第6話 賢者の言葉 下
「ぼくが聞いた話とは…ちょっと違うかな…」とアサトが言うと、賢者は、アサトを見ながら怪訝そうな表情を見せた。
「はなし…とは?」と言葉にすると
「はい…すみません、ぼくの聞いた話だと、この混沌を終わらせるため、
「うむ…、ぬしが言っている事は間違いじゃない…、わしも聞いた話は、混沌を終わらせるために
「混沌とは、目に見えてわかるモノではない。確かに、この世界に破壊をもたらす、先ほどの『ラグナロク』と言う者も混沌と言える、じゃが、我々の生活を脅かす魔物を混沌が生み出したと言う者もいる、なら、『ラグナロク』がその魔物を生み出したのかと言えば、そうではないだろう…、混沌とは、人の考え方、感じ方しだいでなんにでも表現できる。この世界の在り方が混沌なのかもしれない…」と言い、アサトを見た。
「
「結局、何が本当の事で、何が嘘なのか確証がないから伝承の域なのだよ、」と言い小さく笑みを見せると
「…それを知りたいから、君たちは旅をしているのじゃろう?」と言葉にした。
まぁ~、混沌って事や、『ラグナロク』って人の事を知りたいと思って、旅をしようと思った訳ではないが、大きなくくりで言えば、この世界の
「わたしも…色々知りたいから旅をしているのじゃ」と賢者は笑って言うと、小さく頷き、そして一同を見る
「ぬしらがこれから見る世界は、今の常識を遥かに超えた世界…じゃが、心配するな。こんなおいぼれでも旅をする事は出来る、だから、しっかりとこの世界を見る事はできる。」と言い小さく笑った。
その笑顔に対して、何故か心が救われた気持ちがした。
「最後に一つ質問していいですか?」とアサトが言うと、賢者は頷く
「『ラグナロク』って人は、『夜の王』とは違うんですか?」と問うと、急に賢者の眼が険しくなった。
その表情に一同が息を飲む。
賢者の表情は、なぜその事を知っていると言っているような表情であり、髭を撫でながら言葉を探しているかのようにうつむいて、少し間をあけた、それを見たクラウトが言う。
「…す、すみません…、ぼくら…少し知ったふうに聞いて…」と取り繕うと、賢者はアサトを見た。
「『夜の王』は、死者の国を作ろうとする者、『ラグナロク』は、世界を破滅させようとする者、『鋼の王』は世界を我が物にしようとする者…そして、『闇の王』は、今のこの世界を手にしている者…」と言い、今度はクラウトを見た。
「すべての者は、別々の目的の為にこの世界を恐怖させている、この恐怖こそが、『真の混沌』と言う者もいる。過去何百年…この者らに我々は恐怖してきたか…、知る事は、別に悪い事ではない、ただ…」と言い、口をつぐんだ。
「…ただ…なんですか?」とシスティナが聞くと、賢者はシスティナを見て微笑み
「…ぬしらが、その者らの行動をどうとらえるか…」と言い、夕暮れに染まる大岩に視線を移した。
『ウルラ』の神殿から野営地へ向かう道には、長くなった4人の影が伸びていた。
先頭を歩くクラウトに続き、アサト、そして、システィナとタイロンが並んで歩いていた。
「…まずいこと…聞いた感じがします。」とアサトが言葉にすると、クラウトが小さくうつむく
「…いや…、今日聞いた事で分かった事がある…」と言うと、少し速度を下ろしてアサトに並び、「みんなもそう思ったかもしれない、」と言葉にすると
「あぁ…なんかな」とタイロンがその言葉に答えた。
「…私達は、…まだまだ知らない事が多かったんですね」とシスティナ。その言葉にクラウトが暮れる太陽を見た。
「…そう…、アサトが言葉にしなかったら、僕が『夜の王』を聞いた」といい、アサトを見る、そして、
「…『鋼の王』…の事も新しく情報として知った。それに…『ラグナロク』…、この世界を滅ぼそうとしている者…、そして…『闇の王』…。」と言い立ち止まる。
一同も立ち止まりクラウトを見ると、クラウトは小さな笑みを見せながら
「…世界は…広いんだ…、…なんか…怖くなったよ…」と言葉にした。
自信に満ち溢れて見えたクラウトの表情が、強張っていた。
それは、賢者から聞いた事に対して、自分らが知っていた知識は、ほんのわずかなのであると言う事と、我々が、これから出向こうとしている世界の広さを感じたような表情だった。
あの賢者はまだまだ何かを知っている、そして…おそらく
クラウトは、一同を見ながら
「僕は…もっと、もっと…知らなければならない…、この世界に踏み出そうとしているなら…」と言うと。
「…そうですね…僕も思いました、僕も、もっと、もっと知りたい…でも、それを知るには、強くならなくてはならない。」とアサトが答えた…
「あぁ~、そうだな…、たぶん、この地でやっていた以上に魔物は強くなる…って事は織り込み済みだが…、その限度は、想像している以上の強さを持っているのかもしれない…」とタイロン、そして、システィナを見る。
そのシスティナは…、ちいさく頷いて、胸で結んでいた指を強く握りしめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます