第35話 死を覚悟した瞬間 上
下っ端オークの首を切り取った、ギルド【スパリアント】のギルドメンバーが、その首を袋に入れると、その横で、アセルバンは遺跡1階の屋上を見ていた。
「…準備できました。」とメンバーが言うが、その言葉には反応がない。
アセルバンは、ダザビッシャと対峙している4人を見ていた。と言うかくぎ付けになっていた。
手も足も出せなかったオークを、ここまで追い詰めたこのパーティー、そして、どんな手を使ったのか分からないが、獣人の亜人らやゴブリンら、そして、狩猟人ら、その果てに居る国王軍までも動かした戦術士…。
自分らが描けなかった戦場をいとも簡単に描き、そして、最終決戦までもつれ込んだこのパーティーの底力には、目を奪われるものがあった。
彼らは必ず名前を残す…。
この先に居る『オークプリンス』の首を狩って凱旋をする…、この戦場に居る者を従えて…。
その時に…そんなことをして…。
ここで彼らが敗れても…彼らは名前を残す…チームアサト…の名を…。
「…もういい、捨てろ」とアセルバンが言葉にした。
「…え?いいんですか?」とメンバーが言葉にする。その言葉に歯ぎしりをして
「…もう遅いんだ!我らは…この戦に遅れた…そして、今度は恥をかく気でいた。見てみろ!あそこにいるモノらを…彼らは生と死の狭間であそこまで生き延びた。この戦が勝とうが負けようが…彼らは名を残す…」と言い、握りこぶしをつくると…。
「…最後を見届けよう、他の者は、敗残するオークを狩ってもいい、逃げてもいい…もう好きにしろ」と言い、その場に座った。
周りのギルドメンバーは顔を見合わせてから、その場に座り始める。
それを見てアセルバンは小さく笑っていた…。
…こんなわたしと共にするのか…と思いながら…。
国王軍騎士団、団長のリアンは、遺跡内の制圧の指令を出すと上の音を聞き、振り返り拓けた場所の戦場を見る。
狩猟者らがオーガを倒すのが見え、ゴブリンが群れでオークを襲っている。
獣人の亜人らがオークを囲んでいて、それを補助している狩猟者らも見えた。
至る所から煙が上がる、そして、広場を埋め尽くすほどの死体、その向こうには敗残するオークの群れも確認できた。
もうすでにこの広場は掌握した、あとは大将の首を取るのみ!
握りこぶしを作ると大きく息を吸い込み、そして、近くにいる兵士に命令を与えた。
「来るぞ!」とタイロンが声に出すと盾を構えた、その隣にアリッサが並ぶ。
アサトは柄の握りを確認していると、ケイティがアサトの背中に手を当てた。
2メートルを超えるであろう巨体が、ガックバムの血を踏みながらこちらに向かって歩いて来る、そして、大きく振りかぶり大きな剣を振り下ろした。
その衝撃は下にいたオークやオーガとは桁が違う。
タイロンは上に向けた盾の下で歯を鳴らしながら踏ん張っていた、そしてもう一度振り上げると、今度はアリッサへと振り下ろす。
その衝撃に、グラつくアリッサは歯茎を斬ったのか、口の脇から鮮血が流れてきていた。
アサトはタイロンの後ろに位置を移動すると、タイロンが声を上げた。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ、お前がやつの頭を取れぇ!ケイティ、俺たちのアタッカーだ、足を狙え!」と叫ぶ。
その声に、アサトは何の迷いも無く頷きタイロンの脇から出た。
その動きに気付いたダザビッシャは、アサトの動きに合わせると同時に、アリッサの横からケイティも飛びだし、ダザビッシャの脇のモモを斬りつけた。
「こっちだ!」といい、すぐに間合いを取るとダザビッシャはケイティの方へと視線を移す。
アサトは、まっすぐに『オークプリンス』へと向かっていた。
ケイティは短剣を構えてダザビッシャと対峙すると同時に「おぉぉぉぉ………」と叫びながら、アリッサが盾の上部に剣を突き出して体当たりを試みた、それを剣で払うと、今度はアリッサを見る。
盾を弾かれたアリッサはダザビッシャを見ると同時に、ケイティが腿の外側に剣を突き立てた。
その痛さに歯を食いしばり、腿についているケイティを大きな手で払いのけた。
数メートル横に飛ばされたケイティ。
それを見たアリッサが、再び盾から剣を突き出して構えたと同時に、ケイティが突き刺した剣をタイロンが手にした。
ダザビッシャはタイロンを見ると同時にアリッサが突っ込む。
少し外れた後ろの方で、倒れていたケイティが立ち上がり、横たわっているオークの腰から剣を取り上げるとその場に向かった。
アリッサの攻撃を剣で交わしたダザビッシャだったが、タイロンは剣を突き入れた。
顔を上げて悲鳴を上げると、血走った目でタイロンを見ると同時に、ケイティがダザビッシャの懐に入り、胸に剣を突き立てながら体をダザビッシャに預けると、その後ろにアリッサが突っ込み、二人で剣の柄を握ると体を預けた。
タイロン、アリッサ、ケイティ、がダザビッシャを仰向けに倒すと、その後方に、アサトが事に興じている『オークプリンス』の背後を取った。
『オークプリンス』のイチモツは、人間の女の割れ目に突っ込まれている。
その大きさに割れ目は裂け、鮮血が流れ落ちている状態で女性は気を失っていた。
ふくよかな胸を後ろ手で揉みながら腰を振っている。
体長は、ダザビッシャの一回りほど大きく、オーガより若干小さい感じ、なので3メートルに近いくらいの体長と思われる。
腰を振っている『オークプリンス』の後方に回ると、鋼のような筋肉に覆われている背中を見て小さく息を吐きだした。そして、長太刀を首に当て、「…死期が迫っていても、やめられないですか…哀れですね…」と言いながら長太刀を振りかぶりと、右の肩に向けて振り下ろした。
その手ごたえは…
タイロンがその場から退くと、アリッサも起き上がり、ケイティも飛びながら退くとダザビッシャとの間合いを取った。
ダザビッシャは大きく息を何度かすると、おもむろに立ち上がり、3名の前に仁王立ちになった。
その姿は、鎧を貫いている剣を胸に突き刺し、足には短剣が刺さっている、鼻と口から血は流れているが、目には力が入っていた。
まだ、終わってない。
ダザビッシャは血に滲んだ唾を吐き捨てると、口元を拭き、そして、ニンマリと笑うと胸に刺さっている剣を抜き、腿に刺さっている短剣を抜くとケイティへと放り投げた。
「化け物が…」とタイロンが盾の裏に携えてある剣を抜き、アリッサも盾を拾い上げて両手で持った。
ケイティは短剣を拾い上げると袖で血を拭き取る。
ダザビッシャは大きな剣を構えると、大きく息を吸い咆哮を上げた。
その咆哮は威力があり、建物全体を揺らし、戦場全体を揺らすと森へと遠のく、再び鳥たちの舞い上がる音が聞こえると同時に体をゆすり始めると、目を閉じて小さく深呼吸をして、一気に目を開けてタイロン達を視界に収めた。
「…本気にさせたみたいだな…」とタイロンが言葉にすると、アリッサが生唾を飲む、そして、ケイティはダザビッシャを見てから、その後ろにいるアサトを見ると、「…ま…まさか…」と小さく言葉をだした。
その言葉に一同がアサトを見る、そこには…
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