第12話 リーダーの資質 下
「あんまりかっこいい事は言えないけど。メンバーのみんなは、ぼくのわがままを正当化しているだけなんだ…そんな仲間だから…僕は甘えられる…。クラウトさんがしっかりとした指示を出してくれるし、ジャンボさんは僕を守ってくれる。そして、システィナさんは、小さなことでも、僕や仲間にそっとよりそっていてくれている…このように食事を作ってくれたり、朝、心配して起こしてくれたりとか…だから…、信じて甘えられるんだ」と言うと、クラウトは、ちょっとうつむいてメガネのブリッジをあげる。
タイロンは、鼻の下を指でこすっていた。
システィナは、小さくうつむいて頬を赤らめる。
「まぁ…ぼくらは全員…アサトに救われたようなものだからな…」とクラウトが小さく微笑みながら言葉にすると
「これくらい…どうって事無い…」とタイロンが言葉にした。
そして…小さく頷きながらシスティナ。
「…アサト君だけじゃなく、クラウトさんやタイロンさんがいたから…わたしも…ちゃんと仇を討つ事もできたし…それに…アルさんやインサンも…いたから…」と言葉にした。
「…なんか…いいパーティーだね。」とギッパが言葉にすると、スカンも頷きながら
「リーダーって言うのは、引っ張て行くもんだと思っていたけど…、ほんと今日は、色々な意味で勉強になりました。」とスカンが言うと、いきなり後ろに飛んで、土下座をした。
「…迷惑ついで…と言うのも何なんですけど…僕らと同行してもらえませんか?このメンバーだと、ちょっとやそっとの敵なら簡単に倒せるというか…」と言い、頭を上げてアサトを見た、そして
「さっき、みんなとも話したんですけど…僕らには強い仲間が必要なんです、そして、色々学べる先輩狩猟者も…」と言うと、クラウトがアサトを一度見てからメガネのブリッジを上げた。
アサトは、スカンの目をしっかりと見ている。
「…すまないが…そうしてやりたいのは山々だがな…」とクラウトが言うと、アサトは微笑みながら
「君はいいリーダーだよ。たぶん僕よりもいいと思う。みんなの事を考えているしね。でもね…それに甘えたらイケないって思うよ。君らには君らの戦い方があると思うし、君らが目指すものもあると思う。僕の兄弟子らは、一撃でグールを倒していたみたいだけど…。でもね、その兄弟子も『強い』と言う意味が分からないって言っていた。だから…僕はこの世界を旅して、いろんなことを知り、そして、学び…これからどう生きるかを決める。その中に『強い』と言う意味も分かるんではないかって思っているんだ。仲間は、このわがままに命を張ってついてきてくれている。君の仲間も…君の考えに、賛同してついて来てくれているんじゃないのかな…、それなら、僕のわがままには連れてはいけない…。君を慕ってくれているからこそ、君らのパーティーの目標を立てて行動すればいいんじゃないかな…」と言うと、スカンは仲間を見る、仲間はスカンを見ながらちいさく微笑んでいた。
クラウトは、その光景を見ながら、小さく微笑みながら目を閉じてメガネのブリッジを上げた。
「…そうですね…、強い仲間…って言うのは、ただ戦いにおいて、敵を倒すだけが強いって言うわけではない…戦において…弱くても、人を守れる…強さってのも、強いって意味になる…って事なんですかね…」とスカンが言うと
「…それは、断言できないよ…、だから…知りたいんだ。」とアサトは言い、小さな笑みを見せる。
「深いねぇ~」っとギッパが言うと、隣のレイトラも頷いた。
「…なんか…アサト君がリーダーと言うのも分かる気がする…」とクレラがシスティナを見ながら言うと、システィナが小さく微笑んだ。
「…僕らも、ただついて行くだけじゃないんだ」とクラウトが言葉にすると、一同が見る
「アサトの旅の果てに、僕らも同じ光景…と言うか、僕らも選択できる未来があるんではないかと思って行動をしているんだ…だから、アサトと同じ気持ちだから命を張れるんだ」と言い、アサトを見る。
アサトは、タイロン、そして、システィナを見ると小さく微笑んだ
タイロンもシスティナも頷く。
「…わかりました。俺も…このパーティーが力を合わせて、成長できるようにみんなで頑張っていきたいと思います」といい立ち上がると「それでいいだろう!」とスカンが一同を見る。
その言葉に彼らは笑みを見せながら頷いていた。
「…まぁ…、ここで会ったのも何かの縁だからね。『パイセル』までは同行するよ。6日かかるからね、そこで教えられる事は教えてあげる、それでどうかな?」と言いながらクラウトがアサトを見る、その言葉にアサトは頷く。そして、スカン一同に視線を移すと「…じゃ、それまで、僕なりに考えた、このパーティーの戦術を授けよう。後は、君たちが訓練して、自分らの戦術を組み立てればいい」とメガネのブリッジを上げながら言葉にすると、スカンは頭を下げて。
「ありがとうございます」と言葉にした。
息を楽にして…、暗闇に身をゆだねる。
アサトは、そばに太刀を置き瞑想をしている。
息を楽にして…、暗闇に身をゆだねる…そして…今日の出来事を思い浮かべて、心の中で体を動かす…。
タイロンの背中…オーク…ゴブリン…タイロンの背中…オーク…ゴブリン…。
タイロンの背中…オーク、ゴブリン。タイロンの背中から…息遣いを感じる…、
タイロンの背中から息遣いを感じて…オークの…背中…ゴブリン…。
タイロンの背中から息遣いの息が溢れる…そして、背中を見せているオーク…オークと戦っているゴブリン…。
すると、その映像が『淡い蒼』にゆっくりと染まった….。
その瞬間に音が消える…のではなく、音が緩やかに流れる…。
音が色を発している…、その淡い蒼の色の中にはっきりと流れる薄い緑のカーテン。
上に向かって揺らめく色は音…呼吸の音、それは、タイロンから湧き上がるように上に向かって揺れる…と、小さく収まる…間を置いて揺れ上り、また、小さく揺れ収まる…それは…息遣い…。
タイロンの背中から…じゃない…息が溢れているのは…タイロンの目の前にいるオーク!息が…見える。
これが…呼吸………「次!」と声が聞こえたような感覚。
そこには、タイロンが盾をひっこめ、オークの斧が空を切り、斜め前のめりなる。
そして…鮮やかでいて、不確かな色の動きが見える…薄い緑が収まる瞬間…筋肉の緩む瞬間がわかった。
無防備になってそこが斬れるタイミング…これが…呼吸。と思った瞬間。
勝手に体が動く。
太刀を掴むと柄を握り、素早く刃を振った…その手ごたえは…。
シュパっと空気を斬る小気味いい音がすると共に、赤い土に長さ30センチほどの小さな裂け目が出来た。
無意識だった…そこに、腕が出てくると…腕が呼吸していた、小さくだが…息を吐き出し、そして吸い込む…その呼吸を感じた…だけで…太刀を振り下ろすタイミングも分かった…その呼吸でそのモノが無防備になる瞬間が…わかった…。
叩き斬るのではない…切り離すのだ…。
柄を握っている手は一本。
それも、素早く振り下ろしただけだと思う…それで…あれだけの傷がつく…。
アサトは持っている太刀の刃を見た。
そこには、ランタンに照らされている刃がうっすらと光を放っていた。
その光景をタイロンとジェミーが口を開けてみていた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます