第17話 家庭教師、夢を見る

想の手作りの炭の塊を食った俺は保健室に居た。

何が起こったか。

それは簡単に言えば、後ろに倒れてしまった。


申し訳無い、いや本当に。

余りにショッキングな味で、だ。

俺はその為、白目向いて後ろにぶっ倒れた。



「ーーー。どうしたの?」


「.....いや、少しだけ呆然としていた」


「クスクス。もう良い加減に直してよ。その癖」


思えば、今から数年前。

初めて姉妹に家庭教師として出会い、そして今に至る。

前に居る、彼女は静かに笑みを浮かべた。

彼女は、ウェディングドレスを纏って嬉しそうに言う。


「.....私、貴方と出会えて、本当に幸せです」


「.....そうだな。俺もお前に出会えて本当に幸せだよ」


周りを見渡すと、色々な人達が俺達を祝福する。

無論、一族も居る。

ただひたすらに感動した様に涙を流していた。


「新郎、ーーー。貴方は妻となる、ーーーさんを永遠に愛する事を誓いますか?」


「はい」


「新妻、ーーー。貴方は夫となる、須藤昌浩さんを永遠に愛する事を誓いますか?」


「.....はい」


ではそのまま指輪の交換を。

と神父から聞き、俺達は指輪を交換する。

そしてーーーとーーーに神父は向いた。

手を広げ、話す。


「お互いに誓いのキスを交わして下さい」


その様に神父に言われてから。

俺は静かにヴェールを上げて、ーーーはーーーとキスを交わした。

その瞬間、思いっきりに歓声が上がる。



「昌浩.....昌浩.....!」


「.....ハッ.....!」


俺はその声にハッとして横を見る。

横に涙目の想が居た。

恋子と想が俺の手を左右から握っている。


「.....おま.....想?恋子?」


「良かったわ。無事に起きて.....」


「.....良かった」


俺は確か、ぶっ倒れて。

そして....何だろう。

夢を見た。


それも誰かの結婚式の夢を、だ。

ちょっと待て、あれは一体、誰の結婚式だ?

顔がボヤけて見えなかった。


俺は首を傾げて思いながら。想と恋子を見る。

想が俺に抱き付いて来る。

そして涙を流した。


「.....良かった.....本当に。ごめんなさい」


「.....大丈夫だ。想。有難うな」


「.....全く心配したわよ。マジで」


「.....だよなぁ」


全く、俺の腹の弱さには呆れたもんだ。

その様に思いながら、苦笑する。

想が俺に言葉を発した。


「.....本当にごめんなさい。私が変なモノを食べさせたから.....」


「....何処が変なんだ?気持ちは伝わってる。だから良いじゃないか」


「でも.....昌浩が.....」


気にすんなよ。

俺はその様に話し、想の頭をポンポンした。

そして笑みを見せる。


「想。もう変なモノ出さないで。コイツが壊れる」


「.....お姉.....」


「恋子。そう言うな。ぶっ倒れてしまったが、俺は大丈夫だ」


恋子は怒り気味に想に言う。

反省した様な感じの、想。

俺は恋子に苦笑気味にその様に話す。


そしてから窓の外を見ると、空が赤く染まっている。

ちょっと待ってくれ。

つまり、何時だ今。


「.....今は何時だ?!」


「.....もう放課後だから」


「.....は?」


コイツら.....の予習が.....全てが.....!?

俺は極端に青ざめる。

すると、恋子と想は向き合って頷く。

そしてとある紙を見せてきた。


「.....これ」


「.....これね」


何かと思い、それを詳しく見る。

それは重要なモノだった。

つまり。


「おま.....えら」


テスト用紙だ。

見ると、総合点が36点だった。

二人ともに、だ。


平均よりも相当に低いが.....その、何だ。

一点で越している。


二人共に俺に柔和な感じを見せる。

そして言い出した。


「.....やったよ。昌浩」


「.....そう、やったわ。アンタのお陰.....ってちょっと!!!」


思わず、そのまま二人を抱き締めてしまった。

コイツらという奴は、やはりやれば出来る子だ!!!

YDKじゃあないか!!!


「やめ!ちょ、離しなさいよ!」


「離して.....昌浩」


おっとうっかりしていた。

コイツら.....俺に恋をしていたんだな。

乙女を抱き締めるのは如何なものかと思う。


『誰かを救える様になれよ。昌浩』


なぁ、親父。

もしかしたら俺はヒーローになれるのかも知れない。

人を救えるのかも知れない。

頑張るから見守ってくれよ、親父とその様に思いながら。


少しだけ祈る様に二人の手を握った。

それから涙を拭う。



「体調不良。それが有る。今度、再試験となる」


担任に言われて、俺は笑みを浮かべた。

そして俺は頷く。

担任は笑みを見てから首を傾げていたが、そんな事はどうでも良い。


「.....すまなかったな。引き止めて。急いで帰りなさい」


「.....はい」


二人には先に帰ってろと言っている。

その為、俺は歩きだ。

担任は書類を纏めて、教室を後にする。


俺も付いて行く様に教室を出た。

すると、何故か二人が居て。

俺は目を丸くした。


「.....一緒に帰ろ」


「一緒に帰るわよ」


二人に溜息を吐いた。

ただひたすらに全くと思いながら、だ。

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