第19話 家庭教師、生徒が父に喧嘩を売る

恋子と想が寝返り、父親へ反発した。

俺はこの二人の意思をどれほど尊重出来るだろうか。

ここまできたらマジで卒業まで見守る以外無いと思う。


「じゃあ私は洗濯するから」


「私は勉強する。代わり番こでする」


「お前はやらない方が.....」


大丈夫と想は言うが。

と言うか、これ以外にも問題が有る。

先ずコイツらは俺らの生活に付いて行けるのか?という問題が。


「.....お前ら.....この家は貧乏だ。だからそんなに高望みの生活は出来ないぞ」


「知ってる。だから私達は動く。お世話になるんだから」


「そう。私もね」


本当に覚悟の上で全てを捨てたんだな。

俺はその様に思いながら、歯を食い縛った。

それなのに、俺は、と。


「.....そんなに自分を責めないで」


「.....だが俺は.....」


「.....私が、お姉が居るから」


優しいな想は。

以前とはえらい違いが有る。

俺はその様に思いながら、笑みを浮かべた。

想も柔和に俺の手を握る。


「ちょっと。妹ちゃん達が見ているわよ」


「お兄.....」


「お兄ちゃん.....」


ハッとして真っ赤になる俺達。

想は何事も無かったかの様に動いた。

そして勉強を始める。


「.....全く。私は料理してくるから」


「.....あ、私もやります。恋子お姉さん」


そして家事得意の二人は料理を始めた。

丹葉、俺、想の三人になる。

その丹葉がところでとワクワクしながら、話を切り出した。


「.....想お姉さんはお兄ちゃんの事が好きなんですか?」


「うん、好き」


「.....ハァ!」


聞かれて直球だ!

俺はその様に思いながら、想を見る。

想は俺を赤くなりながら見てきていた。


「キスもする仲だもんね」


「コラコラコラ!小学生に何言ってんだ!!!」


「お.....お兄ちゃん.....マジで?」


真っ赤で目をパチクリする、丹葉。

マジとは言えんが、マジだ。

俺はその様に答えに困りながら居る。


「.....昌浩は私の事を何とも思ってないみたいだけど」


プーッと頬を膨らませる、想。

好きとは分かった。

だけど俺はやはり付き合う資格は無い気がする。

守り抜くのは分かっているが。


「.....お兄ちゃん。責任を持って.....だね」


「.....何をだ」


「.....お兄ちゃんは女の子への対応は最低最悪だから」


おい。

俺はそんなに対応が悪いのか?

苦笑いを浮かべながら、丹葉を見る。

ジト目だった。


「.....でもそんな昌浩も好きだけど」


「想さん。お兄ちゃんは.....なかなか厄介ですから」


「おい」


「.....でも姉妹を思ってくれる、母親を思ってくれる、みんなを思ってくれる。いいお兄ちゃんです。.....心の底からしか感謝が無いです。本当に」


最後に丹葉は俺を見ながら微笑んだ。

想は、そうなんだ。

と話して、モジモジしながら俺を見てきた。

柔和な感じに見える。


「.....やっぱりハズレじゃ無い。貴方はとても良い人」


「.....いや、それはどうかな.....」


「.....自信を持って。貴方は私達の.....ヒーローだから」


「.....」


想は俺をドキドキする程に見つめ、その様に話す。

俺は苦笑気味で想の頭をさわ.....


「.....何やってんのアンタ」


「うおぁ!?恋子!」


「お、お姉」


「.....そもそも勉強するって言ってなかった?私がクソ忙しい時に何やってんの」


料理の仕込みが終わった様で。

俺達の元に眉を顰めた恋子が戻って来ていた。

俺達はバッとして離れながら、勉強に戻る。


「.....お兄.....最低だね」


「一葉.....ジト目で見るなよ」


「.....いや.....私達は忙しいのに.....」


そ、そうだな。

俺は苦笑いを浮かべながら、居ると。

電話が掛かって来た。


「.....まさか.....」


俺はゾッとしながら、電話先を見る。

予想通りだった。

恋子と想の父親だ。

俺は恐る恐るボタンを押そうとした、その時。


恋子が俺のスマホを取り上げた。

そしてピッと出る。

いや、え?


「親父。どうしたの」


『.....その言い草は何だ。恋子。まるで君達のした事を分かっている様だな」


「.....勝手に売っちゃったのはごめんだけど、あの家はもう必要無いから」


『.....君達の事を案じてやったのだが』


どう考えても案じては無い様に感じるけど?

と恋子は話す。

すると、父親は威嚇する様な低音で話し出した。


『.....その少年とは契約を切った。戻って来なさい』


「.....嫌と言ったら?」


『.....使いの者を送らせてでも強制送還する』


「なら簡単。私は親父と絶縁するわ」


.....ハァ!?!!?

俺は驚愕の眼差しを向ける。

想も頷いていた。

頷くなよ!?


「じょ、冗談だろ!」


「恋子お姉さん!?」


「そういう事だから。じゃあね。親父」


『.....君達.....後悔するなよ。恋子、想』


ヒェェ!?何てこった!?

これで良いのか!?

俺は驚愕しながら見つめる。


「.....守ってくれる人が居るから。もう羽ばたく時だから」


『.....』


電話はそのまま切れた。

俺は戻されたスマホを青ざめて見ながら、恋子を見る。

恋子は髪をなびかせて、話す。


「.....あー、せいせいした」


「お姉。流石」


「いや、流石じゃねーだろ!大丈夫なんか!?」


大丈夫、自分で何とかする。

と俺を見てくる、恋子。

そして座った。


「.....今は勉強するべきだから。家庭教師」


「.....!」


「そうだよ。昌浩」


想と恋子は柔和に見る。

コイツら。

俺はその様に思いながら、溜息を吐いた。

もうどうなっても知らんぞマジで。













































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