第16話 彼女の名前は、キューティーケイちゃん! 下

 「きゃははははは…引っかかった!引っかかった!」と腹を抱えて指を指して爆笑モードに突入した。

 「これからおこちゃま君じゃなく…まじぃめ~くんに変更!きゃはははは…」と爆笑モード全開になった。


 さすがに…

 …なんか…どたまに来た!このクソガキ!いつかその小さな胸揉みまくって、ぎゃはははをあは~ん、あは~んにかえてやる!


 「あ~面白かった。んじゃいいことの続きね。」と言うと、足長蜘蛛の屍を指さして、「このアシナガックンには、体内に貴重な糸玉を持っているんだ!」と言いながら、笑って出た涙を拭き、「その球は、直径50センチで…だいたい金貨10枚くらいかな?1メートルくらいになると、20枚になるよ。最大で3メートルの球を持ってきたパーティーもいたけどね。どう?その袋がチンケに見えて来るでしょう?」といいながら悪戯っぽく目を細めて一同を見た。


 「お…お嬢さんは、なぜそんなに詳しいのかな?」とクラウト、と言うか…クラウトさん?

 「もう!ムッツゥリーは言う事聞かないね!調教が必要だね!」と言い、頬を膨らますと、「むっつりじゃないし、ムッツゥリーでもない!クラウトだ!」とちょっと強く言葉にした、ケイティはその言葉に眉を上げると少し考えてから…。

 「それじゃぁ~、ムッくんでいいわ!」と言い、ニカっと微笑んだ。


 「…もういいや、話を進めてくれ、!」と言うと、ケイティは頬を膨らませてから話を始めた。

 「あたしは、今は解体業者みたいな事をしているんだ。解体と言っても…死骸を漁るようなもんだね。そいで、このアシナガックンの解体を一度、アサシンの師匠に教わったことがあるのよ。」と言い、顎に手を当ててちょっと上を見て考えてから…、「…そうだな…取ってきてあげるから、1割ちょうだい!」と掌をアサト達に出した。

 「…取ってくるって…」とタイロンが言うと、「…うん、その球ね。胃袋の隣に糸袋ってところがあって、口から糸を…」と言いながら、斬った首に進み一同を呼んだ。そして、斬り口の前で説明を始める。

 「ここが…食道で、ここが気道?…そして、この穴が糸穴…」と指を指した。


 たしかに、ピンク色の筋肉のなかに穴が3つ、一番大きな穴が1メートル程で、小さい穴が50センチ…これが気道のようだ。そして、10センチ程しかない穴があり、それが糸穴、ようは糸を吐き出す穴のようである。


 「外殻は、道具が無ければ壊すことが出来ないし、この外殻を外すとほとんどが筋肉だから、それを捌いている内に糸がふやけちゃうんだ。そしたら商品にはならない。」

 「じゃ~、どうやってとるの?」とアサトが言うと、「?…決まっているじゃない!」と言い、糸穴を指さして「ここから入って取ってくる!」と言い、再びニカっと笑顔を見せた。


 「タイムリミットがあるって事か?」とタイロンが言うと、「いいね!じゃんぼぉう!その質問!」と言いながら、両腰に腕を置いて頷く、「実はね、生きている内は体内の温度とか湿度で湿る事は無いんだけど、死んじゃえば、急激に温度や湿度に敏感になってしまうみたい。だいたい12時間の間に処理して糸にするみたいだよ」と言う。

 「処理とは?」とアサトが聞くと、肩まで手を上げ、掌を上に向けて肩を竦めながら、「わかんな~い」と言葉にした。


 その姿が…なんか懐かしい。


 クラウトはアサトを見る、アサトはタイロンを見る、そしてタイロンはクラウトを見ると…、「…なかにはいって…大丈夫なの?」とシスティナが言葉をかけた、その言葉に一同がシスティナを見ると、ちょっと小さくなる。


 「大丈夫!」と指でVサインを作って笑っているケイティ。

 「どのくらい時間がかかるの?」とアサトが言葉にすると、「そうね~、師匠の話しだと…5分?」とちょっと考えてから言葉にした。

 「…なら、お嬢さん。たのんでいいかな?」とクラウトが言うと、頬を膨らまし目を細め、目の端でクラウトを見ながら、「気が変わった。行ってほしかったら…キューティーケイちゃんってお呼び!」と言い、ちょっとうっすら笑みをみせた。


 …これって…アレですか?…


 その視線に冷ややかな視線を送るクラウト、負けじと流し目で見ているケイティ…。その二人を見て、アサトは小さく肩を落としてから小さくため息をついて、「はいはい。んじゃ、僕が言います。お願いします。キューティーケイちゃん」と言うと、アサトに向かって「あぁ~?」と眉間に皺をよせてすごみ、「お前みたいなに言われてもうれしくないんだよ!リーダーにお願いされなきゃ、あたしはやんないんだよ!」と言うと、その言葉に、一同が「?」と声をそろえる。


 その言葉に頷くケイティ、すると、一同が一斉にアサトへ指を指した。

 するとケイティが怪訝そうな顔で指の向いている方向を見ると、そこにはアサトが自分を指さしていた。

 それを見て、ちょっとあんぐりさせてからアサトの襟をつかみ。

 「…冗談でしょっ!冗談でしょっ!どう見てもアッチがリーダーで、あんたはでしょっ!どうなっていんの!!これなんかのドッキリ!どうなの!どうなのぉ!」と襟を大きく揺さぶり始めた。


 システィナに止められたケイティはぐったりと肩を落としながら、しぶしぶ糸穴に手をあてて、大きく広げると、タイロンとアサトに開かせておいて中に入って行った。

 中に入る前に一度アサトを見て大きくため息をつくと、重々しく中へと進んで行った。


 案外、筋肉質と言っても伸びるモノだな…とおもっていると、中から何かがこちらにむかってくる振動がする、そして、直系1メートル程の真っ白な球と共にケイティが出て来た。

 「これが…糸玉?」とシスティナが言うと、ケイティはニカニカしながら「あと2つある。まっていな!」と言いながらまた、糸穴を通って中に入って行った。

 そして、80センチの糸玉を取りだすと、次に50センチほどの糸玉を出してきた。


 「…これで以上だね。そいで、板金工場ってところに行って、外にアシナガックンあるって言えば解体してくれるよ、そこでこのアシナガの外殻も買ってくれるはず。それはあたしが何とかするよ」と言うと、外れに置いていたバックへと駆けて行き、そのバックからなにやら旗みたいなのを出すと、「これ立てていると、衛兵が見守りしてくれるんだ。」と言いながら、旗を立てて衛兵の方へ手を振っていた。

 すると、衛兵も手を振り返している。


 どうやら、解体業をしているのは嘘ではないようだ。

 衛兵もケイティの事を知っているような感じでもあった。


 一通り縄張りの印を残すと球を馬車に運び、荷馬車に乗せて『ゲルヘルム』へと向かった。

 門を潜ると、晩御飯を食べながら報酬を払うと言うと、ニカっと笑うが、少し考えてから

 「…もう一人連れてきていい?」と言葉にした。

 アサトは小さく微笑みながら頷くと、馬車置き場に7時の約束をし、糸球を買ってくれる場所を教えてくれると、ケイティは足早にその場を後にした。


 アサトらは、とりあえず、糸玉の換金へと向かった。

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