第17話 家庭教師、夢を見る
想の手作りの炭の塊を食った俺は保健室に居た。
何が起こったか。
それは簡単に言えば、後ろに倒れてしまった。
申し訳無い、いや本当に。
余りにショッキングな味で、だ。
俺はその為、白目向いて後ろにぶっ倒れた。
☆
「ーーー。どうしたの?」
「.....いや、少しだけ呆然としていた」
「クスクス。もう良い加減に直してよ。その癖」
思えば、今から数年前。
初めて姉妹に家庭教師として出会い、そして今に至る。
前に居る、彼女は静かに笑みを浮かべた。
彼女は、ウェディングドレスを纏って嬉しそうに言う。
「.....私、貴方と出会えて、本当に幸せです」
「.....そうだな。俺もお前に出会えて本当に幸せだよ」
周りを見渡すと、色々な人達が俺達を祝福する。
無論、一族も居る。
ただひたすらに感動した様に涙を流していた。
「新郎、ーーー。貴方は妻となる、ーーーさんを永遠に愛する事を誓いますか?」
「はい」
「新妻、ーーー。貴方は夫となる、須藤昌浩さんを永遠に愛する事を誓いますか?」
「.....はい」
ではそのまま指輪の交換を。
と神父から聞き、俺達は指輪を交換する。
そしてーーーとーーーに神父は向いた。
手を広げ、話す。
「お互いに誓いのキスを交わして下さい」
その様に神父に言われてから。
俺は静かにヴェールを上げて、ーーーはーーーとキスを交わした。
その瞬間、思いっきりに歓声が上がる。
☆
「昌浩.....昌浩.....!」
「.....ハッ.....!」
俺はその声にハッとして横を見る。
横に涙目の想が居た。
恋子と想が俺の手を左右から握っている。
「.....おま.....想?恋子?」
「良かったわ。無事に起きて.....」
「.....良かった」
俺は確か、ぶっ倒れて。
そして....何だろう。
夢を見た。
それも誰かの結婚式の夢を、だ。
ちょっと待て、あれは一体、誰の結婚式だ?
顔がボヤけて見えなかった。
俺は首を傾げて思いながら。想と恋子を見る。
想が俺に抱き付いて来る。
そして涙を流した。
「.....良かった.....本当に。ごめんなさい」
「.....大丈夫だ。想。有難うな」
「.....全く心配したわよ。マジで」
「.....だよなぁ」
全く、俺の腹の弱さには呆れたもんだ。
その様に思いながら、苦笑する。
想が俺に言葉を発した。
「.....本当にごめんなさい。私が変なモノを食べさせたから.....」
「....何処が変なんだ?気持ちは伝わってる。だから良いじゃないか」
「でも.....昌浩が.....」
気にすんなよ。
俺はその様に話し、想の頭をポンポンした。
そして笑みを見せる。
「想。もう変なモノ出さないで。コイツが壊れる」
「.....お姉.....」
「恋子。そう言うな。ぶっ倒れてしまったが、俺は大丈夫だ」
恋子は怒り気味に想に言う。
反省した様な感じの、想。
俺は恋子に苦笑気味にその様に話す。
そしてから窓の外を見ると、空が赤く染まっている。
ちょっと待ってくれ。
つまり、何時だ今。
「.....今は何時だ?!」
「.....もう放課後だから」
「.....は?」
コイツら.....の予習が.....全てが.....!?
俺は極端に青ざめる。
すると、恋子と想は向き合って頷く。
そしてとある紙を見せてきた。
「.....これ」
「.....これね」
何かと思い、それを詳しく見る。
それは重要なモノだった。
つまり。
「おま.....えら」
テスト用紙だ。
見ると、総合点が36点だった。
二人ともに、だ。
平均よりも相当に低いが.....その、何だ。
一点で越している。
二人共に俺に柔和な感じを見せる。
そして言い出した。
「.....やったよ。昌浩」
「.....そう、やったわ。アンタのお陰.....ってちょっと!!!」
思わず、そのまま二人を抱き締めてしまった。
コイツらという奴は、やはりやれば出来る子だ!!!
YDKじゃあないか!!!
「やめ!ちょ、離しなさいよ!」
「離して.....昌浩」
おっとうっかりしていた。
コイツら.....俺に恋をしていたんだな。
乙女を抱き締めるのは如何なものかと思う。
『誰かを救える様になれよ。昌浩』
なぁ、親父。
もしかしたら俺はヒーローになれるのかも知れない。
人を救えるのかも知れない。
頑張るから見守ってくれよ、親父とその様に思いながら。
少しだけ祈る様に二人の手を握った。
それから涙を拭う。
☆
「体調不良。それが有る。今度、再試験となる」
担任に言われて、俺は笑みを浮かべた。
そして俺は頷く。
担任は笑みを見てから首を傾げていたが、そんな事はどうでも良い。
「.....すまなかったな。引き止めて。急いで帰りなさい」
「.....はい」
二人には先に帰ってろと言っている。
その為、俺は歩きだ。
担任は書類を纏めて、教室を後にする。
俺も付いて行く様に教室を出た。
すると、何故か二人が居て。
俺は目を丸くした。
「.....一緒に帰ろ」
「一緒に帰るわよ」
二人に溜息を吐いた。
ただひたすらに全くと思いながら、だ。
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