闘牛士

リムジンから颯爽と降り立ったひとりの女性。


赤い絨毯を進んでいく深紅のドレスの彼女を誰もが振り返る。


かくいう私も思わず立場を忘れて彼女にくぎづけになる。


こっちを向いた彼女は軽く私にほほ笑みかけてくる。


私は気にかけていないといった態度を装う。


すると彼女は、さらに挑発的にドレスを揺すって見せる。


こういう駆け引きでは焦った方が負けである。


焦らしあい相手の様子を窺いながら次第に距離を詰めていく。


彼女まで数歩というところ、形勢は私がやや優勢である。


しかし、次にドレスが翻った瞬間、私の理性は失われてしまった。


その瞬間、私は思わず彼女に飛び掛かっていた。


彼女はひらりと身をかわすと、軽く私の胸元を貫いた。


辺りは赤一色に染まる。


周りからは、ひときわ高い歓声があがる。


彼女は軽く一礼し、ドレスを揺すって見せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る