第5話 家庭教師、姉妹の過去を知る

簡単に言えば宝の鍵の残り。

それは興味という、鍵のパーツの一部で。

他のパーツの一部とは.....即ち。


「.....答えは料理、お姉に対す(集中力)と(多少の勉強力)だ」


「.....は?それに対する集中力と多少の勉強力?」


「そうだ。集中力を高めて、鍵は完成する。興味プラス集中力プラス多少の勉強だ。それで鍵は完成する。宝物は開く」


は?全く意味が分からないんだけど、とジト目を向けてくる恋子。

そんな中でも目を若干に輝かせて、想は見てくる。

まぁ今日は試しだ。

想だけでも興味を持ってくれりゃ良いや。


「.....今は趣味に熱中してその中で多少の勉強を組み込めば良いって事だ。頭で鍵の破片が集まったと感じた時が宝箱を開ける時なのさ」


「正確な(勉強を好きになる)って宝物の鍵の完成の時は?」


「それはお前らの心が決めるんだ」


その時だ。

恋子が立ち上がって、その場から去って行く。

俺は慌てて止めようとする。


「.....馬鹿みたい。やっぱり貴方に期待した私が馬鹿だったわ」


「.....時間は掛かるがこの方法は絶対に通用する。頑張ってくれよ」


「嫌ね。貴方と一緒に勉強ってのがそもそも嫌なのに」


「何でそんなに勉強を嫌うんだ」


それは.....と言葉が詰まる、二人。

俺は?を浮かべながら立っていると。

途中で恋子はどうでも良いでしょ.....と言葉を発して去って行った。


やっぱり難しいな。

俺はその様に思いながら、想を見る。

だが、想は逃げたり追ったりしなかった。


「.....想。お前.....何故追わない?」


「宝探し.....面白い。貴方に.....少しだけ期待してみる」


「.....本当か?」


「.....うん」


想は少しだけ柔和な笑みを浮かべた、想。

だが、次に眉を顰めた。

そして言葉を発してくる。


「.....でも私の裸を見たのは許さないけど」


目からハイライトが消えた。

そして俺に果物ナイフを.....ぎゃあああ!?

俺は青ざめながら、両手を挙げる。



「恋子を説得するにはどうしたら良い」


「.....お姉は心が固い。開かないから諦めた方が良いと思う」


「.....そういう訳にはいかないんだよな.....」


リビングで想と相談し合う。

絶対に二人揃って笑顔で卒業させてやりたい。

その様に俺は思う。

だから.....俺は恋子にも信頼されたい。


「.....お姉は絶対に貴方には心を開かないと思う。傷付いてるから」


「.....傷付いている?」


「私達のお母さんが亡くなった時から.....イジメを受けてから.....私達が父親と対立してから。全てが変わった」


「.....」


そりゃまた.....。

俺はその様に思いながら、部屋に逃げて行った恋子を見る。

それで俺に心は開かないんだな。


「.....お前は平気なのか。想」


「.....勿論、悲しい。本当に悲しい。誰にも話さなかった。.....だけど貴方は違う。何故だろう、話してしまった」


「.....そうなんだな.....有難う。想」


「.....別に」


プイッと横を見る、想。

俺はその表情を確認しながら。

上の階の恋子の部屋を見た。


さて、どう説得するか、だが。

勉強よりは先ずはそれだな。


「想。恋子は料理が好きとか言ってたな?」


「お姉はね。.....だけどそれがどうしたの」


「.....料理で誘い出すのは駄目かな」


「無理だと思う。だってお姉は.....料理が好きって言ったけどそれはお母さんから由来しているから」


それは厳しいな。

うーむ、と思っていると外が真っ暗になってきた。

クソッ、今日はここまでか。


「.....帰るから、恋子に宜しく言っといてくれ。明日学校ででも」


「.....ねぇ」


「.....何だ?」


「何で諦めないの。私が睡眠薬を無断で貴方に盛ったって普通に考えて警察沙汰なのに言わないし。おかしくない?貴方」


警察沙汰ね。

確かに俺にやった事は警察沙汰だ。

だけどそれで俺はお前らに教える事が出来なくなるのを恐れたんだ。

多分だが。


「お前らに会えなくなるのを恐れた。それだけだ」


「.....意味が分からないんだけど」


「.....まぁそのうち分かるさ。じゃあ帰るから」


そして、俺は鞄を持って帰宅する。

その夜に夢を見た。

それは、俺と恋子か想か。

このどちらかが笑顔で、幸せそうに花嫁衣装を纏って恋人の隣に居る姿を、だ。


俺はその姿を見て俺はますますやる気が出た。

笑顔で卒業をさせたいな。

と思った。



「どうだった?まーちゃん」


翌日の我が家。

ホステスの俺の母親、須藤キラ。

16で出産した為に32と相当に若い母さんは俺に対して、にへらとした。


「.....別に問題は無さそうだ」


「お兄やる気満々」


「お兄ちゃんやる気満々だね」


一葉と丹葉が味噌汁とか用意しながら俺に向いてくる。

俺もボロボロの釜でご飯を用意しながら。

その二人に笑む。


「.....やる気満々というよりかはな.....」


「.....また救いたくなったの?」


「.....そうだね。母さん」


昔、俺の親父がステージ4のがんで痩せ細って抗がん剤で治療していた時から。

俺は色々な人を救った記憶が有る。

道行く中でお婆ちゃんとか。

親父に憧れたのだ。


そして、良い事をしたら救われるって思ってたのだ。

だけど神は皮肉だった。

俺を救わず終いで。


「.....きっと俺は見捨てて置けないのかも知れないよ」


「.....まーちゃんがそんな感じだと私もやる気出る!有難うまーちゃん!」


「だからまーちゃんはあれほど止めろと.....」


俺は顔を引き攣らせて頭に手を添える。

妹達に抱き付かれながら。

取り敢えずは今日の勝負に賭けよう。

その様な思いで、天井を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る