第18話 家庭教師、解雇される

『聞いたよ。恋子と想の総合得点が共に36点だったそうじゃ無いか。中間試験への大切な一歩の試験が、だ』


「.....そうですね.....」


夕方、自宅にて。

突然、電話が掛かって来たので対応していた。

恋子姉妹の父親と、だ。


俺は眉を顰めて、スマホで冷や汗を流しながら聞く。

すると、父親は更に話を続けた。


『.....だがしかし、50点は行くと思ったのだがね。36はつまり1点差か。期待外れの様だな。君の教育は』


「.....そうですね」


『0点からこの様な伸び具合には感謝している。だが、この状態では赤点ギリギリだ。条件はある程度、変わるが君には報酬を支払おう。報酬の返金も要らない。しかし.....すまないが教育の面では認められない。解雇させてもらおう』


「.....!」


中間テストまであと四日しか無いのにか。

俺はその様に思いながら、歯を食いしばった。

確かに家庭教師は変えた方が良いとは思うが、あと四日しか無いのにいきなり変えてしまって大丈夫なのだろうか?


「.....娘さんの事を本当に考えていますか?」


『考えているさ。使えるモノは使う程にな』


「.....この.....俺はいいですけど、アイツらがどれだけ苦戦して頑張ったか知ってますか。想が逃げた事を知っていますか。学校生活を知っていますか!?」


『.....知らんな。全ては成績の結果だ』


このクソ野郎。

娘の事を本当に手駒としか思って無い。

俺はその様に思いながら、ついうっかり叫んでしまった。


「.....アンタは父親失格だ。アンタの娘達がどれだけの.....!」


『それだけかね?.....私は忙しいのでね。失礼する』


切れて、逃げやがった。

俺は眉を顰めて、スマホを見る。

余りのもどかしい怒りにスマホを畳に叩き付けた。


クソッタレめが!

この父親.....!


「.....」


俺はスマホを見ながら横を見る。

丹葉と一葉が不安そうに見ていた。

俺は苦笑いを浮かべる。


「.....ごめんな。お兄ちゃん、家庭教師を解雇された。.....また貧乏になるけど.....」


「そんなの関係無いよ。お兄」


「お兄ちゃん.....」


俺は手を広げて、姉妹を抱き締める。

ここまでになったらもう無理だと思う。

サヨナラだ、恋子、想。

頑張ってくれ。


その様に思いながら、居ると。

スマホにメッセージが届く。


「.....何だ?」


(昌浩。家庭教師を解雇されたって本当)


「.....」


(そうだな)


その様なメッセージを飛ばす。

すると、直ぐにメッセージが帰ってきた。


(私達は貴方に教えてもらうからこそ意味が有る。こんな事でお別れなんてしたく無いから.....)


(だが俺は解雇された。これからは同級生として宜しくな)


(.....昌浩はそれで良いの)


その様な言葉を切実に聞いてくる、想。

俺は俯いて、苦笑した。


(.....いい訳無いけどな。如何しようも無い。俺はお前らに教えれなかった。無能だった。そういう事だ)


(良い訳が無いんだ。じゃあ.....)


インターフォンが鳴る。

そして側で俺のメッセージを見ていた丹葉が出ると、驚いた様に声を上げた。

ドタドタとやって来る。


「お兄ちゃん!お姉ちゃん達!」


「.....は?」


「お姉達だね。お兄」


ハッとして直ぐに玄関まで行く。

その場所に想と恋子が居た。

俺は見開く。

何をしに来た.....!?


「.....今日から此処に暫くお世話になる」


「.....そう。宜しくね。家庭教師さん」


その様に話して。

反撃の狼煙を上げた、二人が立っていた。

俺は驚愕に驚愕する。


「.....まさか.....父親の言い付けを守って無いのか!?」


「アレは父親擬き。だから反発しただけ」


「私達には父親は居ないから」


そんな馬鹿な!無茶苦茶な。

こんな事は間違っている!

俺はその様に思いながら、直ぐに反発の声を上げた。


「.....アホ言え!間違っている。帰れお前ら.....!」


「じゃあ帰るけど、貴方はそれで良いの」


「.....」


良いのかよ。

俺はその様に思いながら、眉を顰める。

こんな事で父親に反発してしまったら.....!


「.....帰れなくなるぞ。マジで」


「.....私は貴方とならどこまでも行ける。だけど、貴方が居ないなら私は立ち止まる。それだけ。親父の言っている事は明らかに間違ってる。家庭教師を急に変えたりしたら全てが滅茶苦茶になる」


「そういう事だから」


俺はただひたすらに呆然としていた。

もう報酬とか関係無い状態なのに。

ただ、嬉しくて涙が浮かんだ。


「.....お前らを絶対に卒業させてやる」


「.....期待してるよ」


「そうね」


反逆になってしまった。

その事に上層部も動くだろう、それも父親が、だ。

俺はコイツらを卒業まで導く。

そう、決意した。




































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