第25話 『歴史に名を残す』戦いの前哨 上

 タイロンが少し項垂れると兜をかぶる、そして、システィナはロッドに魔法石を取り付け始めた。

 アサトは柄に手を置くとアリッサを見た、ケイティとアリッサが不思議そうな顔でこちらを見ている。


 「やるからには…僕に時間をくれ」とクラウトが言うと、辺りを見渡して何かを探した。

 すると、見つけたのであろうか、その方向へと進み始める。


 「…狩るって…プリンスを?」とケイティが言葉にすると、小さく頷くアサト。


 遺跡の上では、オークプリンスが亜人の女にイチモツを突き立て、腰を振っていた。


 「…あれ…むりでしょう」とケイティが指をさしながら言葉にすると、アサトは小さく笑って、「無理でも、可能にしてくれそうな参謀と、僕の壁になってくれる人がいる。そして、援護も攻撃も何でもしてくれる魔法使いがいる…心強い仲間がいる。だから僕は信じる、この仲間を…」と笑みを浮かべた、そこに、「わたしも…やる。手伝わせて」とアリッサが身を乗り出して言葉にした。

 「死んじゃうよ!」とケイティが言うと、アリッサは微笑みながら、「どうせ死ぬなら…戦って死んだ方がいいんじゃない?」と言葉にした。

 その言葉に口を尖らせるケイティ。

 アサトは二人を見て、「たぶん…負けるかもしれないです。でも、僕らは今できる力を駆使して挑む。たぶん…僕は越えなければならない状況を、目の前にしているんだと思います。だから…自分が出来る事を精一杯やって…みようと思うんです…それに…今は、狩猟者ですから…」と言い笑顔を見せた。


 「わたしも…頑張る…アサト君が決めたなら…やるだけだから」と言いながら、頬を赤らめてシスティナが言葉にした。

 「…まぁ~そう言う事だから…無理に付き合わなくてもいいと思うよ…こいつは…後から後悔するんだけどな…」と兜の紐を固定しながら小さく笑った。

 「…今できる事…」とアリッサが言うと、その言葉に一同が頷く、「ケイティは、無理しなくてもいいよ…」といいながらアリッサは笑みを見せる、ケイティはアリッサを見て少し考えると、「…何ができるかわからないけど…あなたにかける。ヤヌイを助けよう」と言葉にしてアサトに笑って見せた。


 すると、クラウトが帰って来て

 「それじゃ…下準備は出来た。少し待って」といい、周りを見た。

 こちらの動きを見ていた狩猟者がいる、そうであろう、この数を相手にしようと思ってない連中の中に、戦闘の準備をしているパーティーがあるのだから…。


 「…僕がハイと言ったら、頷いて、僕の指示の通りに」とクラウトが言うと、不思議そうに一同が見る。

 クラウトはいきなり立ち上がり、その場から少し降りて、『パインシュタインの遺跡』前の拓けた場所に向かって指をさす、と同時に円を描くように回して「ハイ」と言葉にした。

 その言葉に一同が頷く。


 …これでいいの?


 すると、「ケイティ…ここに来て」と言葉にする。

 不思議そうにケイティがクラウトの傍に来る、そして、耳元で、「すまない…少し利用させてもらう。」と言うと、「利用じゃなく、あたしも戦うよ。…アサトにかける。何が出来るかわからないけど…わたしも参加する。」と言葉にした。

 「そうか…いいのか?」と聞くと、「アリッチもやるって言っている。だから…あたしも…」と小さくうつむく。

 その表情を見て、「じゃ…、俯かないで、…頷いて…」と言葉にする。


 その言葉を聞いて大きく頷く、そして、耳から離れると「もう一度頷いて」と言う、ケイティは不思議そうな顔で再び頷く。

 「じゃ…今度は、僕に親指を立てて笑って、キューティーケイちゃん」と言うと、ニカっと笑い親指を立てて見せた。

 「いいよ。戻っても」とクラウトが言うと、今度はアリッサを見た。


 アリッサの視線はまっすぐにクラウトを捉えている。

 「次にタイロンとアリッサさん…盾を持って来て」と言う。

 その言葉にアリッサがタイロンを見ながら立ち上がると、タイロンも立ち上がり、クラウトのそばに二人で向かい、そして立った。

 「いい?ところで…ほんとに…アリッサさんも…?」とクラウトが聞くと頷いて。

 「…わたしも参加させて欲しい。」と力強く言葉にすると、クラウトは笑みを見せながら、「じゃ…、」といい。


 『パインシュタインの遺跡』前の拓けた場所の入り口を指さして、その指を真っすぐに建物入り口へとむけて動かす、そして…。

 「頷いて」と言うと、二人は頷く。

 そこから階段を指さし、その階段をなぞるように屋上へと動かす、そして…、「頷いて」と言うと、二人は頷いた。

 そこから、屋上にある監禁部屋を示すと、「アリッサさん…必ず、君の仲間は助けよう!」と言葉にする。

 その言葉にアリッサの目元が緩むと、大きく頷いた。

 それを見ていたタイロンが、「…あぁ…必ずな!」と言葉にする。


 「じゃ…アサト…」と言うと、アサトは立ち上がり、タイロンらと入れ替わってクラウトの傍に来る。

 「太刀は2本。今日は今までと違う。乱戦になる可能性がある。僕らはここから離れられない。君らについて行けば、君らの誰かが僕らを守らなくてはならない、僕は上級神官、100メートル手前のモノにも援護は出来る。勝手だが…、君がここから離れたら、君の裁量で戦ってくれ。」とクラウトが言うと、大きく、そして強く指をさした。

 「目標は…『オークプリンス』。!」と強く言葉にした。

 その言葉に頷き「ハイ!」と答える。


 「…じゃ…システィナさん」と言い、システィナを呼ぶ。

 アサトと入れ替わり、システィナがクラウトの傍に来ると、「周りは?」と言葉にした。

 システィナが周りを見渡す。

 「どう?周りは僕らの動きを気にしている?」と聞くと、「…はい、多分…、立ってみているパーティーもいます」と言うと、クラウトは小さく笑みを見せた。

 「システィナさんが口火を切るよ、…いいね。そのタイミングは僕が出す」と言うと、システィナは生唾を飲んで頷いた。


 そして、指を『パインシュタインの遺跡』前の拓けた場所の入り口に指すと

 「あそこから炎の壁を立てて欲しい、高さ2メートルの壁を…出来る?」と聞くと、少し考え、掌を閉じたり開いたりしてから、「大丈夫です。」と答える。

 「どこまで延ばせるかな?」と聞くと、再び掌を動かして、「3分の2くらいまでは…」と答える、

 「時間は?」と聞くと、「わたしの気力なら…10分が限界かも…」と小さな声で返す、その言葉にメガネのブリッジを上げて、「十分だよ。ありがとう」と答え振り返り、一同の元にもどる。


 システィナもロッドを胸に押し当てながら戻ると、「システィナさん?周りは?」と聞きなおした。

 システィナが周りを見てみると、何人かの狩猟人が話をしているのがわかる、そして、クラウトの後ろの方からこちらに向かってくる者もいた。

 狩猟者…、そして、カンガルーの亜人も向かって歩いてきている。

 「こちらに…来ます…」と小さな声で言うと、クラウトは小さな笑みを見せて、「…じゃ、指示を出す。」と言い一同を見た。

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