第38話 『歴史に名を残す』戦いの終幕 下
拓けた場所では、狩猟者の他にも獣人の亜人らやゴブリンらが、この戦で命を失った同胞を
各々の目的の為にここに集まった者が、種族と言う垣根を越えて、ここで勝利の余韻を感じ、そして、
「わたしの提案は、この討伐戦で出る報酬額は『オークプリンス』に金貨1000枚、『ガックバム』に金貨300枚、『ダザビッシャ』に金貨300枚の計1600枚。その内、わがチームアサトは、『ガックバム』討伐報酬として金貨300枚を頂けば、金貨1300枚となる、この戦に参加した狩猟人は、100人程と考えれば、狩猟人として、金貨10枚は確実にもらえると思う、だが、亜人やゴブリンらはどうですか?なにも無いのは、人間族のエゴにしかならない。だから、私は提案します。この討伐戦に参加した狩猟人の漁った金品は、すべて人間族と関わりの薄い獣人の亜人らやゴブリンらに与え、狩猟人、そして、人間族と関わりのある獣人の亜人らは金貨のみを受け取る。というようにしていただきたい。」とリアンを見ながら言った。
リアンは顎に手を当てながら広場の風景を見た、傷を癒し、癒されている者らは種族を超えている、亡くなった者を一か所に集める作業も種族間を超えて集めている。
彼らの目的は、金貨や戦利品より、この『オークプリンス』らへの憎悪であったのなら、種族間を超えて共有するべき事柄を作ってもいいのではないか。
と言うか、報酬を度返しにした事柄だったのではないか、その戦が勝利で終わり、その結果に報酬が発生するのであれば、これも、種族間を超えて分けなければならないのではないか、だが、亜人はともかく、ゴブリンが金貨を必要とする事は無い。
なら…クラウトが言っている事こそ、この勝利を共有できる報酬の分け方なのかもしれない…。
「それで、」とクラウトがアサトを見ると
「…ぼくの提案は、どうかな?リーダー」と聞く、その問いに小さく笑って、「…いいですね…あと…、ぼくら300枚もいらないです。その金額にぼくらの分、200枚やってもらえますか?あっ、みんなが良いって言ったらですが」と言うと、「おまえな…ガックバム斬ったのは、おまえじゃね~か。本来はお前のものだ。好きに出来るんだ。」とタイロンが言うと、「そうですね…そうなれば、少しは額がふえるかもしれないですしね…アサト君がそれでと言うなら、私は構いません」とシスティナが言葉にした。
「…と言う事ですので」と言いながらメガネのブリッジを上げ、「僕らは100枚あればいいです、そのように配布をお願いします。」とクラウトが頭を下げた。
その行為に、タイロンとシスティナが続くと、なぜかアリッサとケイティも頭を下げた。
一同を見て、リアンは頭を掻きながら、「わかった、我々は腰抜け国王軍って言われているから約束は出来ないが、君が皆に納得できる説明をして理解を得たら、そうしよう。」と言い、ニカっと笑った。
クラウトは頷き、アサトを見て、「じゃ…行ってくるよ」と言い、リアンと戦場跡へと向かった。
「…また後悔しているんじゃないか?」とタイロンが言葉にすると、「…えぇ…すこし」と言い、笑って見せた。
「…後悔するくらいなら、最初から言うな!」と言いながら横になり、大きく笑い声をあげた。
それを見てシスティナが小さく笑い、アリッサを見るとアリッサも笑っていた。
その向こうでケイティも笑いながらアサトを見た、そして、「ここでなんだけど…一つ聞いていい?」と言葉にすると、一同の笑い声がやんだ、「なに?」とアサト。
「…ほんとに『ギガ』倒したパーティーなの?」と聞いて来た。
その問いに、システィナはケイティを見てる、タイロンは口角を上げながら目を閉じた。
「…うん、そうだよ」と答えると、「…でも…6人って話だけど…」と言う、その言葉に小さく微笑みながら遠い目で夜空を見た。
「そう…6人だったんだ」と言うと、「…戦死したのか?」とアリッサが問う、その問いに、何故か夜空に冷ややかな視線のアルベルトとニカニカ顔で笑っているインシュアが見えた。
その顔がとても愉快に感じ、アサトは小さく吹きだした。
その行動にアリッサとケイティが不思議そうな顔をする。
それを見て、「あっ、ごめん…なんかね…死んではいないし…死にそうにない人たちだから…なんか笑っちゃった」と言うと、システィナも小さく笑い、タイロンは、「…そうだな。あの2人は…なんてか…死にそうにないな…」と言葉にして大声で笑った。
「…じゃ…」とアリッサが一同を見ながら言葉にする。
「うん。2人はね。僕の兄弟子なんだ。僕らが入っているギルドでは、先輩狩猟者パーティーが、後輩狩猟者パーティーの育成をするんだ」と言うと、「育成?」とケイティが聞く。
「うん、育成。ようは、その後輩パーティーが、ちゃんと狩れるまで面倒をみるんだよ」と返すと、「へぇ~」と言葉にした。
「それで、ある程度形になったら、卒業試験と言うのがあって、そこでチームとして、独り立ちできるか出来ないのか決まるんだ」と言い目を閉じた。
「で?」とアリッサ。
その言葉に目を開けて、「僕らの卒業試験は、『ギガ』グール討伐だったんだ。卒業試験としては難易度が高かったけど…」と言い、システィナを見た。
システィナはアサトを見てニコっと笑う。
「…システィナのパーティーの敵討ちも兼ねて、クラウトさんとアルさんが決めたようなんだ」。
その言葉にアリッサとケイティがシスティナを見ると、システィナは肩を萎めた。
「…じゃ…確かに、他にも2人がいたんだ」とケイティが言うと、アサトは頷いた、そして、「うん。あの2人がいなきゃ、僕らは狩れなかったかも…」と言い、小さく笑顔を見せた。
「…そうだな。2人がチビグールを止めてくれていなきゃな…」と、タイロンが付け加える。
一同を見たアリッサが小さく息を吐いて、「…いい兄弟子を持ったね」と、アサトを見ながら言うと、「…そうかな?…一人はいつも怖い目つきで言葉も汚く、罵るばっかりの人で、もう一人は、言われなきゃ何もやらない…酒と女が好きないい加減な人だけどね…」と照れ笑いをした。
…みんな…どうしているかな?チャ子は?インシュアさんは?アルさんは…?そして、パイオニアのみんなは…?
「…なんで、黙っていたの?あの時言ってくれれば」とケイティが、アサトの顏の上で言葉にする。
目を丸くしていたアサトだが、その言葉に目を閉じて、「クラウトさんがね…」と言うと、目を開けてケイティを見た。
「今、僕らだと言えば、皆が期待してしまう。ぼくらは確かに『ギガ』を狩ったパーティーだが、僕らだけの力で討伐した訳じゃない、だから、期待を持たせたくないんだ…と言ってね…、だから、あれからも黙っていたんだ…」と言うと、ケイティは姿勢を戻し、腕組みをして、「…ったく、あのむっつりメガネめ!」と、唇を尖らせながら言葉にした。
拓けた場所で大きな声が上がるのがわかった、そして、歓喜のような声になり、笑い声もまじっていた。
どうやらクラウトさんの言葉が、皆に理解されたようである。
アサトは、その声を聴きながら瞳を閉じた。
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