第28話 『歴史に名を残す』戦いの開幕 下

 この咆哮は、離れた野営地にも響き渡り、森から大量の鳥たちが羽ばたき空へと舞い上がった。

 天幕に中にいた、ギルド【スパリアント】のギルドマスター、アセルバンは、ラフな格好のままに外にでてきて、森から飛び立つ鳥を見上げていた。

 すると…2度目の地鳴りを伴う巨大で合唱のような咆哮に腰を抜かす。


 目を丸くしていると、側近が腕を持って立たせた。


 その側近に、何が起こっているのか見てこいと言葉にして辺りを見渡す。

 野営地にいる狩猟人が武器を持ち、森へと駆け出して行った。

 それを見て激怒をする!


 「俺は…まだ命令はしてない!…このままだと…」と言葉にすると、森から数人の兵士が出てくるのが見えた。

 その真ん中にいるのが、国王軍騎士団、団長リアンと分かると、アセルバンは、へなへなと走りながらリアンに近づいて話を聞いた…すると、なんと!オークを狩るモノが現れたとの事に再び腰を抜かした。


 あのオークに…正面切って戦いを挑むバカとは…。


 リアンは、腰を抜かしているアセルバンを見ながら側近の兵士に命令を下した!


 炎の壁で出来た道の中頃まで来ると、アサトが布で刃を拭きながら辺りを見渡す。

 森の周辺には、多くの狩猟者が湧きだってくるのが見えていた。


 「周りから…援軍…」と言葉にすると、「あぁ…だいぶメガネにけしかけられていたからな…あいつは…策士だ!」とニヤニヤした笑顔で笑っていた。

 そして、「さぁ~、本気モードで来るぞ!女!覚悟を決めろよ!」とタイロンが口角を歪ませながら言葉にする。

 「えぇ~、望むところ!」と笑みを返しながら、アリッサが盾を握りなおした、…そして、第2陣とタイロンが激突する。


 両足に力を入れ、両手で盾を持って大きな斧を防ぐ、その隣でアリッサも歯を食いしばりながら大剣を防ぐと同時に、「行きます!」とアサトが声をかける、二人の間が少し開く、その隙間を通ってアサトが斬り込む。


 持っていた太刀で、アリッサを襲っているオークの右手を斬りつけると同時に、左手の2本目の太刀を抜き、刃を素早く出して斬りつける…。

 その流れでタイロンと対峙しているオークを斬りつけると、怯んでいる2体を、ケイティが首に刃を突き刺し始末をする。


 「アサト!」と後ろからケイティが声をかけた。

 その声に、アサトは攻撃してくるオークの斧を刃で流し、前のめりにさせるとケイティにスイッチをする。


 ケイティは、前のめりになったオークの背中に飛び乗り、頭を下にした状態で、横の腹…肝臓をめがけて短剣を刺すと、ケイティを狙っているオークが大剣を振り下ろした。

 それを見ていたタイロンが、ケイティの腕をとり引き寄せる。


 大剣はオークを叩き、背中からずっぷりと体の中に入った瞬間にアリッサが、そのオークの首を剣で叩くと、首半分に剣がのめり込み血があふれ出て来た。


 そのオークを蹴飛ばすと、その向こうにオーク2体がアリッサを狙い剣を振り上げた、その懐にアサトが飛び込むと、左の刃、そして、右の刃と平行に近い角度で交差させて2体の首を斬る。

 その2体をタイロンが後ろに突き飛ばすと同時に、向かってくるオークを確認する。


 今度はタイロンの後ろからケイティが飛び出し、オークの目の前でしゃがむと、足をオークの脇に大きく踏み出して後ろを取る。

 もう一体のオークが斧を振りかぶりタイロンを襲うが、無防備になった顔面をアリッサの盾の上の側面が襲い、鼻が折れて、鼻血を流しながらふらふらしている所をアサトが首の動脈を斬る。


 最初のオークの背後に回っていたケイティは、背中に飛び乗り、首に短剣を突き刺した。

 アサトは、太刀を倒れているオークに突き刺すと、刃の血を布で拭き鞘に仕舞う。

 突き刺していた太刀を手にして刃を布で拭き、小さく息を吐き出してから、再びタイロンの背中に回った。


 「…クラウトさん…わたし…」と言葉にするシスティナ。

 それを見て小さく微笑み「あと少し…頑張って…」と言いながら肩に手を当てた。

 すると、システィナの中に暖かな気力が注ぎ込まれてくる「ウっ…」言いながらその流れを体で感じているシスティナ。

 クラウトは拓けた場所の動向を見る。


 「…そろそろ限界だな…」といいながら、盾で踏ん張っているタイロンが言葉にした。

 「そうですね…」と言いながら小さく笑うアサト。そして、「行きます!」と言うと、タイロンが大剣を振っているオークを突き飛ばす、その横をアサトが通り抜けると突き飛ばしたオークの首を斬る。


 その流れで、横にいるアリッサを襲っているオークを斬りつけると、アサトを別のオークが襲うが、そのオークの懐に入るケイティ、下から短剣を顎下へと突き立てると素早く抜いてそこから離脱する。

 顎から血を流しているオークを、タイロンが突き飛ばすと間合いが出来た。


 4人の先に壁の終わりが見えて来た。


 「…ここからが乱戦だ!」とタイロンが血だらけの顏で笑いながら言葉にする。

 もう側面を守るものはない、最悪360度から敵が来る。

 「ジャンボさん、アリッサさん、そして、ケイティさん…」と言葉にすると、「…なんか…楽しいですね」と笑って見せた。

 その表情を見て、一同も小さく引きつりながら笑うと、「じゃ…行くか!」とタイロン…そして…。


 状況を見ていた周囲が動き出し始めた…、拓けた場所に入っていた…ゴブリン、そして、カンガルーや兎…トラなどの獣人の亜人…。


 オークらは炎の壁の出口を向いている。


 1体のゴブリンが、音も無くオークとの距離を縮め、手の届くような範囲まで来ると、いきなり大きな声を上げて進みだした、それに弾かれたように周りも慌ただしく動き始めた…。

 背中を見せているオークに、ゴブリンら次々と飛び乗り首に短剣を刺す、亜人らもオークの背中に飛び乗り始め、次々にオークが倒れ始めた。

 それに触発された狩猟人が声を上げる。

 「…いくぞぉ!!名を残せ!」と言う声に弾かれたように、森に潜んでいた狩猟者も壁を越えて拓けた場所へとなだれこんできた。


 その声にアサトが周りを見て、「みんな…乱戦になる!手薄になるまで、ここで迎え撃とう!」と言葉にする。

 タイロンとアリッサが立ち止まり、オークの第3陣を待った。


 タイロンとアリッサが並んでいる、その後ろにアサト、そのすぐ横の後ろにケイティが短剣を構えてその時を待った。

 すると、大きな地鳴りと共にオークを掻き分けながら、巨体がこちらに向かって進んでくる…。

巨大鬼オーガだ…」とタイロンが言葉にすると、「…案外…小さいですね」と後ろからアサトが言葉をかけた。

 その会話を聞いていたケイティが、「ほんとに…『ギガ』を狩ったの?」と聞いて来た、この問いにアサトが微笑みながら、「うん、『ギガ』に比べれば…」と言うと、タイロンの背中を小さく小突く。

 「…あぁ…デカいのは討伐済み、倒し方は分かっている。」と言い、ニヤッと笑った。


 その表情をアリッサが見て、目を細めて微笑んだ。

 そして、「じゃ…あれ、狩りましょう!」とアサトが言うと、「アリッサさんとジャンボさんは攻撃を受けて、流すだけでいいです。僕は後ろに回ります、ケイティは僕の補佐でオークが来たら退けて」と言うと一同が頷く、そして、「行きましょう!」と言葉にして巨大鬼オーガへと向かって行った。

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