最幸と最悪の冒険者編

災いの冒険者

 誰も俺に近づかない。

 何故ならば俺は災いを呼ぶ男。

 一緒にいるヤツを必ず不幸に陥れてしまう、らしい。というのも俺にその自覚はない。一緒に行動しているやつが不注意で勝手に怪我や事故に巻き込まれている、といった感覚だ。

 そりゃあ、ちょっとはおかしいなとは思っていたさ。俺と冒険するやつみんな大なり小なり怪我をしてたり、単純なトラップにひっかかったりしてたからな。でも、冒険に怪我はつきものだろ? だからそんなに気にはしていなかったんだ。

 ただ、妙なのは、怪我をするのは共に行動していた冒険者ばかりで、その時俺はかすり傷ひとつ負わなかった。ソロで冒険する時は怪我をするのに、なんだろうなー、とは思った。

 冒険者たちは徐々に俺を遠ざけ始めた。パーティを組みたがらなくなっていった。なんでも、俺と一度でも組んだことがあるヤツは、その後も不幸な事故に巻き込まれたり、最悪命を落とすこともある……みたいな噂が蔓延し始めたからだ。詳しく調べたわけでもなんでもないので、実際のところどうなのかはわからない。

 さすがにソロでこなせる冒険やギルドの依頼は限られているので、エライ魔術師さんとやらや、『鑑定眼』のスキル持ってるヤツに俺を調べてもらったが……結果、異常なし。

 ギルドへ調査依頼をかけるも、俺が用意できる報酬なんざたかが知れているし、ギルドの連中は一冒険者、しかも低ランクの俺のことに対して真剣に取り合わない。

 さて、どうしたものか。このままだと冒険者を引退したからといって、まともな職にありつけんぞ……。


 途方に暮れる俺。


 そんな時だった。

 アイツと出会ったのは。

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