XYZ

エンドレスでジャズが流れるほの暗いバー。


その店の片隅、はずみで倒したグラス。


カウンターに広がっていくドライマティーニ。


痛々しく散らばる破片にライトが乱反射する。


慌てる僕を見て彼女は笑いかける。


「素敵な演出ね」



いつかこうなるのは分かっていた。


最後くらい格好つけたい、そんな焦りが僕を侮様にさせる。



すぐに代わりのグラスが出される。


目を合わすと店主がほんの微かに口元を緩める。


透き通る白い液体がカクテルグラスに注がれる、XYZ。


それを一息に飲み干すと彼女の手を軽く握る。


最後の言葉とくちづけを交わし、ふたり別々に店を出る。



月のスポットがいつまでもふたりを照らし出す。

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ラバーソウル @pungent_sugar

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