第14話 家庭教師、想の思いに気付かされる
想が居ない事態に気が付いたのは3時間目辺りだった。
つまり、丁度2回目のテストが始まる前だ。
俺は青ざめていた。
想、ちょっと待ってくれよ。
学校から居なくなるなんて何を考えているのだ。
鞄を残して、そのまま去って行ったのもおかしいだろ。
まだ小テストは有るが、そんな事を気にしている場合じゃ無い。
とにかく彼女を探さなければ。
と思いながら教室から出て行こうとする手を、誰かが止めた。
柔らかい、女性の手が。
「.....ちょっと落ち着いて」
「.....落ち着く?バカか!想が居なくなったんだぞ!!!落ち着けるか!」
恋子の手を思いっきりに振り払う。
冗談じゃ無い。
こんな時に落ち着いて居られるか。
テストなんか.....。
「アンタ今、テストなんてどうでも良いと思ったでしょ」
「.....そうだ」
「大丈夫。もう既に手は打ってあるわ。使いの者に探させている。だから安心してテストを受けて。と言うか、受けなさい」
教師と生徒が逆の立場になっている。
俺はその様に思いながら、冷や汗を拭う。
そして深呼吸した。
「.....分かった」
「.....それに想の居場所が何と無く分かる。4時間目の中休みになったら.....行くわよ」
「.....分かった。流石は恋子だ.....」
「アンタが不安になると思って先に伝えとくから」
まさかの言葉に、俺は何とか笑みを絞り出して有難う、恋子。
その様に呟き、思いながら。
俺と恋子は不安が少し残る中で小テストを受けた。
絶対に見つけるぞ、想!
☆
「.....それで、恋子。場所ってのは.....」
「.....想の性格は簡単に言えば、控えめ。つまり、一人になれる場所を好んだり、私が居る場所を好んだりするの。だから給水塔の上に居ると思う」
「.....マジかよ」
そして俺達は屋上までやって来て給水塔の上を見る。
しかし、想は居ない。
だとすると.....と恋子が顎に手を添えて、そして図書室の中に人気の無い隙間が有ったわよね?
と俺に聞いてきた。
「.....確かに有るが.....そこか?」
「図書室に入ったらバレる。つまり、その場所なら本が読めるし.....」
「.....だったら」
と俺は屋上で踵を返して走る。
すると、恋子が俺に向いて来た。
そして言ってくる。
「.....アンタは不思議な人ね」
「.....それは何時もだろ?」
「.....そうだった。つい呟いちゃったわね」
その事に俺は苦笑する。
そして図書室の中に入ってみる。
俺は大きい図書室で恋子に対して左を指差した。
「.....恋子はそっちにも隙間が有る。探してくれ」
「分かった」
「.....俺は右を探す」
図書委員が居ない様な図書室で。
右手の方角を探す。
そして所謂、本を仕舞う様な場所を開ける。
1回目の時だった。
「.....見つけたぞこの野郎」
「.....昌浩.....」
想が隙間で本を読んでいた。
丁度、人が1人、入れそうな隙間で有る。
まあ確かに小さな想なら入れる隙間。
「こんな場所で何やってんだお前。クソッタレが。心配掛けさせやがって.....」
「.....ごめんなさい」
「.....教室に戻るぞ。お前が見つかった事を恋子とか先生に言わないといけない」
「それは嫌」
まさかの事に何でだよ。
と俺は見開いてツッコミを入れる。
そして俺を潤んだ目で見つめてくる。
「.....な、何だよ?」
「.....なんで気付かないの私の気持ちに。昌浩」
「意味が分からない!ワガママもいい加減にしろよ。どれだけ心配したと思ってやがる」
「ワガママ!?私は.....昌浩.....貴方に気付いて欲しいだけ!!!」
まさかの突然の大声に。
は?ハァ!?と俺は愕然とする。
と同時に、もうこれじゃ駄目なのかなという呟きも聞こえた。
あまりにも意味が分からないと思っていると。
俺の胸ぐらが唐突に掴まれた。
「.....」
「!?」
そして、そのまま柔らかな感触を感じた。
想の唇で俺の唇が塞がれたのだ。
まさかの事だった。
一瞬、春風が吹いた様な。
「!!!?!」
「見つかった?.....って.....」
そうしていると、横から声がした。
棚の間をすり抜け、恋子が立っている。
その顔は酷く驚愕していた。
俺達のキスシーンを目撃した為に、だ。
「お姉.....!?」
キスしている唇を離して、恋子に驚愕する想。
俺は青ざめながらブンブンと手を振った。
ただひたすらに否定する様に。
「俺じゃ無い!」
すると、その言葉に分かってる、胸ぐらを掴んだ状況的にアンタがやったとは思えないし、と言葉を発して頷く、恋子。
恋子は静かに聞いた。
「.....想。.....もしかして」
「.....私は.....昌浩が好き」
「.....!!?」
いつの間にか好きになってた。
と想は告白して俺を見つめてくる。
真っ赤になっている。
「.....大好きだから。昌浩の事」
「.....嘘だろ.....お前!?」
「嘘じゃ無いよ。それで初キスを男の人にあげたりしないから」
俺は赤面になりながら自らの唇を撫でる。
恋子は愕然として、そして首を振る。
そして話し出した。
「.....こんなの認めない」
と、その様に言って去って行った。
俺は恋子を止めようとしたが。
止められ無かった。
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