第10話 家庭教師、想の様子がおかしいと察する

俺は恋子と想にリビングで必死に勉強の事に関して色々教えていく。

例えば、英語では単語帳などは要らないと話したり。

単語帳では無い、詰まらずに日常会話で自然に頭に打ち込む事が大事だと。

だから好きな事で覚えていくのが大事だと。


数学では俺が作ったものだけを信じて解いていけ。

と教え込んだ。

何故なら、数学の本を見ていても頭が詰まるだけ。

つまり、ゆっくり理解していく事が大事だと教えた。


「.....やっぱりキツイ.....でも覚え出した」


「.....それで良い。少し覚えればそれで完璧だ」


「.....それで良いの」


「そうだ」


その全部の勉強を(遊び)に捉えて勉強する。

それがコイツらの勉強の基本中の基本。

コイツらが覚えるにはそれしか無いのだ。

俺はその様に説明する。


「.....私、これで覚えていってるんだけど良いのかな.....」


「それで良い。今はそれでな。後でまた教えてやる」


俺は説明する。

すると、真横でシャーペンを置いて想が俺をジッと見てきていた。

ちょ、な、何だ?


「.....貴方はやはり他の人とは違う」


「何をいってるんだ?変わらないよ。俺は他の人と」


「.....でも.....違う気がする」


「同じだ。夢とか目標とかが違うだけで。お前らを卒業させたいとかな」


本当に貴方は構うのが好きだね。

と俺に想は話して、勉強に戻った。

想。俺は構うのが好きな訳じゃ無いぞ。


ただ、見捨てて置けないんだ。

まぁ意味合いは同じかも知れないけどな。


「.....ちょっと疲れたんだけど」


「.....じゃあ休憩すっか。お茶でも淹れてやるよ」


「それは私がやる」


お、おう?そうか。

と台所に向かう、恋子を見送った。

そして俺は真正面を見る。


「間違い無く変わった。お姉は」


「.....そうかな」


「全部貴方のお陰。だから感謝している」


「.....これまでずっと成り行きだと思う。だから俺は.....感謝の気持ちを受け取るあれは無いと思うんだが」


すると、想が言った。

貴方は自信が無いの?この前と言い。

と、だ。

俺は首を振る。


「俺は何もして.....」


「それはこの前も聞いた。だけど貴方の力は大きいと思う。色々とやってる。良い加減に自分を認めてあげて」


「.....?」


「少なくとも私達には目立って良いと思うから。特に私には」


それってどういう。

俺は聞こうと想に向く。

想は頬を赤くして赤面していた。


「.....お前どうした?」


「.....何でも無い」


「熱でも有るのか?無理をし過ぎたか?」


ち、違う、鈍感。

と声がしたきと声がした気がした。

俺は???と浮かべる。

すると、恋子がお茶を手に戻って来た。


「.....何やってんの?」


「.....いや」


「.....何でも無いよ。お姉」


俺は首を傾げ、?????を浮かべる。

結局その日は意味が分からない日々を過ごした。

何がどうなっているのか。



「.....この問題はアイツに良いかもな。お、この問題は恋子に.....」


その日の深夜遅く。

俺は部屋をわざわざ借りてまでノートに書き記していた。

この為、母さんと妹達が一緒に寝てくれている。

本当に感謝しか無い。


丸電球の様な感じの電球に照らされながら、答案を作成したり、問題書を作成したりする。

俺はその中で見続けながら、欠伸をしつつ。

勉強もやっていた。


「.....親父」


俺は唐突にそう呟きながら、写真立てと仏壇を見る。

小さな仏壇に写真だ。


「.....」


そうか.....。

思えば、この時期からかも知れない。

俺が.....自分に自信が持てなくなったのは。

親父が亡くなって、自信が無くなったんだ。


「.....そうか。俺は.....親父が居なくなってヒーローが居なくなって.....自分を責めたからか」


だけど、もう良い。

俺は目立たなくても良い。

そう、アイツらが幸せで、誰かと幸せに結婚してくれれば。

その様な将来を思い描けば。


それで良い。

それが終われば俺は最大に何かを得るだろう。

その様に、思っている時だった。


フユン


と音がした。

どうやら、電話番号にメッセージが送られて来た様だが.....ん?

これは!?


「.....想.....!?」


(突然のメッセージ御免なさい。家庭教師.....じゃ無い。昌浩)


想が俺に対して昌浩と呼んでいる。

俺は?!と思いながらも、文章を読んだ。

その文章は長く有った。


(私達、貴方に凄く感謝している。こうしてメッセージを送ったのは.....貴方に自信を持って欲しいと思ったのも有るけど、話したい事が有る)


「.....それをわざわざ送ってくれたってか。にしても何で.....」


(何で.....この番号を知っている?お前らには話して無いし、お前らも俺に興味が無かっただろ)


(簡単。親父から盗み出した。多分、知っていると思ったから。私達が嫌いな.....親父から)


(.....お前らの嫌いなって何だ?)


そのメッセージを送ると、メッセージが途切れ。

そして暫くして。

またメッセージが来た。


(私達はその.....親父と酷く政策面などで対立しています)


「.....!」


(親父の事は尊敬も有りました。昔から私達の為に動いてくれていますが.....私達は親父が嫌いです。冷たいです。.....それもかなり)


俺は複雑な顔になってそしてその文章を見つめていた。

家庭環境が複雑なんだな。


(お姉がイジメられていた時も。三者面談が有った時も。何か問題が起こった時も。何も対応してくれませんでした。私達は二人で一つなのです)


「.....」


俺は顎に手添えた。

そしてメッセージを受信し続ける。

薄暗い中、俺は真剣な顔になっている、多分。


(この事は恋子お姉さんに話さないで下さい。でも、複雑なんだと。そう思って頂ければ幸いです)


(.....話してくれた理由は)


(私は貴方を信頼しています。今は、です。だから話しました。家庭教師としてでは無く、クラスメイトとしても信頼しています)


「.....コイツ.....」


こんなにも心を開いてくれるなんてな。

俺は少しだけ嬉しく思いながら、想の文章を見つつ。

二人の未来を見据え始めた。

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