第22話 『オークプリンス討伐隊』出陣 下

 4の鐘と共に、この『ゲルヘルム』を出る有志連合の総勢は176名。


 事前情報で、昨日時点でのオークの数は約900体。

 『パインシュタインの遺跡』は、3階建てで、地下は6層まであるようであった。

 建物の手前には、横に100メートル、縦に60メートル程の広場があり、『パインシュタインの遺跡』の周囲を、高さ2メートル程のレンガの壁で囲っているようである。

 建物の真正面にあたる森の入り口近くに門を用意しており、その門からでなければ広場に入れないようであった。


 また、森には、『パインシュタインの遺跡』に通じるしっかりとした道は一本だけであるが、森の中には獣道が点在するようである。

 『パインシュタインの遺跡』前の広場にオークが野営をしている。


 建物は、1階の幅が50メートル程、奥行きが30メートルで、真ん中に入り口があり、小さな窓が点在していた。

 入り口の脇から左右に1つずつ階段があり、屋上へと延びているようであった。


 1階屋上の真ん中に幅25メートル、奥行きは20メートルの建物があり、建物の左側の屋上には、石でできている台が2個ほど並んである。

 大きさは、推測だが、長さが2メートル、幅が1メートル、高さが1メートル程の台のようであった、その台が何に使われているのかはわからない。

 そして、右側には、縦横15メートル程の石で出来上がった建物があり、その中に女性らが監禁されているようであった。

 2階の建物から柵が出ており、その監禁されている場所に行くには、その柵についている扉を開けなければならないようである。


 2階の屋上には、幅10メートル、奥行き10メートルの建物があり、その建物の上が3階となっていた。

 そこは見張りに使われているようである。


 地下は、文献での情報しかなく、その情報も曖昧だが、5層に大きな広間がある模様で、古の神殿でもあったような作りになっているようだ。

 広間を囲んで小さな部屋が10個あるようで、6層に下がれる階段もその広間から行けるようであった。


 そこに辿り着くまでには、ほぼ一本道のようであるが、通路は幅2メートル、高さ5メートルの通路で、通路沿いには小部屋が点在してあり、なかは、オークの一団が侵食をしていると思われる、また、家臣、側近クラスもそこにいるようであった。


 建物の入り口には、2体の4メートル級の巨大鬼オーガが入り口を守っている、また、広場にも、同じ大きさの巨大鬼オーガが3体いるようである。


 作戦は、この街のギルド【スパリアント】のギルドマスターが立案した。

 明朝、オークが寝入っている所を襲撃するようである。


 建物裏側の壁を登り、入り口にいる巨大鬼オーガとオークの殲滅をする。

 その際に、第1陣は狩猟者と衛兵らによる、タンク、アタッカーの組み合わせ部隊、第2陣の襲撃も狩猟者と衛兵らによる、タンク、アタッカーの組み合わせ部隊、第3派がギルド スパリアントのメンバーが襲撃をして確実に殲滅を行う。


 巨大鬼オーガを排除の後は、魔法使いによる水魔法で、遺跡内に水を充満させ、その後入り口を氷で塞ぐ。

 魔法使いの作戦中は、神官らは、魔法使いと共に遺跡内の凍結攻撃の補佐を行う。


 広場のオークらの襲撃を3陣の隊形で防ぐ、第1陣は狩猟人と衛兵らの盾持ち戦士、グラディエーターなどのタンクが役割を果たす、第2陣は狩猟者と衛兵らのアタッカーが位置して、第3陣にギルド【スパリアント】のギルドメンバーが位置する。尚、拉致被害者の救出は、【スパリアント】のメンバーが行う。


 また、撤退の場合は、ギルドマスターが、適切な時に適切な状況で判断を下す。


 その場合は、速やかに後方から撤退するようにとの事で、この作戦の目的は、『』であり、拉致被害者の救出が容易でないときは、その作戦の放棄もあり得る事を考慮してもらいたい。


 後日、タイミングを見て、オーク掃討作戦を立案することを約束する、その時は、拉致被害者の救出も必ず行う…との事だった。


 「…なんか…いいように使われているような感じがするな…」とタイロンが言葉にすると、「…そうだな…」と、クラウトがメガネのブリッジを上げながら言葉にした。

 「…街の脅威を払う目的なら十分な内容だが…」と、言いながら首を傾げて、「…どうも、この布陣は、明らかにギルドメンバーの損失を防いでいるとしか思えない」と付け加えた。


 「…それじゃ…参加者は、囮みたいなもの…と言うか、盾じゃないですか……、参加者の多くは仲間を救出する事なのでは…」とアサトが言うと、「…たぶん。この作戦は、参加者を集めるだけだと思う。参加者の内訳をみると、ギルドのメンバーが52名だ。それに…作戦の要綱を聞いていたのは、ほとんどがギルド所属のパーティーリーダーのようだったし…。それを考えれば…これは、ギルドへの収入を目論んだ作戦だと思う。たぶん…、巨大鬼オーガ討伐が失敗したら、ギルドメンバーは撤退を始めると思うぞ、そうなれば…残りの壊滅は時間の問題だと思う。それに…、討伐に出ただけでも名は残る…まったく…。それが本心ではない事を祈るよ」と言葉にしながら馬車小屋の外の空を見上げ、「…もう少し…いいやり方があるんじゃないかな…」とつぶやいた。


 その姿をアサトとタイロン、そして、システィナが見ていた。


 4の鐘が『ゲルヘルム』に響き渡ると、正門よりギルド【スパリアント】ギルドマスター、アセルバンを先頭に、176名の有志連合の一団が『』に出発した。


 先頭を行くギルド【スパリアント】ギルドマスター、アセルバンは戦士のようである。


 真っ黒な馬に乗り、金色の装飾が施されている青色の鎧を着込み、兜を馬の脇に垂らし、脇に剣を携えていた。

 見送る民衆の声援を、胸を張って聞きながら進んでいる。

 唇の上に細く整えた髭を生えさせ、しっかりとした視線で前を見ているが、口角がいやらしく上がっていた。


 その後を側近のチームリーダー2名が馬に乗り、その後ろを4台の荷馬車が追随している。

 今夜は野営をする予定であるので、テントや天幕、そして、食料なども積んでいるようであり、1台の荷馬車には、樽が山のように積まさっていた。


 その後ろにギルドメンバー、そして、有志連合の参加者の順で歩いていた。

 アサトらは、最後尾を追随する。


 アサトらの参加の意思が無いので、一団と距離をとって進んでいた。


 あくまでも、アサトらの目的は、オークらの動向と『オークプリンス』の居城、そして、状況を把握するためである…。

 状況においては、アイゼンら『デルヘルム』12のギルド協会を通じて、王都への陳情、そして、王国軍直下での討伐を陳情しなければならないとクラウトは思っていた。

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