第10話 オーク強襲!! 下
一行の目の前に、燃えるような、赤色のベル型の花びらが咲いている木々が覆いつくす場所が近付き、眩しい程の光の中へと突き進むと、広範囲に拓けている場所に出た。
一目散に森へと進んでいると、アサトの目に一台の荷馬車が目に入った。
そのそばで、オークとゴブリンが戦っている。
その荷馬車には、鉄で出来ている檻があり、檻の中にはゴブリンや亜人…そして、人間が入っていた。
檻のなかにいる者すべてが女性であるのもわかった…。
こちらに気付いた人間…そして、ゴブリン、亜人の女たちが手を差し出している。
もしかして…奴隷?とアサトは思った時「助けて!!」と、誰が言ったのか分からないが、その檻から声が聞こえて来た。
その声にアサトが止まると、後ろからついて来たタイロンに小さく押された
「助けて…」、「ヘナベッシャ…」、「…おねがい…」と幾重にも聞こえる声にアサトは檻を見た。
…あの時に思った…、人間だから助ける…それでは、ゴブリンに助けを求められたら…、傍観者でいていいのか…、形はどうであれ…自分の正義…あの時、インシュアさんと話した自分なりの正義と一線…そこには……、この状況は…。
「アサト!行くぞ!」とタイロンが再びアサトを押すと、
「僕…彼女らを助けます!」と言葉にして、握っていた太刀の柄を握りなおした。
2人のやり取りに気付いたクラウトが立ち止まると、一同も立ち止まり、二人を見て名前を呼んだ。
その声にアサトは、森の近くで止まっている一同を見て
「僕の正義です…彼女らを助けたいと思います。」と言いながら指を指した。
その方向を一同が見ると、クラウトが前に出て
「…わかった!それでは、アサトとタイロンはオークを止めろ!アサトは太刀を2本。仕留めなくていい、戦っているゴブリンと共闘を心掛けろ!僕らは彼女らの救出。」と声にすると、弾かれたようにアサトがオークに向かって飛び出す、それにつられてタイロンも後を追った。
「ジャンボさん…すみません」と言うと「…謝るくらいなら…最初から言うな!」と言い、鼻を鳴らす。
「3層の防御!」と、クラウトが魔法をかけると、アサトとタイロンに光が、1層、2層…そして、3層と降り注いで光が
不意を突かれたオークが痛さに顔を歪めながら振り返る。
アサトからタイロンにスイッチをすると、瞬時にタイロンは盾でオークを突きとばした、その光景を、オークの向こうにいたゴブリンがきょとんとした顔でこちらを見ていた。
アサトらがオークを相手にしている内に、スカンらが檻の解錠を試みていた。
オークは2体。
ゴブリンは12体…、そして、人間…アサトとタイロン。
背中に傷を負い、倒されていたオークが立ち上がってアサトらを見る。
ゴブリンたちは、アサトらにも威嚇をしてきていたが、アサトはゴブリンに向かい小さく笑うとタイロンをけしかけた
「ジャンボさん!」と…。
その声に、タイロンは盾を出してオークの攻撃を待ち受けた。
オークは斧で盾を斬りつける、その威力は、タイロンよりも少しだけ小さなオークがタイロンを圧倒していた。盾を右、左と弾き始めている。
攻撃に歯を食いしばるタイロンの背中に、アサトが軽く手を当てると、「次!」と言葉にする。
その言葉にタイロンは盾をひっこめると、オークの斧が空を切り、斜め前のめりになるのをアサトが待ち受け、目の前に大きな体が見えると同時に刃を振った。
オークの右腕に2本の傷が走る、そして切り口から深紅の血があふれ出した。
筋肉の固さなのか…思ったほどに深く傷が入っていない。
アサトはタイロンの背中に隠れる。
今度はタイロンが、そのオークを盾で突き飛ばした。
「いいぞ!!」とスカンの声が聞こえた。
その方向を見ると、つかまっていた女性らが檻から抜け出して森へと消えて行く姿と、その後を追うスカンの一行の姿、その前でシスティナとクラウトがこちらを向いて声をあげている。
その姿を見て、「いきましょう!」とアサト。
そして、もう1体のオークを見ると、ゴブリン6匹とオークが戦っている。
「逃げて!」と、近くにいるゴブリンらに太刀を森に向けて言葉にする。
少し首を傾げてから、剣先を見たゴブリンらは、その行動が分かったのか一斉に森へ向かって走り始めた
「ジャンボさん…あっち!」と言い、もう1体のオークへと駆け出す。
それにタイロンもついて行く。
大きめのゴブリンが、オークを鍔迫り合いに持ち込んだ瞬間に、オークの背中をアサトがとって2本の刃を繰り出すと、オークは大きな悲鳴を上げて空を仰いだ。
そこにタイロンが、盾を前にして突っ込んでオークを突き飛ばした。
アサトは刃を森にむけると「行って!」と声にすると、大きめのゴブリンが、アサトの姿を見てから森へと視線を移す。
そこには逃げて行く女性たちの姿と、それを追ってゆく仲間のゴブリンらの姿があった。それを見て
「ゲッタッハァ!」と叫ぶと、ゴブリンらは声の方を向き、アサトの剣先を見ると、蜘蛛の子を散らしたように森へと駆け出して行った。
前に倒したオークが腕を庇いながら立ち上がり、こちらを見て咆哮を上げると、もう1体のオークも立ち上がりアサトらを見た。
そして、斧を握りなおすと…。
「!」とアサトとタイロン…。
立ち上がったオークの胸から剣の刃が突き出て来た。
オークの背中に先ほどの巨大ゴブリンが剣を突き刺し、そして一緒に倒れ込むと、アサトとタイロンを見て、「ゲッタッハァ!!ゲッタッハァ!!」と叫ぶ。
…逃げろって言ってんのか?とアサトが思っていると、手を庇っていたオークが、斧を手に取りこちらに向かって来たのが見えた。
「…なんか分からないけど…逃げるぞ!」と言って、タイロンに連れられて森へと進む。
剣を突き立てていたゴブリンが頷きながら「ゲッタッハァ!!」と言い、剣を抜くと、もう1体のオークへと向かってゆく…そして…
アサトらは、クラウトと合流すると森へと進んだ。
そのゴブリンは、オークに向かって行きながら、こちらに向かって親指を立てていた。
…もしかして……
アサトは、その光景を見ると前方を向いて、その場を後にした。
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