第6話 魔石の種類とレア度


 ◆


 食事が終わると、白いひげをたっぷりと蓄えた老人が、僕らに世界樹に関する様々なことをを説明してくれた。(コトトいわく、この爺さんは有名な文官みたい)

 

 文官の話を要約するとこうだ。

 まず、天佑世界樹とは不思議な魔石を一定期間を開けて生み出す不思議な巨木である。

 一度に生み出す魔石は約70個。(今回俺たちは10人いるから、一人あたり7~8個となる)


 そして、意外なことを口にした。

 世界樹はこの世界に一本だけ生えているわけではないと言うのだ。


 魔石を生む『天佑世界樹』は現在発見できているものだけで世界中に100本以上ある。

 どうやら世界樹には個体差があるようで、産みだす魔石の種類も数も各個体によってそれぞれ異なる。


 魔石の色によって、そのレア度が異なる。

 レア度(ランク)と出現率は以下のとおりである。


 ランク C 黄 (全体の90%)

 ランク B 緑 (全体の9%)

 ランク A 赤 (全体の約1~0.1%)

 ランク S 青 (全体の約0.1~0.01%以下)


 と、こうなっている。

 ただし、レアだからと言って、その効用がすごいとは限らないらしい(レアな方が有用な場合が多いが)。


 それから、魔石には大きく分けて4つの能力があるらしい。

 それぞれ「魔法系」「ステータス上昇系」「召喚系」「特殊系」である。

 以下は、その説明である。

 

 魔法系の魔石   =火や氷や雷の魔法攻撃が使えるようになる。

 ステータス上昇系 =攻撃力やすばやさなどが上昇する。

 召喚系      =召喚獣を呼び寄せることが出来る。

 特殊系      =それ以外のさまざまな用途がある魔石の総称。

 

 ちなみにこれもレアな順にすると、

 

 召喚系>ステータス上昇系>魔法系>>>特殊系


 と、なるらしい。

 特殊系が低いのは、役に立たないガラクタがほとんどだからだと言う。

 ただし、中にはとんでもなく便利に使えるもの(姿を消せる・空を飛ぶ・毒を防ぐ・魔法防御アップなど)もあり、そういうものは当然高価となる。


 そして俺にとって最も衝撃的だったこと。

 それは――このような魔石は、誰にでも使用可能であると言うことだ。

 つまり、俺のような無能な村人Aでも、最強の魔石を装備出来れば、最強の戦士にも魔法使いにもなることができるわけだ。(もっとも、一度に装備できる数は限られているらしいが)



 ちなみに――コトトの部屋で見たのは緑だった。

 つまり、ランクはB。

 Bで100万円、か。

 そうなると、Sとかになるといくらの値がつくんだろう。


(ユウスケ、君、少なくともレア度Aは引きなさいよ)

 そこまで文官が説明したところで、コトトが小声で言った。

(1%か……まあ、10個くらいは引けるからなんとかなると思うけど)

 ……多分。

 

 続けて、文官は『天佑世界樹の恩恵』の具体的なやり方について教えてくれた。

 儀式の手順はこうらしい。

 

 1 天佑世界樹の幹の中央に立つ。

 2 そこに開いてある穴に両手を入れ、30秒待つ。

 3 すると、両手がひんやりしてくるので、そのままさらに10秒ほど待つ。

 4 手に固いものが落ちてくるので、それを落とさないように引きぬく。

 5 魔石を手にしたら、世界樹に目礼をする。


 たったこれだけだ。

 儀式自体は本当に簡単。


 ただ、俺の場合は事情がちょっと違う。

 『天佑世界樹』はこの国ではとても神聖なものだ。

 よって、それを傷つける行為や侮辱するような行為は絶対に許されない。

 儀式の途中も、見張りの兵士が5人もつく。


 でも、俺は『チート=ラック』発動のために、例の動きをしなければならない。

 あの程度の所作で見咎められる可能性は低いとは思うけど――。

 それが少し心配。

 

 そして最後に、

「そして、出てきた魔石は全て諸君らのものとなる。例えSの魔石が出ようとも、それは変わらぬ。王がそのように約束してくださっているので、心配せぬように」

 と、付け加えた。

 コトトが小さくガッツポーズしていた。

 やはり、気にかかっていたようだ。


「では、今から世界樹へと向かう」

 城兵に言われ、俺たちは立ち上がった。


 

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