ!


あの身体から触手……。考えただけで寒気がするな。

もしかしたらその触手で俺を絞め殺すつもりなのかもしれない。


なら!


ならば確かめねばならんだろう!


あいつの身体を隅々まで!


「グフ……グフフフフフ……」


俺にはあいつの身体を好きに調べていい権利がある。

俺の命を脅かす何かを、あいつは持っているかもしれないのだからな。フハハハハ!

あいつが地球人と全く同じ身体を持っていたとしても、俺はその全身をくまなく触り尽くしても問題ない。

そもそもこの地球上では宇宙人に人権など定められてはいないだろう。


つまり、俺があいつに何をしようが、法に触れることはないのだ!っしゃあ!


さて、それでは早速確かめさせて貰おうか!


その丸裸を!


裸体を!


禁断の果実を!



「こんちわ~!りょーちーん!」


興奮した俺の気持ちを一気に冷ます声。

玄関から聞こえたその声を俺はよく知っている。


「た……タカピー……」










や……




YABAIぞ……これは……

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