第29話 戦況を変える咆哮と雄叫び 上
バッチんと大きな音と共に巨体が右側に倒れ込む、その方向には炎の壁がある。
その壁に倒れ込むと、炎を避けるように大きく上半身を横にそらせて悲鳴を上げた。
アサトはすぐさま、背中に回り込んで背中を斬りつける。
ケイティは、アサトから離れないようにしている。
アサトが首の近くに来て、2本の太刀を使い首の動脈を斬りつけた。
大剣を握ったタイロンが走ってきて、首の喉ぼとけ辺りに何度も剣を振り下ろす。
あまりにものたうち回るので、向うにいるオークらはこちらに来られない。
時間を稼げる。
アサトが斬りつけた首の動脈から大量の血が噴き出し、そして、タイロンが叩き裂いた場所からも血があふれ出していた、そのうち肩で息をつき始めると絶命までには時間はかからなかった。
アサトは布で刃を拭きながらその時を待つ。
拭いた布をケイティに渡すと、不思議な顔でアサトを見てから短剣の刃を拭き始めた。
タイロンは膝に手を当ててオークらを見ている、アリッサも肩で息をしながら見ている。
ふと炎が弱まるような気がした。
アサトは炎の壁を見る…が、そうでもなさそうだ…壁の向こうでは、狩猟人ら、そして、獣人の亜人らやゴブリンらがオークらと対峙している。
目の前にある
そろそろ…と思った時、再び大地と空気を揺さぶる大きな咆哮がこの場を、そして、森や地面を揺さぶる!
咆哮のする方へ耳を押さえて見てみると、鎧に身を
その言葉にオークが一斉に咆哮を上げた。
「…まずい」とクラウトの表情が固まった
「…このままだと…流れが向こうに行く…」と言いながら、森を通る道を見る。が、そこから来るものは狩猟者しかいなかった…それも、その咆哮で身を強張らせている。
拓けた場所へと視線を移す。
拓けた場所に居る、獣人の亜人らやゴブリンら…そして、狩猟者らも耳を押さえて身を強張らせていた。と…思っていたら、アサトの動く姿が目に入った。
「…ジャンボさん!行きましょう!このままだと…」と言い、アサトが柄を握りしめた。
一階の屋上から4名を見下ろすガックバムが、口角を上げながらこちらを見ている。
「…あの…オークめ!」とアリッサが歯ぎしりをして見ていた。
「…ヤヌイを連れて行ったオーク!」とケイティが言うと、「…なら…」とジャンボが大きく息を吸い、「うぉお~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」と雄叫びをあげて、たおれている
ガックバムは顔を歪ませる、その横にダザビッシャが現れ、4人を見て顎に手を当てて何かを考えていた。
「右のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉやろうどもぉぉぉぉぉぉぉぉ」と言い、剣を右に向けてそちらを見ると、獣人の亜人らやゴブリンら、そして、狩猟人らがタイロンを見た。
「左のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉやろうどもぉぉぉぉぉぉぉぉ」と言い、剣を左に向けてそちらを見る…そして、正面に剣を向けると、「俺たちにぃぃぃぃぃぃぃぃつづけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」と言いながら走り始めた。
その行動に右に居るもの、左に居るものが雄叫びを上げ、再びオークと刃を交じり合わせ始めた。
走るタイロンを見てアリッサが笑みを見せながら盾を握りなおすと、その横にアサトが来て、「あいつ…必ず狩りましょう!」と言葉にする。
その後ろでケイティが大きく笑みを見せた。
「フッ、ジャンボのやつ…」とクラウトが鼻で笑うと、「…もう…そろそろ限界です…。」とシスティナがクラウトを見た。
「…致し方ないな…お疲れ様…」と言葉にした時、炎の壁の高さが一気に低くなった。
「!」とアサト、…まずい。と思い、あたりを見ると、壁が低くなったことに気付いたオークらが4人を見て武器を構えた。
そして…駆け出してくる
「横…全体から来る!」と声を上げると同時に、オークが炎を飛び越えるが……。
「炎の壁よ、立ち上がれ!」と幾重にも重なる声が聞こえた。
クラウトは横を見ると、そこには、真っ白いローブに背中にシダのマークが入った、王国軍魔法騎士団の女性数名が立ち、戦場に向かってロッドを向けていた。
ぐったりと倒れ込むシスティナを抱きしめて、その者らを見るクラウト。
「…ごめんなさいね、ここからは私たちも参戦するわ」と言いながら戦場を見た。
「…クラウトさん?」とシスティナ。
「うん…どうやら間に合ったみたいだ」と言葉にした。
飛び越えようとしたオークが、先ほどよりも燃え盛る炎に全身を焼かれた。
その光景を見て振り返ると、炎の壁で出来ている道を白い鎧を着た兵士が向かってきていた。
「…来ました。」とアサトが言うと、
「雑魚はあいつらに任せて!俺たちは本命を!」とジャンボが
アサトは一階屋上にいるダザビッシャとガックバムを見ると、ケイティに視線を移し、「ケイティさん、クラウトさんの所にいって、長太刀を貰ってきてください」と言うと、「ながたち?」と返した。
「ハイ、奴らを討つには必要なんです」と言いながら巨体の2人に視線を移す。
それを見てケイティが「わかった!」と言い、
アサトは太刀を握りなおすと、応戦しているタイロンとアリッサの背中に向かって走り始めた。
王国軍騎士団は、壁をも越えて戦場となっている拓けた場所へなだれこんでゆく、それを援護する弓部隊と魔法部隊。
炎の道の出口に群がっていたオークは、一斉に拓けた場所に散らばり始めた、そして、交戦が始まる。
多くの剣や斧がぶつかるけたたましい音が戦場に広がった。
オーク1体に3から4名で挑むところもあった。
素早く動くアサシンの取得者は、戦場を駆け巡り、オークの足を斬ってその動きを止めている。
タンクがオークの攻撃を防ぐと同時に背後からアタッカーがとどめを刺す、それも首に…。
アサシンのたおしたオークをグラディエーター達が大きな剣を首に突きさす。
そして、次!
魔法使いたちは、動きを止めたり眠らせたりしてオークの行動を止める。
王国軍の援軍にこちらの勝機が見えた。
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