第12話 家庭教師、家に教え子が来る

7日間と今日、勉強をして。

家に帰って来ると、母さんが居た。

勤め先がホステスとかなので、時間勤務はランダムとなるが.....。

何故か.....と言ったらおかしいが暗い中で、仏壇の前に静かに居る。


「母さん。どうしたの?」


「.....うん。あ、えっとね.....何だか鉄ちゃんが懐かしくって」


「.....親父か」


「.....そうそう。鉄ちゃん」


にへらにへらとする、母さん。

俺はそんな母さんに優しげに笑みを浮かべる。


目の前の須藤鉄次。

それが親父の名前だ。

母さんと結婚した時、親父は18歳の高校中退人間だった。

そう言えば、結婚した理由をあまり聞いた事が無いな。


「.....母さん。親父とは何処で出会って結婚したの?」


「珍しい。そんな事を聞くの〜?」


「.....ああ。良い人を射止めた貴方の事を聞きたい」


「.....うーん。えっとね、当時私はバイトを転々としてた。それでもう最後にしようと思ったバイト先の先輩後輩同士で出会ったのよね。それが.....鉄ちゃん。それでねえっと.....そのままこいに落ちちゃって.....ね.....キャッ。恥ずかしい」


ニコニコとしながら、赤面でうっとりしながら話す母さん。

その事に俺は複雑な思いで親父の遺影を見る。

そうだったのか。


俺はその様に思いながら、再び母さんを見ると。

涙目で震えていた。

見開く、俺。


「.....で、でも.....が.....癌なんかに.....負けるなんて.....思ってなかったから悲しいよ.....私.....」


「.....だよな.....」


「ごめんね。まーちゃんに.....迷惑ばかり掛けて.....」


涙を流しながら、顔に手を当てる母さん。

俺はそんな震える、母さんの手を直ぐに握る。

すると、ガチャッとドアが開いて、丹葉と一葉がビックリしながらやって来た。

直ぐに母さんの顔を見つめる。


「.....一葉。丹葉にも迷惑ばかり掛けて.....御免ね.....本当にごめん」


「.....お母さん。何を言っているの.....!」


「お母さん.....」


3人ともそのまま涙を流し出す。

俺はその中で、その3人を見ながら。

決意をまた新たにした。


絶対に俺はあいつらと共に卒業して。

そしてこの大切な人を守ると。


「.....親父。見守っていてくれ。俺は絶対に.....」


そして、母さんと丹葉、一葉のを抱きしめる。

ただひたすらに.....守りたい。

その一心で、だ。



「.....この問題はアイツらに最適かな」


真夜中。

俺はその様に勉強をしながら、考えていた。

すると、フユンと音が。

俺はスマホを見る。


(大丈夫)


(ああ。大丈夫だ。起きてる。どうした)


(いや、特に何でも無い。メッセージを送りたかっただけ。今度、メルアド教えて)


(.....珍しいな。お前。そこまで.....)


勿論、とメッセージが来る。

俺は?を浮かべながら、メッセージを観る。

すると、メッセージがまた来た。


(私は貴方の生徒。だったらメルアドとか教えてもらうのは当たり前)


「.....そんなもんか?」


俺は首を傾げる。

すると、メッセージがまた来た。

俺はシャーペンを置いて確認する。


(早く寝てね。家庭教師さん)


(勿論だ)


(.....それと、今度、貴方の家に行っても良い)


(こんな家に来てどうするんだ?俺ん家は貧乏なんだ)


そんな事は関係無いよ、私が見に行きたいだけで、あと、勉強も出来るから。

とメッセージが来る。

俺は、そうか、と返事した。


(えっと、じゃあ、寝る。おやすみ)


(はいよ)


そして、メッセージは途切れた。

俺はその事を確認してからあくびをしつつスマホを閉じて。

布団に入り眠りに就いた。



「起きて。昌浩」


「.....」


「昌浩。起きて」


「.....は?!」


何か丹葉と一葉とは違う、えらく可愛い女の子の声がすると思って起きる。

目の前に何故か驚いている、丹葉と一葉。

母さんは仕事だろうけど.....何故に!?


面倒臭そうな感じの恋子.....恋子!!?に、想が頬を赤くしながら居た。

うっそだろお前ら!?

ど、どうして!?


「.....どうなってやがる!?」


「GPS機能で追跡しただけだから。私は想に付いて来ただけ」


「.....お前ら.....」


起きた?昌浩、と想が笑みを見せる。

ん?笑みを見せた!?

これって夢じゃ無いのか!?


「.....お、おう。起きたが.....」


「.....そう、良かった。でも出来ればこの手を話して欲しいんだけど」


「.....は?」


確認すると、俺は想の手を思いっきりに握っていた。

俺は!?!??と思いながら、直ぐに離す。

想は赤面だった。

そりゃそうだろうな、恥ずかしいだろ。


「.....す、すまん」


「.....い、いや。うなされていたみたいだから.....仕方が無い」


その様な感じで居ると、恋子が眉を顰めて話し出した。

時計を顎で指している。

じ、時間が無い!


「アンタ達。ラブコメをしている場合じゃ無いわよ。時間が無いし」


「何でもっと早く起こさなかったんだお前ら!!?」


「「私達は想さんに任せたから.....」」


その様に話す、俺の姉妹。

恋子は知ったこっちゃ無いわよ。

とツンデレ。

そして想は俺に向いた。


「ね、寝顔.....昌浩の顔を見たかったし」


は?と俺は聞き返すが、な、何でも無い!

と想はちょっと大きな声で言って来た。

いやいや、何だよ一体。


「と、とにかく!急いで準備しろお前ら!!!」


「「はーい」」


丹葉と一葉は動く。

って言うか、いきなり家に来るなよ。

と俺は思いながらも。

少しだけ嬉しく、準備をした。


その中で、想が俺を見ていた様な気がしたが.....。

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