まったく出足は最悪だ。


改札を抜けてくるすべての人が例外なく赤いシャツを身につけている。


ナンセンスなジョークみたいだ。


しばらく行った先には老人ばかりが並んで、値踏みをするようにこちらを見ている。


その誰もが年に似合わないハードな革ジャンを、意外なくらい粋に着込んでいる。


角のポストにくくりつけられた紐の先では、太りすぎたブルドックがくしゃくしゃな顔をさらに不機嫌に歪めている。


大好きな彼女の姿はどこにも見られない。


ただ取り留めなくディフォルメされた日常が詰め合わされた空間。

やがて、どこからかエンドロールが流れ始める。


どうやら母がまた夢のチョイスを誤ったようだ。


お陰で今朝はまるで調子が乗らない。

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