第6話 家庭教師、恋子と想、二人に立ち向かう

欠伸をしながら支度が終わったので家を出て。

可愛い可愛い妹達を見送ってから。

俺の学校の生徒と同じ様に通学路になっている歩道を歩いていると、横を物凄い勢いで黒い車が横切った。


真っ黒な車で光沢が有る。

車種については.....べんつ?とかいうやつだっけ?

詳しくは知らん.....。


と思ったらその黒い車が俺の目の前で停まった。

見開いていると、誰かが降りて来る。

その顔は.....ってオイ。


「.....想じゃ無いか!?」


「呆然と歩いているね。貴方」


「まぁ.....そうだな。呆然だが悪いか?」


想にその様に答えながら。

そう言えばと想の背後を見る。

そこには恋子が不満げにこっちを見ていた。

俺は溜息を吐いて想に向く。


「.....所で、わざわざ降りて来たのには理由が有るのか?」


「何も無いけど。貴方を見かけたから停めた」


「.....そりゃどうも。で、恋子姉さんは元気か?」


「相変わらず。でも私は元気」


そりゃ良いこった。

俺は考えながら、アッと声を出す。

そう言えば、だ。


「少しは言った事は進んだか?お前の興味への集中だ」


「.....あ、あれ.....」


「そうだ。俺はお前らに熱中力を高めてほしいとお願いをした。興味への集中。そ.....」


「馬鹿らしい」


その様に声がした。

車に乗っていた恋子だ。

俺に対して怒りの目を向ける。

何だよ。


「.....そんな事で伸びるとか思えないんだけど」


「.....お前は間違っているな。闇雲に勉強すりゃ良いってもんじゃ無い。それに.....お前も一応は興味を持ってくれたじゃ無いか」


「はっ。気が迷っていたんだわ。私は」


「いや、違うな」


俺はそうは思えない。

その様に話して、恋子に寄ろうとしたのだが。

恋子は早く来なさい想。

と言ってさっさと去って行った。


「.....ったく。絶対に恋子。お前も赤点を脱出させてやるからな」


意を決しながら、周りの野次馬を振り切りながら歩く。

取り敢えず、恋子を納得させるのが先だ。

その後で良いだろう、勉強は。



思えば、俺の父親は明るく元気に能天気だった。

だけどテストとか勉強とか柔和な感じで厳しい時は厳しい。

甘い時は甘く、辛い時は辛い。

最高の父親だった。


だけど、己のガンには負けてしまった。

俺はその事を今でも悔やんでいて、俺はガンを駆逐する研究者にでもなりたいと思ったりする事も有るが。

俺の頭がポンコツ故にと言うか、頭脳的に追いつかない。


それもまた、悔しい思いが有る。

俺はその様に思いながら、学校に登校した。

螺旋階段が有る様な特別な建物だ。

近所でも有名の県立学校。


「さて.....」


俺はその様に呟きながら、クラスへ上がって行く。

そしてクラスを見渡す。

そこに、恋子が居た。

やはり俺のクラスメイトだったか。


何と無くだが覚えていたんだが。

俺はその様に思いながら。

歩いて恋子に近づく。


「.....オイ」


「あ、ごめんね。じゃあ後で」


「オイ!」


さっさと教室を出て行く。

俺は盛大に溜息を吐いて、そして教室のドアを見た。

クソッタレめ。


「そういや、連絡先も交換して無かったが.....この学校に居るのか?想は.....?」


俺はその様に考えながら、鞄を置いて。

後ろのドアからクラスを出た。



「.....でもこうして探してもクラスは分からんよな」


俺はその様に思いながら、想を探す。

来た事の無い場所で.....ちょっと緊張する。

想は確か、双子だ。

だから同じ学年だとは思うが。


「どうしたの」


「.....ああ。どうしたの.....え!?」


後ろを見ると、想が立っていた。

その小麦色の髪をポニテにして、だ。

呆然としている。


「.....どうしたの。恋子を探しているの?」


「.....そうだ。恋子に逃げられた」


「.....ああ、同じクラスだっけ」


「そうだ」


顎に手を添える、想。

そして俺を見つめてくる。

な、何だ?


「.....恋子姉さんは屋上の給水タンクの上が好き。あそこに居るかも知れない」


「.....マジで?重要なヒントを有難うよ」


「ううん」


ついうっかり身長差が有る、想の頭を撫でてしまった。

想はされるがままで赤面する。

そして振り払った。


「.....別に貴方の為じゃ無い。あのままだと恋子姉さんが.....」


「.....どうした?」


「.....何でも無い。任せても良いのかな。私はちょっと用事が有る.....から」


想の背後を良く見ると、何か少し不良っぽい連中が居た。

俺達の様子を伺っている。

何だ.....?


「.....想。何か有ったら相談しろ。良いな?」


「.....貴方に解決出来る問題は無い」


「.....そんな事言うな。何か気になる」


「.....」


俺を一瞥してから、その不良連中に寄って行く、想。

そして去って行った。

何が起こっているのだ、想に。


「.....まぁ今は恋子か.....」


取り敢えず、何方も気にはなるが.....。

恋子の事が終わったら直ぐに向かおう。

その様に思いながら、廊下を走る。



屋上を出て、見上げる。

確かに人が居るな。

俺は思いながら。すうっと息を吸って叫んだ。


「恋子!」


「.....何?何でこの場所を知ってんの。アンタ」


「.....想に教えてもらった」


「.....あの子.....」


チッと舌打ちして。

そして降りてくる、恋子。

俺はその様子を見ながら、恋子に近づく。


「.....で、何の用なの?さっきから鬱陶しいんだけど」


「.....俺はお前の為に動きたい」


「.....は?ちょっとキモいんだけど.....?」


「.....最初は金目的で動いてた。だけどな。途中から.....お前らを笑顔で卒業させてやりたいって気持ちになった。恋子.....俺の過去は話したな?」


それがどうしたの?それで慰めに来たって?と言う、恋子。

違う、俺は慰めに来たんじゃ無い。

俺はただ、この事を言いたいだけだ。


「俺もイジメを受けてそして今もシカトというイジメを受けている。多分、理由も全て同じだ。俺はお前と同じなんだ。だけど、パターンは多少違うかも知れないが」


「.....私が同じ理由でそれも、今もイジメを受けているって?馬鹿じゃ無いの?アンタ。見てわか.....」


「いや。違う。お前らはお金持ち故に.....あまり良い事になって無いだろ。俺の観察眼を舐めるなよ」


「.....」


少しだけだんまりになる、恋子。

俺は観察眼だけは凄いんだ。

だから俺は.....こんな家庭教師は居ないと思う。

生徒と同じ目に遭っている家庭教師なんて。


「別にアンタなんかと似てないわ。私は。それに舐めてるという言葉はそっちでしょ。舐めんな」


「.....恋子。俺はお前の気持ちが心底理解出来る。偶然にも人生が同じなんだお前と俺は。金持ちと貧乏で格差が違う以外は全てが似ているんだ」


「.....似て.....無い!」


「いや、似ている。だから俺は傷付いたお前を.....笑顔にさせたい。今も作り笑いなんだろ?それは」


涙目で歯軋りをした。

そして俺を思いっきり睨み。

手を挙げた、その次の瞬間だ。

校庭の方からキャッと叫び声がした。


「.....想.....!?」


「.....何?想の声か!?」


俺達は屋上から下を見下ろす。

先程の不良に金をせびられていた。

マジかクソッ!


「.....あんな奴ら.....金で打ち負かせば良いのに.....」


金って。

何を言ってんだ。

俺はその様に思って、恋子に向く。


「それは違うんじゃ無いか。恋子」


「.....何が?」


「とにかく走るぞ。アイツを助けないと!」


金に更に金を渡すのは甘い蜜を渡して。

そしてまた要求してくるアリの様なもんだ。

だから意味が無い。


それ以外の方法で.....えっと。

確か.....俺がカツアゲされていた時にやった方法は。

あれだったな。


ただ、教師に言っても仕方が無い。

心から信頼していると思う教師に言うんだ。

それしか今は方法が無い。

今で言うなら俺がお世話になっている、生活指導室の指導長の中山嶺二(なかやまれいじ)か。

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