プレゼント

いやあ、だいぶ遅れてしまった。


今日は彼女と出会ってちょうど一年の記念日。


最高のプレゼントを選ぶのに手惑ってしまった。


こんなに待たせてしまって、怒らせてしまったかもしれない。


急いで玄関に上がりフェイクファーのコートを脱ぎ捨てると、一目散に廊下を走り抜ける。


タイル張りのバスルームに閉じ込められた彼女が水浸しになってはしゃいでいる。


ドアを開けると必ず抱きついてくる彼女を、タオルを広げて待ち構える。


十年振りの再会みたいな熱烈な歓迎を両手でしっかり抱きとめ、全身をくまなく拭いてやる。


その最中も彼女は絶えず唇を寄せてくる。


ようやく落ち着いた彼女をキッチンへと送り出すと、そこには今朝から用意した豪華なディナーと今買ったばかりのデパートの袋が置いてある。


テーブルに着くと綺麗に包装されたプレゼントを取り出す。


彼女はそれを見るとお礼も忘れて包みに飛びつく。


彼女のそんな飾らない部分に僕は魅せられたのだ。


歯痒そうに包みを取り去ると、剥き出しの骨が現れる。


彼女は嬉しそうにそれにしゃぶりつく。


部屋の一隅に置かれた洋書の山、ひときわ目立つデザインのカバー。


ゴシック調の文字で書かれたタイトル「シェットランドシープドックと仲良しになる方法」

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