第7話 旧オーパル鉱山攻略 上

 翌日、2の鐘が『ウルラ』の村に響き渡る頃に宝石の洞窟へと向かった。


 『ウルラ』の村から30分かけて大きな木々が生い茂る森に着くと、洞窟まで続く獣道を、ジャンボ、システィナ、クラウト、そして、アサトの順で進んだ。


 非常にカラフルで、燃えるような、赤色のベル型の花びらが咲いている木々が覆いつくす場所があり、そこから広範囲に拓けている場所の奥に洞窟があった。と言うか、入り口は、木材で補強されており、よく見ると鉱山の跡地のようである。


 その入り口には、廃材と捨てられた工具や鉱石を運ぶために作られた運搬具のような物が、朽ち果てた状態でその場に遺棄されていた。


 辺りを見渡したがゴブリンの気配はなく、見た事のないパーティー1組がこちらを伺っていた。


 6人のパーティーだと思うが、しきりに何やら相談しているようだ。

 そのパーティーに気付いて、クラウトが行ってみると言い、向かおうとした時、向うのパーティーからもこちらに向かって進んでくる者が見えた。

 クラウトとその者は、二つのパーティーの真ん中あたりで会うとなにやら握手をして話を始めた。

 しばらく話しているとクラウトが手招きをする、相手も仲間に合図を送っていた。


 森の中の少し拓けた場所で相手パーティーと合流した。

 どうやら、クラウトと話していたのは、相手パーティーのリーダーみたいだった。


 彼は来訪者ではなく、純粋にこの世界で生まれた者であり、仲間も『ゲルヘルム』近くの『パイセル』と言う村で生まれた幼馴染が数名と、『パイセル』周辺で出会ったと言う来訪者が混じったパーティーのようである。


 彼らは、その『パイセル』と言う村を拠点にしているとの話であったが、最近『オークプリンス』の一団のおかげで、オークの出現が多く、狩りが思うようにできなくなり、『ゲルヘルム』の狩猟者で話題のこの旧鉱山に来てみたようである。

 狩猟者としての日にちも浅く、ほとんど初級者レベルと言う話で、この旧鉱山の攻略をするなら一緒にと言う事だった。


 クラウトは、装備などを見て、初級者であると判断しているようである。


 彼らのリーダー、スカンによると、この旧鉱山は、『オーパル』鉱山の跡地であり、20年ほど前まで盛んにこの鉱山でオーパルが採掘されていたようだ。

 だが、採掘量の低下と度重なるゴブリンの襲撃などにより、閉山へと追い込まれたとの事だった。

 この旧鉱山は、地下が7層まであり、強い魔物はいないとの事だったが、やはり、幻獣『リベル』のお供の一団が近くに拠点をおいていて、この旧鉱山にたまにきているようであると言う事であった。


 なかにいると思われる魔物もゴブリンだが、どうやら、この旧鉱山を縄張りにしているようで、なかに入ってくる狩猟者をも敵とみなしているようだと言う。

 『ガネット』は2層辺りまでは、そんなに大きな物でなければ採取は容易であるようだが、3層以降に降りれば、ゴブリンも体格の大きい者が存在し、一団で行動しているようであり、6層から7層に行けば『オーパル』の採取もできるようであったが、そのゴブリンの拠点が6層以下にあると思われるので、『オーパル』の採取をしようと思っている狩猟者はそんなにいないようである。


 彼らの編成は、体の大きな盾持ち戦士の男、ラビリと、両刀剣使いの戦士、スカン、背の低いアサシンの女のレイトラと、体は大きくないが長い槍を持つジェミー。

 赤いローブの女魔法使いのギッパと、背の高くきれいなウェーブのかかった金髪の神官の女、クレラの6人パーティーのようだ、ジェミーとクレラは来訪者のようである。


 一通り自己紹介を終えたのち、クラウトが指揮をとる事で相手も了承をした。


 クラウト指揮下の元に旧鉱山の攻略に臨む。

 先頭をジャンボ、その後ろにアサトがつくと、その後ろにジェミーがついた。

 ギッパとシスティナが並び、ギッパの隣にレイトラがつく、その後ろにクレラとクラウトが着くと、最後尾をスカンとラビリがついた。


 クラウトは、後ろにいるスカンになにやら話をしているようである、どうも、この陣形について説明しているようで、スカンは感心している声を出しながらいくつか質問をしているようであった。


 入り口から坑道に入ると、木材で壁際を補強しているまっすぐな道が数十メートル延びていて、木材での補強が無くなったあたりから、少し右にカーブしている緩やかな下りの坑道となった。

 幅が2メートル、高さが3メートルほどの坑道である、あまり広いとは言えないので、クラウトの指示により、ほぼ一直線の状態で進んだ。


 ジェミーに指示を出す。

 その指示は、もしゴブリンが現れたなら、タイロンが防いでいる時にタイロンの後方から槍で攻撃をする、また、後方から襲われたら、ラビリが防ぎ、その後方から槍で攻撃をする気持ちで動いくようにとの事、槍は、大きな間合いを取れるので、攻撃に幅が出来る、狭い坑道の中では、盾持ちが引き付け、それを槍で突き、怯んだところにアタッカーが攻撃する。


 そして、クラウトが各々に指示を出す。

 いまのパーティーは、前部と後部に盾持ちを用意して、ジェミーがその二人と共に戦闘の最前衛をこなし、アサトが前部のメインアタッカーで、後部のメインアタッカーをスカンが行い、レイトラは前後のサブアタッカーを行う。

 魔法使いの二人は、援護をメインとした攻撃に徹し、神官二人は状況の把握とけが人の治療、そして、魔法使いの護衛をすると言う指示であった。


 一同は、クラウトが指示した状態で進む。

 なだらかな下りの道を進むと、明るく拓けた場所が目に入って来た。

 クラウトは一同を止め、レイトラに偵察を行わせる。


 レイトラはアサシンの特技を使い、壁際をゆっくりと音もたてずに進んで、その拓けた場所を覗き込んで確認をしたのちこちらに向かい手招きをした。


 その場はかなり広く、入ってまっすぐと左右に坑道が延びていた。

 その坑道の広さは全てが同じ大きさであり、そこには、誰かが着けたのであろう、篝火が灯されていた。

 朽ち果てた工具や運搬具が散乱してはいたが、状況をみてみると、ここでの戦闘は無いようであるとクラウトが言葉にした。


 クラウトがアサトに進むべき進路を聞いてきたが、アサトには見当がつかないのでクラウトとタイロンに任せた。

 タイロンが見た感じで、まっすぐへと色々な足跡が続いているとの事であり、とりあえずまっすぐの道を進む事にした。


 再び、ほぼ一直線の状態で進む。


 数十メートルを直線的にすすむと、また木材で壁を補強した坑道になり拓けた場所が確認できた。

 クラウトがレイトラに指示を出すと、小さく頷いてその場の様子を確認に行き、こちらに向かって手招きをした。


 なかに入ってみると、直径15メートル程の空間があり、また篝火が灯され、なかはかなり明るかった。

 その空間の中央には、垂れ下がっている鎖と下へと続く穴が確認できたので、ここには下に向かうリフトがあったようだとクラウトが推測した。

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