第26話 『歴史に名を残す』戦いの前哨 下
「まずは、システィナさんが炎の壁で道を作る。」
「道?ですか?」と目を丸くしてシスティナが言うと、「ちょっと難易度が高いかもしれないけど、頑張ってやってみよう」とクラウト、その言葉に小さく頷く。
「その道が出来たら、先頭をタイロン、そして…アリッサさんは前衛で大丈夫?盾持ちで?」と聞くと、アリッサは頷いた。
「じゃ、その後ろにメインアタッカーのアサト、それで、サブでケイティ。ケイティはアサシンでいいんだよね」と言うと、ケイティは小さく頷き、クラウトへまっすぐな視線を送った。
「それじゃ、僕とシスティナさんは後方から援護をする、他は、その道をさっき言った順で進軍して遺跡に向かう。あっちの装備が整う前に距離を稼ぐんだ!後方からの攻撃は無い!断言できる。みんなの力を信じるから、僕らを信じて進軍してくれ!」と言うと、一同が頷く、すると、そこに声をかけてくる狩猟者がいた、「…君たち?」と、クラウトは振り返りその狩猟者を見た、「…もしかして…」と言うと、丘を登ってくる兵士の音が聞こえる。
鎧が擦り合わさる音と草を分け進む音が…。
その方向を見て、クラウトがニヤリと笑みを見せる。
「…どういうつもりなんだ、この私を呼びつけるとは!」と兵士の大男が声を上げてクラウトの傍に来た、その男の後ろに2名の兵士がいる。
「あなたは?」とクラウトが兵士に問うと、「私は国王軍騎士団、団長のリアン。今は、ここにいる駐屯隊の隊長を任されている。」と胸を張って答えた。
「隊長さんならよかった」とメガネのブリッジを上げて言葉にした。
クラウトは冷静にリアンと対峙をする、そして、「…とりあえず、報告しておきたいと思いまして…と言うか、了承を得たくて」と言葉にすると、狩猟者の男を見た。
その光景が気になったのか、何組かのパーティーのリーダー的な人物もそこに集まり始めた、その数10名ほど…。
それを確認してから、「これから…あれを僕らが狩ります」と言葉にすると、ここに来た兵士と狩猟者が驚きの声を上げる。
「…って…あれってプリンスだろう?…あれじゃオークじゃないぞ、化け物だぞ」と狩猟者が声にすると、もう一人の男も「ムリムリ…」と手を振っていた。
「…ったく…バカな事を言いよって」と兵士が言葉にすると、「…僕らはバカではない」とクラウトが返す、その言葉に兵士がクラウトを睨みつけた。
「そこまで言うなら、勝算はあるんだな!」とリアンが聞く、するとメガネのブリッジを上げて、「勝算はありますと言うか、楽勝です。」と言い小さく笑った。
その笑いにつられた狩猟者が、「あるのか…たおせるのか…?」と言葉をかける、その言葉に小さく、そして余裕を
「あぁ…悪いが…金貨1000枚は僕らが頂く。」と断言をする。
その言葉に狩猟者らが顔を見合わせると、クラウトは遺跡の方を見て、「…あの大きさ…『ギガ』に比べれば半分以下だ!」と言葉にした。
その言葉に、そこにいた狩猟者が一斉に言葉を飲んだ。
「『ギガ』…って…、も…もしかして…『ギガ』を狩ったパーティーって…?」と言うと、小さく笑いながらクラウトは胸に手を入れ、ゆっくり、そして、じらすようにギルド証を出して一同の前にさらした。
そこには、ギルドの名前と紋章がたたき出されてある。
「僕らは『デルヘルム』にある、ギルド『パイオニア』に所属するパーティー、『チームアサト』、悪いが、ここへはあれを狩りに来た。」と言い、遺跡に向かい指を指して小さく笑った。
その言葉にケイティが目を丸くしてアサトを見ると、アサトは少し照れながら頭を掻いていた。
「その武器…見た事のない鞘に入っていると思っていたけど…」とアリッサが言葉にする。
アサトは、腰の太刀の柄を握りながら…、「僕しか持ってない武器です」と言い、クラウトを見た。
「とりあえず、君たちはどうする?僕らはあれを狩るけど…」と言いながら兵士たちを見て鼻で笑うと、その行動に兵士の目に力が入った。
「…まぁ…僕らは今夜『ゲルヘルム』で祝杯をあげると思いますけど…安心してください、近くにいた兵士さんたちは、僕らが戦っている所をしっかりと観察していました。逃げる準備をして!って報告しておきますよ、腰抜けさんたち」と言い狩猟者を見た。
すると一人の狩猟者が「勇者が…来た!」と言葉にする。
「…オークの持ち物は…漁っていいのか?」ともう一人の狩猟者が言葉にした。
その言葉にクラウトは頷き、「…僕らは…あれしか興味が無いから、他は君らの力で何とかしてくれ、無理にとは言わないけど…この数なら何とかなるんじゃないかな?僕ら以外にもたくさんいそうだし。とにかく、僕らは…あれを今日、狩る!」といい、狩猟者達を見た。すると、「旧鉱山…」と言いながらカンガルーの亜人がそこに来た。
「旧鉱山?」と少し考えてから、「あぁ…そうだよ、もしかして?」とクラウトが言葉にすると、カンガルーの亜人が頷いて、「妹を助けてくれてありがとう。俺たちは近くの村の拉致者を救いに来た」と言葉にする。
その言葉に「…俺の仲間も…あそこにいると思う」と狩猟者が言葉にする。
「…俺の仲間も…」。
「あぁ…こっちは…拉致られたし…、仲間を殺された…もし…」と言い、クラウトを見る。
カンガルーの亜人がクラウトの手を握ると、「…俺たち…お前らに手を貸す。」と言葉にした。
その言葉に、「命の保証はしないが…」と言うと、亜人は小さく笑みをみせて「ここには死ぬ気で来た。俺たちは俺たちで…オークを殺す!」と言葉にする。
「あの化け物は…無理かもしれないが…小さいのなら…」と狩猟者が言葉にすると、「あぁ、助かるよ、僕らは小さいのには興味が無い。
「…わかった。近くにも何人かいるから…加勢する」と狩猟者が言葉にする、その言葉にクラウトは頷き笑みを見せる。
カンガルーの亜人の後ろにゴブリン3体がいて、その話を聞いていた。
カンガルーの亜人が説明をすると頷き、クラウトに親指を立てて見せた。
「じゃ…そう言う事で…」と言いながらリアンを見る。
「…と言う事です。それでは、そろそろ僕たちは『歴史に名を残す』戦いに向かいますので、腰抜け…」。
「俺たちの顏に泥を塗るつもりなのか!」と、クラウトの言葉を遮り、声を張り上げてリアンがクラウトの襟をつかんだ。
その声に森に潜んでいる者、そして、広場のオークらが一斉にこちらを向いた。
アサトらもその光景を見ると、クラウトが掌を広げて制止をさせた。そして
「泥を塗っているのは…あなた達でしょう?それとも…軍を動かす事の出来ない…あなたなんじゃないですか?」と言い、メガネのブリッジを上げた。
そして…、「もう、みんなにばれてしまいましたね。僕らがプリンスの首を狩る前に消えるか…僕らより先にプリンスの首を狩るか…あなたにはもう、2つの選択しかない…、我々は勝算がある。案外狩るのも早いかもしれませんよ…、システィナさん」と言葉にすると。
システィナは、ハッとした表情を見せると立ち上がり声を発した
「私が口火を切ります!準備を!」と…その言葉に声を上げてタイロンとアサトが立ち上がる。
つられてアリッサとケイティも歩き始めた。
それを見た狩猟者が「本物だ!」、「勇者のパーティーだ!」と言葉にしながら駆け足で戻ってゆく。
亜人らも藪に消えて行った。
リアンは目を見開いて、システィナの後ろ姿を見ていた。
クラウトは襟の手を振りほどき、遺跡に向かって指をさして叫んだ!
「オークプリンス!!!!お前の首!今日、我々が頂く!システィナさん!」と言うと、『パインシュタインの遺跡』前の拓けた場所に入る門から、まっすぐ遺跡に向かって一本の炎の線が走る。
「風よ!立ち上がらせて!」と叫ぶと、2メートル程に炎が立ち上がり、「別れて!」と叫ぶと、立ち上がった線が2本になり、2メートル程の壁が2本出来る、すると、その壁の間に道が出来た。
それを見て、「いくぞ!」とタイロンが叫ぶ。
その声に4名がその道へと突き進み始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます